『日天』に投稿したものの、読まれなかったメッセージの数々#6

「家族の恥ずかしい話」
もう亡くなりましたが、父は昭和の破天荒オヤジで、ワガママで聞かん坊で自分に甘く、されど憎めない愉快な人でした。クレイジーキャッツの植木等さんをご存知でしょうか?あんな感じです。

これまた四半世紀も前の話で恐縮ですが、弟の結婚が決まり、挙式をハワイですることになりました。20年前ぶりのハワイへの家族旅行です。
成田でお嫁さんとそのご家族に初めてお会いして、一堂意気揚々と飛行機に乗り込みました。

時は平成の初期で、昭和から平成スタイルにシフトする過渡期ともいえる時代です。受動喫煙の健康被害が叫ばれて、商業施設やオフィスなどの分煙化や交通機関での全面禁煙が進んでいたので、もうその時は飛行機の機内での喫煙は禁止となっていました。

前述の20年前のハワイ旅行の時は、今から言うと45年程前だったので、飛行機では離着陸時以外の時間、座席での喫煙が可能でした。本当に昭和の常識今の非常識ですよね。
その後は機内の片隅にカーテンで仕切られた喫煙室が設けられ、喫煙者はそこに赴きアヘン窟と化したスペースでタバコをむさぼるという時代を経て、とうとう全面禁煙になったというわけです。
ヘビースモーカーの方たちにとっては、海外への渡航も辛いものになりました。

弟はハネムーンだったので、自分たちと両親のためにビジネスクラスの座席を用意しましたが、私と主人と息子は自腹だったので、当然エコノミーです。ので、機内では離れ離れお互いの様子はわかりません。
飛行機は無事離陸に成功し、しばらくするとウインドウは閉じられ、機関は暗いおやすみモードです。するといきなり、けたたましくアナウンスが始まり、内容は「たった今トイレ内で喫煙した人がいた。機内での喫煙はどの場所でも固く禁じられている。次にそのような事由が起きれば、成田に戻る」ぐらいの強いお咎めアナウンスでした。
私は「もしや我が父かな?」と耳が熱くなりましたが、席が離れていたので、他人事と認識してその後のフライトを楽しみました。

無事ホノルルに到着して、家族と合流。父の顔が見えたので、「もしかしてタバコ吸ったのパパ?」と聞くと、「いや俺の前の人も吸ってたんだよ。」と言い訳にならない言い訳をして、照れ笑いしました。
本当に私は恥ずかしいです。こんな大人になってまで、禁止されたからトイレで吸うとは中学生レベルです。お嫁さんのご家族にバレてないことを祈るばかり。

その後も父はタバコをやめることなく、孫が近くにいても平気で吸うので、「いい加減やめたら」と促すと、「小学生の時から吸ってるんだ、今さらやめられるか!」とこれまた言い訳にならない言い訳をして、死ぬまでタバコをやめませんでした。
肺はかなりのダメージあったとは思うんですが、88歳の米寿まで生きました。

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