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軒下猫´の息子猫たち

 軒下猫´の子猫は、その後少しずつ成長していきました。
 2ちゃんは、近所のおじいちゃんのシニアカーの座席を気に入って、いつもそこへ通っていたらしく、おじいちゃんが、
 もらってもええかの?
と、もらってくださいました。
 残るは2匹。
 1ちゃんは、見た目のハンサムな猫で、とある少女のお気に入りになりました。鳴き声もとても大きく、よく通るのがかわいいそうです。
 あの3ちゃんは、少々小柄だけれど、ちょっと悲しそうな顔つきになってしまったけれど、立派に一人前になって、二匹は仲良く同じ段ボールに暮らしていました。
 軒下猫´は、自分の息子たちには絶対に会いたくないらしく、二匹がいるときは、めったに姿を現さなかったので、わが家では影が薄くなっていました。
 軒下猫´が、姉の家の猫の餌を食べに行くから、雲子あんまり餌やってないんじゃないの?と不満げな姉。わたしのせいじゃないよ、お姉ちゃん。



 とある少女は、1ちゃんだけを特別かわいがって、1ちゃんを邪険にする軒下猫´には邪険にするのに、1ちゃんだけ撫でてやるのでした。やってることが軒下猫´とおんなじっぽい、とからかうと、こちらも不満げ。小学生にその手の冗談は通じないのでした。
 1ちゃんはとてもさみしがり屋の猫で、わたしがゴミを出しに行こうとすると、その良く通る声で、

 

  行かないで~~~
   行かないで~~~
    行かないで~~~
     行かないで~~~
      行かないで~~~

           行かないで~~~
             行かないで~~~

                  行かないで~~~

と、やられるので、後ろ髪引かれる思いにさせられていましたっけ。
 たった数十分の別れなんですけど。












 2回、春と夏と秋と冬が過ぎて、……













 その1ちゃんと3ちゃん、ともに、去年、恋人探しの旅に旅立っていきました。



 とある少女も、そしてわたしも、2匹がいつかは恋人探しの旅に出ることは分かっていましたので、静かにそれを甘受しておりました。
 が、1ちゃんによく似た鳴き声を聞いて、「もしかして、帰ってきたんじゃない?」と、二人で外に駆け出したこともありました。でも、見つけられなかった。









 密かにさみしがる人間たち。










 でも、これを好機と捉える者がおりました。軒下猫´です。








が、寒いけど、ゴミを出しに行かないと。
続きは、また今度。

 

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