見出し画像

『鎮魂』 染井 為人 著

世の中の理不尽な出来事から話が始まる。

ルールを守る真面目なサラリーマンが会社から煙たがられ退社に追いやられ、
半グレは悪事で稼いだお金で豪華な暮らしをしている。
罪のない人が半グレの被害にあい首から下が動かなくなる事件を起こしたりする。
そんな半グレを取材して本を出して稼ごうとする大人がいる。

とにかく、多くの理不尽とそれに耐える人が描かれる。

そこに大人もヤクザでさえ恐れる半グレグループ凶徒聯合(きょうとれんごう)のメンバーが殺される事件が起こる。

小説ではこれを凶徒聯合のメンバーの目線と警察の目線、その事件に興味を持ったサラリーマンと本を出そうとしている編集者、そして犯人の目線で描かれていく。

そこで見えてくる半グレメンバーの人間味と僕ら一般人による正義の凶暴性。
そして、多くの謎。


なぜ、誰もが恐れる凶聯のメンバーが殺されたのか?
京子は何かを隠しているが何を隠しているか明かされず、ただ京子の心境が意味をなさないまま語られるが何を隠しているのか?
警察の情報が凶聯に漏れ、凶聯の情報は犯人に漏れているのは なぜなのか。

全ての違和感がしっかり合致し物語が終わる。

これ以上ないラストに鳥肌が立つ。

小説ならではのトリックに何度も読み返してしまうこと必至。
退屈する場面が全然なく展開が次々迫ってくるので何度読んでも楽しめる本。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?