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【俳句】セロ弾きのゴーシュから

セロ弾きのゴーシュ孤独な秋の夜

三毛猫も虎も同属秋の風

秋の夜に郭公鳴くやドレミファソ

太鼓打つポンポコポンポ秋の月

末の秋セロ弾きゴーシュと鼠の子

アンコール印度の虎狩り暮の秋

蔵書より

【セロ弾きのゴーシュ】は、皆様御存じの宮沢賢治の
童話です。猫に郭公、狸、小鼠と動物が出て来る私の好きな話です。

《粗筋》
ゴーシュは町の楽団でセロ(チェロ)を担当しています。
町の音楽会で発表する第六交響曲の練習をしているのですが、
彼だけが下手なままで、団長からきつく叱らます。

 ゴーシュは帰宅してからも一生懸命にセロの練習をしていました。
すると三毛猫がやってきて「シューマンのトロメライを弾いて
御覧なさいな、聴いてあげますから」と言います。
猫は、ゴーシュのセロを聴かないと眠れないようですが、
猫にからかわれていると思ったゴーシュは怒って
「印度の虎狩」という曲を演奏して猫を追い出してしまいました。

 次の晩も帰宅したゴーシュがセロを弾いていると、
郭公かっこうがやってきました。
そして「郭公のドレミファ(音階)を学びたい」とねだりました。
うんざりしたものの、郭公の練習に付き合っている内に、
ゴーシュは音階の感覚を掴んだのですが、最後には郭公を
追い出してしまったのです。

 その次の晩は狸の子がやって来て「小太鼓の練習がしたい」と
言いました。一緒に練習をしていると、狸の子からセロの2番目の
音が遅れていることを指摘され、ゴーシュもこれを素直に
聞き入れて練習しました。

 さらに次の晩、今度は野ねずみの親子がやってきました。
子どもが病気なので、セロの演奏で治して欲しいと言います。
ゴーシュが子鼠をセロの孔の中に入れて演奏すると、
子鼠の具合は良くなりました。

 音楽会当日、楽団の演奏は大成功を収め観客の興奮冷めやらぬ中、
アンコールの演奏に指名されたのはゴーシュだったのです。

自分はからかわれて指名されたのだと思ったゴーシュは、
「印度の虎狩」を激しく演奏しました。
しかし観客は皆真剣に聴き入り、団長も興奮しながら
彼の演奏を褒め称えました。

 毎晩の動物たちの訪問によって、ゴーシュは自分でも
気づかないうちにセロの腕を格段に上げていたのでした。

ゴーシュは遠くの空を眺め、追い出してしまった郭公かっこう
心からの感謝を込め謝りました。