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ダイハツ本社 もうひとつの不正

                                          編集部   かわすみかずみ

   軽自動車に強みを持つダイハツは、昨年からの認証不正問題で全車種の出荷停止処分を受けた。現在は不正防止策を経済産業省に提出し、停止を一部解除されたばかりという状態だ。
  だが、ダイハツの不正はこれだけではなかった。

      障がいを理解しない上司

  昨年の大晦日、北大阪ユニオンを訪れた吉村貴久さん(30)は、ダイハツ本社でのパワハラ被害を訴えた。
 2023年3月に障がい者枠でダイハツ本社に入社した吉村さんはトランスジェンダーの女性であり、虐待被害者である。精神障がい者手帳3級を持っていることや家族から虐待を受けてきたこと、トランスジェンダーであることから就職が難しいことも、会社側には伝えていた。

北大阪ユニオンとともに街宣に臨む吉村さん

  会社側から「1年後には正社員登用の可能性もある」と言われ、家を出られると思い精力的に働いた。だが、6月に部長が変わると、「前の上司の言ったことは間違いで2年後になる」と言われた。叱責や嘲笑が多く、うつ病とPTSDを抱える吉村さんは、ストレスから9月頃には自殺未遂を起こす。ジョブコーチをつけてもらうよう要望を出してもつけてもらえず、上司と離れるため配置転換を希望しても聞き入れてもらえなかった。その後も「障がい者だからといって特別な配慮はしない」「(障がいがあることによって)言い訳をしようとしている」などと課長が発言。12月26日に会社側は一方的に雇い止めを行った。1月20からは産業医の診断により、吉村さんは休職している。

    続くなかまのために

  北大阪ユニオンは1月17日付けで会社側に、雇用の継続などを求めた要求書を送付した。団体交渉も行ったが、会社側はハラスメントを認めなかった。吉村さんの解雇理由は「能力不足」だと会社側は主張する。
  2月22日、会社側から吉村さんに「自己都合で退職届けを出すように」という通知がきた。
   吉村さんは労働基準監督署や障がい者人権擁護センターにも相談にいったが、会社側の行為はハラスメントにあたると言われた。

  2月28日、ダイハツ本社前で街頭宣伝やビラまきを行った。

退社時刻になり門を出る職員にビラをまく。あからさまに避けていく職員もいた。


吉村さんを支える北大阪ユニオンの他にも、関西生コンや連帯ユニオンジェネラル支部の組合員が本社前に立った。吉村さんはこの日初めての街頭宣伝だったが、堂々と会社への批判をアピールした。
  開始前に吉村さんに意気込みを聞いた。「私は、トランスの方、非正規の皆さんなど、多くの人のために闘います。これは私だけの問題ではないんです」。

        訴訟も視野に  さらなる闘いへ

  シュプレヒコールがダイハツ本社前に響き渡る。「我々は雇い止めを撤回するまで闘うぞ!」、「ダイハツ本社は社会的責任を果たせ!」。終業後に門を出る職員にビラを配る。受け取りはあまりよくない。
   終盤頃には、門の近くに大阪府警の警察官が10人ほど現れた。

1時間に一本しかバスが通らないこの場所に
警察車両で10人の警察官が現れた。

北大阪ユニオンの鈴木耕生さんはハンドマイクで「警察が来ても無意味だし、警察は民事に介入できません。次からはこのようなことはやめてください」とダイハツ本社に向かって声をあげた。  吉村さんは訴訟を検討しているという。ダイハツがどのような対応をするのか、注目に値する。

  
  

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