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ぬいぐるみとしゃべる人やいちばんすきな花、みたいになりたい。

やさしい物語が好きです。
ただ、そこに広がる心地よい世界。

いつからでしょう。

刺激も
欲望も
駆け引きも
裏切りも
熾烈な権力争いも
漢同士の決闘も
来週への過剰な引きもない

底抜けにやさしい世界を描く作品が
ちゃんと評価されるようになったのって。

今日は『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』という本と、「いちばんすきな花」というドラマについてです。

***

『ぬいぐるみと〜』を読んだとき、登場人物みんなやさしいけどたぶん、これを書いた人が一番やさしいのではないか、と思いました。

わたしは文中に「有害な男らしさ」を感じると吐き気を催す体になってしまったので、ここのところ古典に触れるのが怖いのです。

いつ何時、ぎょっとする表現が飛び出すかわからないから。
だから、古き良き文豪の皆さんの作品は、ホラーを読むときみたいに、恐る恐るページをめくっています。

ご存命の、お若い作家さんであっても気は抜けません。

ほとんどの登場人物が男性で、たまに女性が出てきたと思ったらお色気担当か、途中で死ぬか意識不明になるかして悲しみを呼ぶ役割を果たすだけに登場したとしか思えない…というような描かれ方をしていると、ブルータス、お前もかという気分になるからです。

『ぬいぐるみと~』は恐らく男性が書いたものとお見受けします。
だからこそ、読んでいて心配になりました。

どうしたらそんなにやさしくなれるの?
あなたはこの世の中に男性として生きていて大丈夫なの?
すごく苦しいんじゃない?
平気?ちゃんと息できてる?
と思うほど、途轍もなくやさしい世界が描かれているからです。

全編しゃべり言葉で書かれていて、基本的に七森という男の子が語り役ですが、何の前置きもなく急に親友の麦戸ちゃんの語りに変わって、次には七森に戻ったりします。

段落も句読点も独特で、易しい言葉で書かれているのにやや読みにくい。でも、だからこそ人の日記を読んでいるようなリアルさがありました。

おそらく偶然でしょうが、今放送されている「いちばんすきな花」の4話でも、ぬいぐるみと話していた妹、のエピソードが語られます。

その時、あ、あの本とこのドラマって「居心地」が似ているんだということに気付いたのです。

読んでいて
観ていて
たぶん、わたしは傷付けられない。
だからここにいて大丈夫。
安心して大丈夫、と。

わたしも、そういう人でありたいと思います。

大丈夫、この人はわたしを傷付けない。
ここにいても大丈夫。
安心しても大丈夫、
と思ってもらえるような人。

誰からも、は無理でしょうけれども、できうる限りそうでありたい、と思うのです。

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