見出し画像

風呂が詰まった!

はじめに、

見ていただいてありがとうございます。
嬉しいです。


記事にいいね!がついたり、フォローされたりすると、noteから僕のメールアドレスに、「〇〇さんがフォローしました」とか、「〇〇さんがいいねしました」とメールが届きます。


そのメールや、たま~にもらう感想が、書く原動力になってます。
本当に有難いです。


でも、いいねやフォローや閲覧数みたいなものに一喜一憂するのは嫌です。
だから、書きたいことをこれからも貪欲に書いていくことに集中したい。

キラキラしながら文章書きたい。

良かったら毎週見ていってください。



あと、少し自慢話みたくなってしまうのですが、


僕の書いた『レッツタコスパーティー』という記事が、


「今、このnoterが面白い」に紹介されてました。


有難かったです。
そもそも僕って、noterなんやと思いました。


あと、紹介されていたnoterさんの中でも、僕だけダントツフォロー数少なくて笑ってしまいました。寂しいもんです。


これからは、芸人、大学生、noter、3足のわらじで行きたいと思います。笑。

よろしくお願いします!


それでは本文です。





 風呂が完全に詰まったのは昨年の年末。
 


 僕のアパートの浴室は、3点ユニットバスという造り。3点ユニットバスとは、浴槽と洗面台、トイレが同じ空間にある造りのこと。そして3点ユニットバスの特徴は、洗い場(身体や髪を洗うスペース)がないこと。洗い場がないため、浴槽内で己を洗わなければならない。

 ゆえに、浴槽内の排水溝が詰まるというのは、イコール、シャワーすら浴びられない状況に陥ることを指す。


 
 僕は入浴時、お湯に浸からない派の人間だが、シャワーは浴びたい。身体は清潔に洗いたい。にもかかわらず、僕のアパートの浴槽の排水溝は、2023年の年末、完全に詰まってしまった。
 要は、風呂が使えなくなった。


 思えば詰まりの兆候は、半年ほど前から。


 半年ほど前(2023年6月頃)から入浴の際に、
「排水溝の水の流れが悪いな~」
と感じることが増えていた。全く流れない訳ではない。けれど、流れていくスピードが遅い。シャワーから出たお湯が浴槽に溜まる。くるぶしまでひたひた。その原因を僕は、排水溝に溜まった髪の毛と考えた。


 だから排水溝から髪の毛を取り除き、風呂掃除をいつもより丁寧に行った。すると詰まりは解消され、また浴槽を気持ち良く使えるようになった。



 しかしその数日後には、
「え?また水の流れが悪くなってんじゃん」
そう感じるのである。せっかく掃除をしたのに、少し期間が空いただけでお
湯が足元に溜まる。

「え、なんでこんなにすぐ詰まるの?」
僕は疑問を浮かべながらも、排水溝に溜まった髪の毛を取り除き、風呂掃除をした。
「よし!これで詰まりは大丈夫!」
そう思った。
 でもその数日後には、
「え?また水の流れが悪くなってんじゃん」
そう思わされるのである。

 それまでは、数週間なにもしなかったとしても、水の流れが悪くなったりしなかった。でも、気づいたら数日で水の流れが滞るようになっている。完全に詰まっている訳ではないが、お湯が浴槽に溜まる。脛までひたひた。
 明らかに異変が生じていた。


 しかしそれからは、数日ごとに流れが悪くなるものの、排水溝の髪の毛を毎日取り除きさえすれば、特に問題なく浴槽を使うことが出来た。だから、この問題を完璧に解決しようとはならなかった。それに、排水溝に何か物を落としたなど、そういったことも無かったので、
「単純に老朽化が原因だろうなあ」
なんて呑気なことを考えていた。また、
「それに一応、致命的な問題無く、浴槽使えてるし大丈夫っしょ!」
と、詰まりの問題から目をそらそうともしていた。
 問題に対して、高をくくっていた。




 しかし、先の未来で後悔する。
 このタイミングで、適切な処置をしておけばと。




 それから季節は過ぎ、秋も終わりの11月に差し掛かった頃。

 浴槽の状況は大幅に悪化していた。脛までひたひただった水位が、毎日のように、太ももの辺りまで上昇するようになっていた。浴槽の上部には、浴槽から水が流れ出てしまわないようにするための排水口があるのだが、それが無かったら、とっくに浴槽から水が溢れ出ていたに違いない。シャワーを浴び、髪を洗い、身体を洗うと、お湯が浴槽の上部まで溜まってしまうのだ。


 さすがに慌てた。かなりまずい事態になってないか。しかも上部まで溜まったお湯は、夜に入浴したら、翌日の朝にならないと完全になくならない。つまり1晩かけないと、浴槽からお湯が流れていかないという、危機的状況に差し掛かっていた。


 そこで僕は、いよいよ問題の本格解決に乗り出した。それまでは排水溝の毛を除去する、風呂掃除を軽くする、という対応しか取っていなかったが、マツモトキヨシで『超粘度 パイプクリーナー 強力EX』なる武器を購入した。 

 排水溝の奥、パイプの中のヌメリや臭いを強力洗浄してくれるらしい。しかも「混ぜるな危険」と書いてある。
 コイツは随分骨のありそうな奴じゃねえか!
 頼りがいを感じた僕は、コイツをEXと呼ぶことにした。


 

 EXを使ってみた。使い方は簡単。20回ほどプッシュして、EXの中に入っている特濃ジェルを排水溝にぶっかける。そして30分放置した後、水で充分に流す。それだけだった。

 


 EXを使用した際、
「さあ、6月から11月まで、俺の入浴にモヤモヤを与え続けてきた怪物を退治する時がきたぜ。詰まりという怪物よ、葬り去れ!フォウウウ!」
と、僕は笑いながら、ひとり暮らしの部屋で実際に声を上げていた。いや、叫んでいた。おへその下、丹田に力が入る。フォウウウ!と叫ぶ度にEXをプッシュした。使用量の目安である20回を超えて、27回プッシュした。27回フォウウウ!と叫んだ。

 隣の部屋に住む外国人女性に、俺が怪物を退治する声と、怪物の断末魔が聞こえてなければ良いけどな!
 フォウウウ!フォウウウ!フォウウウウウウ!
 EXが勢いよく噴射された。


 それから30分経ち、シャワーで水を流した。
 詰まりの解消を願いながら。


 その日の夜、EXを使って以来初めての入浴タイム。僕は恐る恐る浴室に乗り込み、シャワーを浴びた。果たして排水溝から、お湯は気持ち良く流れてくれるのか?どうなんだ?




 結論から言おう。
 そこまで改善しなかった。



 いや、改善はしていた。水の流れは多少良くなった。だが、めちゃめちゃ改善した訳ではない。相変わらずお湯は溜まってしまう。膝くらいの高さまでお湯が溜まった。太ももまで溜まっていたことを考えれば進歩なのだが、もっと爆裂な進歩を求めていた僕は、
「もっとだよもっと!頼むぜええEX!」
と浴室で頭を抱えてしまった。



 その後、何回かEXを排水溝にかけてはみたものの、大きな改善は無く、完全に詰まりが解消されることはなかった。浴槽に、毎日お湯が溜まった。 
 そのせいで、ストレスも溜まっていった。



 しかしそこからは、詰まりに対して特に対応を取ることもなくなった。もう、面倒くさくなってしまった。

 たまに、あまり役に立たないことが分かってしまったEXを排水溝にかけるだけの生活が1ヶ月ほど続いた。EXはどこか寂しそうに、シュンとしていた(内容量が減っただけか?)。僕は、
「これはもう業者を呼ばないといけないのか?」
と悩みつつも、詰まりの問題から目を逸らし続けた。
 12月は忙しかったこともあり、詰まりへの対応を怠っていた。



 そして、年末。
 詰まりの兆候を感じてから、半年。
 


 排水溝は完全に詰まり、浴槽は、ずっと水が溜まった状態になってしまった。


 家の浴槽は、使えなくなってしまった。もうお風呂には、入れない。



 冬場の絶望ー



 そして僕は詰まりを放置し、お正月のタイミングで、岐阜の実家に帰省した。



 実家で母親に、排水溝が詰まっていること、業者を呼ぼうと考えていることを相談した。すると母親は、
「いや業者呼ぶ前に、大家さんに言わないと!」
そう指摘してきた。
「詰まった原因が老朽化だったら、大家さんが修理費持ってくれるかもしれんやろ。あと、家のことはなんかあったら相談しないと。助けてもらわないと」
そう指摘してきた。



 確かに、その通りだった。
 大家さんに相談するという思考が、なぜか脳から抜け落ちていた。



 僕は自分に疑問を突きつけながら反省した。



 大家さんに相談するという発想が抜け落ちてる22歳って、大人としてけっこーやばいんじゃないか?
 なぜ、大家さんに報告するというアイデアに至らなかったのだろう?
 万が一、水漏れとかあったらどうするつもりだったんだ俺?
 そうやって他人に何も言わずひとりで抱え込む癖、いつ治るんだ?
 他者を助けることを当たり前と思ってねえから、助けてもらうことも当たり前のように考えられないんじゃねえのか?


 賃貸に住む者として、自分の非常識っぷりと、至らなさを、反省した。


 実家で反省しながら、正月太りで2kg太った。
 太りながら反省した。



 正月の帰省を終え、東京に戻ってきた僕は、
「よし!風呂の詰まりを大家さんに相談だ!」
と、反省を活かし、意気揚々と大家さんの住むアパートの1階に向かった。


 しかし、また問題発生。


 
 大家さんが、いないのである。


 いや、正確には、いるのだけれど、夜しかいないのだ。
 


 大家さんは、朝と昼、おそらく仕事で家を空けていた。そして夜も8時を越えない限り、家に帰ってこない。しかも土日も帰ってこない。そのことは、部屋の灯りがついていないことから推測された。


 一方僕は、夜間大学に通う大学生だ。朝と昼は、家にいることもある。しかし、夜はいない。月曜から土曜の夜は大学にいることが多い。大体9時過ぎまで大学や大学の図書館にいる。そのためアパートへの帰りは10時頃になることが多い。


 つまり、大家さんと僕が共にアパートにいる時間帯は、基本的に夜の10時以降しかないのだ。



 いやいやいやいやいや。待ってくれよ。え?俺、夜の10時以降に、大家さんのところにわざわざお伺いして、
「お風呂が詰まりました。どうすればいいですか?」
と確認しに行かないといけないのか?それはさすがにどうだろう?夜分遅くに失礼しすぎじゃないか?せいぜい夜の8時までくらいが、訪問してもOKな時間じゃないか?わざわざ夜の10時に大家さんのところに向かったら、大家さんは、
「何か緊急のことが起こったのでは?」
と思案するはず。けれど僕が、
「いや、お風呂が詰まりまして」
なんてなことを言ったら、大家さんは拍子抜け。
「え、そんなことでわざわざこんな遅い時間に来たの?常識と礼儀知らずにも程があるってんじゃないの?このどさんぴん大学生が!」
と怒られ、かつ、迷惑がられ、かつ、呆れられるのではないかと怖くなった。



 だから僕は、大家さんの部屋に伺うのを諦めた。
 


 まったく。正月に実家で反省したのはなんだったのか。
 相手に負担がかかるのは承知の上で、他人に助けてくれと言える人間になるんじゃなかったのか?


 
 くそっ!平気な顔して、人に迷惑がられる人間になりたいもんだ!


 結局僕は、朝や昼の時間帯に、奇跡的に大家さんとバッティングする瞬間を、待ち続けることにした。 



 想い人を待ち焦がれ、月日は流れたー




 1月の上旬、大家さんとは逢えなかった。
 1月の中旬、大家さんとは逢えなかった。
 1月の下旬、大学がテスト期間に入り、勉強でそれどころじゃなかった。
 2月の上旬、大家さんとは逢えなかった。
 2月の中旬、大家さんとは逢えなかった。
 2月の下旬、大家さんとは逢えなかった。



 なんと2ヶ月も、風呂の詰まりを放置してしまった。



 2月の上旬からは最早、他人に助けてもらうどうこうより、詰まりを解決するというめんどくささ、大家さんの部屋に訪問するというめんどくささに、立ち向かう気力が無くなっていた。

 そして途中から、問題を先送りにしすぎて、風呂場に異常を抱えて生きるのが正常だと、錯覚してしまった。

 あと、風呂場に詰まりという秘密を抱え続けたまま生活するなんて、なんだかドラマなどでよく見る、風呂場に死体を隠している殺人鬼みたいだなと感じていた。僕は2ヶ月間、自分を殺人犯と妄想しながら、日々を営んでいた。
 
 たまに友達が
「家に遊びに行っていい?」
と聞いてくると、
「こいつ、もしかして、俺が人殺しなの知ってるんじゃないか??」
と勘ぐってしまった。
 もし友達に、浴槽の秘密を知られた時は、友達を浴槽に沈めないといけないのかと考え、憂鬱だった。



 そして、3月の上旬。お風呂が使えなくなってから早2ヶ月。待ち焦がれた瞬間がやってきた。




 大家さんが、俺の部屋にやってきたー。




 ただ、大家さんが部屋に来た時のことを書く前に、自宅の浴槽を使えなかった期間の銭湯通いについても、書いておきたい。


 1月から、近所の安い銭湯に通った。2日に1回のペースで。


 通いすぎて、備えつきのドライヤーを使いこなすのがどんどん上達した。20円で3分使えるのだが、2分30秒あたりで温風から冷風に変え、そっから30秒冷風をあてることで、髪につやを出すということを、体内時計のみで出来るようになった。ドライヤーマスターの称号を欲しいままにしていた。


 また、銭湯の番台と仲良くなり、軽い挨拶も出来るようになった。
 番台と僕の交わる目線が、日に日に柔らかくなる。



 あと、銭湯にいたおじいさんが、
「もう、ワシもそうやけど、みんな死んだら忘れられるわ。安倍さん(安倍元総理)も生きてる時はみんなに色々言われとったけど、死んだらすぐ忘れ去られたわ。わしなんかもう、何ノミクスかも忘れたわ!何ノミクス?何ノミクスやった?」
と隣にいたおじいさんに聞いていた。それを聞いて僕は
「いやアベノミクスだろ。ていうか安倍さんの名前覚えてる奴、何ノミクスか分からなくなること無いだろ。嘘みたいな忘れ方すんな。あと今の日本人が、安倍さんのことあんまり忘れんなよ」
と、脳内で毒づいていた。
 俺はおじいさんが死んでも、おじいさんのこと忘れたりしねえよ。


 お金が無い中で、楽しい銭湯通いだった。
 まぁ時々は、皿洗い用のシンクで髪を洗ったりしたけど。


 話を戻す。2024年3月上旬に。



 その日は、夜の7時にアパートに帰った。すると、1階に住む大家さんの部屋に灯りがついていた。僕は、
「こんな千載一遇、逃してたまるか!」
と決意し、大家さんの部屋のチャイムを強めに押した。というか連打した。

 ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!!!

 さあ、出てこい大家さん!
 ずいぶん待たせやがって!なんで昼間にいねえんだよ!!



 大家さんが玄関から出てきた。
「あのー、夜分遅くに失礼します。上の階に住んでる者ですけど、お風呂場の排水溝が詰まっちゃって、水が流れなくなっちゃったんですけど、どう対応すればよろしいですか?」
自分的に、かなりの低姿勢で伺ってみた。

 すると大家さんは、
「ああ。今、風呂場見に行っていい?」
そう聞いてきた。


 まずい。ちょっと待て。今、俺の部屋来るのか?いや、部屋の掃除してねえぞ。あんまり見られたくないものが色々散乱してるぞ。あと、布団の上にセーラー服(コントの衣装で使う用)が置いてあるぞ。
 まずい。何かしらの変態だと思われる!


 そう思いながらも僕は大家さんの提案を断り切れず、
「あ、ああ。良いですよ」
と返事した。
 大家さんが、俺の部屋にやってきた。



 大家さんは俺の部屋に入るなり、すぐに浴室へと直行した(良かった!セーラー服には目もくれてない!)。そして大家さんは浴槽の詰まりを見て、
「これいつから詰まってる?」
と聞いてきた。僕は
「あ、ああ、、、1週間前くらいっすかね・・」
と、思いっきり嘘をついた。


 というのも大家さんに、完全に詰まってから2ヶ月以上、この事態を放置したことがバレれば、修理代を自己責任として僕が負担することになる可能性がある。それを恐れた。恐れて、嘘をついた。


 また大家さんは、
「これちゃんと掃除してる?」
とも聞いてきた。僕は
「定期的に手入れしてたんですけどね・・・」
と、また嘘をついた。
 本当はずっと放置していた。


 そして僕は、
「掃除はしてたので、多分老朽化とかが原因だと思うんですけどね・・」
と、詰まりの原因を老朽化のせいにした。
 そうすれば、責任が僕から大家さんに移り、修理費をもってくれるかもと考えたのだ。僕の心はせこい。


 しかし大家さんは、
「いやこれは多分髪の詰まりだと思うけどなあ」
と、責任が僕にあるというような雰囲気を出してきた。
 僕は焦った。


 いや、責任が俺ってことはもしかして、修理費払うのも俺なのか!?
 そんなお金無いって!
 お願い!
 施設の老朽化で詰まったってことにして頂戴!


 そう願った刹那、大家さんは、浴槽の横、洗面台の下部にある、もうひとつの排水溝を指さした。
「え、ここは掃除してる?」
と聞いてきた。また、
「ここの排水溝、お風呂の管に繋がってるんだけど、手入れしてる?」
と聞いてきた。



 ぎくっ。オイオイ。そこは一切掃除してないぞ。ていうか、そこがお風呂の管に繋がってるだと?そんなの知らねぇよ。聞いてねぇよ。洗面台の下の排水溝は、洗面台に繋がってるんじゃねえのかよ?俺はそこの洗面台、ほぼ使わないから手入れなんかしてねえんだよ。



 その後大家さんは、洗面台の下部の排水溝の蓋を取り、その中に、大量に固まった、どす黒い毛の塊を、見せてきた。
「え、ここは掃除してる?」
僕は答えた。
「全くしてないです」


 大家さんは、ほらねやっぱりという顔をしていた。



 その後大家さんに、排水溝の汚れを取り除くタブレットが、200円で売ってるから、それを買って、手入れすることを勧められた。また排水溝の奥を、竹串などでつついて、詰まりを柔らかくしてから、何度もしつこくEXをかけることも勧められた。


 そして、それで駄目だったら業者を呼べとのこと。


 業者に、詰まりの原因が老朽化だと言われたら、修理の負担は大家。毛の詰まりと言われたら、修理の負担は僕。そう伝えられた。

 僕は、
「はい。分かりました」
と大家さんの言うことに全て同意した。
 大家さんには、非常に失礼な物言いになってしまうのだけれど、敗戦国がムリヤリ勝利国に条約を締結させられるような気持ちだった。



 そして翌日から、大家さんの指示に忠実に、排水溝の詰まりを除去しようと一生懸命取り組んだ。



 取り組み初めてから2日が経った。





 風呂の詰まりが、なんと完全に治った。


 大家さんのアドバイスに素直に従ったら、アッサリ解決してしまった。


 これまでの苦労はなんだったのか。
 大家さんって、すげえんだな。
 もっと早く助けてもらえば良かった。
 事態の悪化を先延ばしにするのも、他者に甘えないのも、今回限りで終わりにしたい。



 
 後日、大家さんに治ったことを報告した。


 大家さんは、良かったねと笑っていた。


 その日の夜、久々に家の風呂に入った。


 排水溝の中にお湯が気持ち良く流れていく。


 ゴキュゴキュゴキュ!と音をたてながら。
 


 

 その音が、ファンファーレに聞こえた。

 これからもずっと聴き続けたい。
 着ボイスにしたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?