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不思議な家3

 学校の帰り道で私の前を走っていた慎ちゃんが転んだ。逆さまになった鞄から私の足元に小さな丸い缶が転がってきた。慎ちゃんは慌てて教科書だけを拾い、またすぐにどこかに走っていった。翌日学校で缶を返そうとしたが、慎ちゃんは学校を休んだから、帰りに家に寄った。
一年生の冬休み明けに慎ちゃんのスキー靴と自分のスキー靴を間違えてお母さんと一緒にケーキを持って謝りにいったことがある。
 慎ちゃんの家の玄関は、大きな倉庫の二階にあって、急な階段を足が疲れるくらい上らなければならなかった。

 今も変わらなければあの階段をまた上ることになる。

倉庫の前に着き、チャイムを鳴らしたが返事がない。しかたなく倉庫の中にはいった。大きなダンボールだらけで迷路みたいな場所だった。私は一年生の時に上った階段を探した。何百個とある段ボールの間を潜り抜け記憶を辿ってみたが、階段はみつからない。正面の壁にボタン式のスィッチが並んでいて、どれかのボタンを押せば慎ちゃんの家に繋がると思った。そしてゆっくり真ん中の赤いボタンを押した。すぐにウゥーと機械の唸る音がして、高い天井から階段が降りてきた。

 胸を撫で下ろし階段を上った。

 足が疲れるくらい上って、やっと辿り着いたと思ったら、大きな段ボールが一個置いてあるだけの小部屋だった。悪臭がして真っ暗で気持ち悪かったからまたすぐに階段を下りた。そして右側の黄色いボタンを押した。でも階段は降りてこなかった。その時、倉庫の横で二人の男が話していて、怖くなったからすぐに外に出た。
 そして翌日学校に缶を持って行った。でも慎ちゃんはいなかった。放課後、先生がみんなに大事に話があると言い、慎ちゃんがもう学校には来ないことを知った。急に引越しをすることになったらしい。私は先生に缶を預け、慎ちゃんの家に行った時に倉庫の横で二人の男が話していたことを言った。

「あのガキ、ブツの入った缶の場所を教えないから殴ったら、血吐きやがって」
でも暗い部屋にあった段ボールのことは怖すぎて言えなかった。











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