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隣の会話は、聴く派です。

飲食店などで中に通された際、隣の席と距離が近くて、あら、会話が丸聞こえだわ…ということってありますよね。

そういうとき、わたしはとりあえず、隣のやり取りをしっかり聴いておくタイプの人間です。

ああ、これはネズミ講だなとか
謙遜という名の自慢大会だなとか
あ、静かに喧嘩してる…

というような、分かりやすいトラブルを抱えた会話には、俄然前のめりで胸躍らせ拝聴します。

が、一聴したところでは別に面白くもない、ありきたりな会話であっても(失礼)よくよく聴くとドラマが隠されていたりする場合があるのです。

先日は以下のような2人の組み合わせでした。

・頭のいい女
・そうでもない男

どうやら、学歴も年収も女性の方が高そうで、知識や発想力や、心情を言語化する能力も女性の方が上手のご様子でした。

ただ、彼女は少々過度とも思えるくらい、所謂「女らしい」声や仕草で男性に接していました。
彼が無知を露呈した折も決してバカにすることなく、ほほ笑みを絶やしません。
そして優しく、相手の誤りを訂正するのです。

「うーん、もしかしたら、○○かな?」
「確か、前にこんなことを聞いた気がするー」
「たぶん、○○って言うんだと思うよ」

恐らくはっきりと「○○だ」と断言できる事柄であっても、相手の自尊心を刺激しないよう細心の注意を払い「自信はないけど、たぶん○○だと思うよ」と一歩引いた態度を、彼女は最後まで崩しませんでした。すげえ。

家に着き、ひとりになったらきっと、「ああー疲れた。」と缶ビールを開け、ご自身と同等に聡明で手ごたえのある会話が行える友人と、電話かLINEで語り合うのでしょう(妄想)。

色々な関係性がありますから一概には言えませんが、男女逆だったらこうはならない…ことが多いだろうなと思いました。

・頭のいい男
・そうでもない女

という組み合わせだったなら。

男性は、自分の知識量や思考力の高さを臆することなく堂々と相手にアピールし、相手がおかしな発言をすれば即座に否定するでしょう。

それ知ってる。今時そんなこと常識だよ。
上司にも部下にも頼りにされててさ。
そんなことも知らないの?バカだな君は。

関係性はシンプルで、会話もスムーズ。
ただ、拝聴している側としてはやや、面白みに欠けるんですよね。
(知るか)

***

能力の高低と評価が比例しないとき、会話の難易度は一気に上がります。
性別だけでなく、立場や役職についても同じことが言えるでしょう。

あ、先輩アホやった、とか
あ、取引先の部長パソコン使えないんだ、とか
あ、社長、こんなことも知らんのか、とか

そういうことに気付いてしまった、けれども直接「アホか」とは言えない関係性であるとき。
所謂「王様は裸だ!」と指摘できない場合。

相手に最大限の忖度をしながら事を進めるとなると、単純に仕事を行うのとは別の種類の、きめ細やかな配慮と技量が必要となります。

人間よ、もう止せ、こんなことは。

こんな、面倒で余計な手間を省いていけば、より建設的且つ発展的な営みが執り行えるのに、もったいないことだと思います。

お心遣いの見事さは、隣で聴いていて面白くはありますけれどもね。
(知るか)

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