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〔54〕NATOの終り

〔54〕白頭狸の時務随想 ウクライナ戦争でNATOは了る
 ウクライナ戦争は最終局面に入ったらしく、直接間接にこれに関与した各国および各勢力で、政体首脳の動きが活発です。とりわけ無様というべきはNATOで、この度フィンランドの加盟を受けて喜んでいます。
 ウクライナ戦争の根本原因は1949年に「アメリカを引き込みソ連に対抗しドイツを抑える目的」で西側諸国が設立した北大西洋条約機構(NATO)に再軍備したドイツが参加したことに対抗して1955年に対発生したワルシャワ条約機構が、1991年のソ連崩壊により崩壊しましたが、その後もNATOが存在していることです。
 この二つの条約機構は対発生したもので、相互依存することが存在の意義ですから、1991年から後は存在してはいけなかったのに、目的を変更して存在していたことが、ウクライナ戦争の遠因となりました。
 ワルシャワ条約機構の加盟諸国とNATO加盟諸国の直接接触は国際紛争の基ですから、両者の間に緩衝地帯の存在が望ましく、永世中立国のスイス・オーストリアが本来その立場にありましたが、次第に西側に傾斜していったことが、被害者意識の強いロシアを不安にさせました。
 1991年でソビエト連邦が崩壊して裸になったロシアは、伝統的なロシアの國體領であるクリミア半島とロシアからそれに至る黒海添いの回廊地帯の独立を阻むだけの国力がなく、また政体大統領のゴルバチョフには、クリミア半島を直轄下に置く国家構想も、それを実現する外交能力もなかったようです。
 2000年にロシア大統領に就いたプーチンは2014年のウクライナにおける政変に乗じ、ウクライナ共和国内の自治領であったクリミア自治共和国をウクライナから分離独立させ、ロシア連邦のクリミア連邦管区として編入したのです。
 現行の国際法は武力による国境変更を認めないので、新聞とテレビしか情報源のないわが国民は、にわかに正義感に燃えたらしく「国際法を無視してウクライナの一部を奪取したロシアが一方的に悪い」と言い立ててプーチンを攻撃し、ゼレンスキーを誉めそやしています。
 双方いずれが正しいかは見る立場によりますが、ロシア國體の歴史を尊重すればプーチンのクリミア半島奪還を認めるべき、と思うのが白頭狸です。
 要するにソ連崩壊に際してロシア政体は余りにも安易に東ウクライナとクリミア半島を放棄したわけで、ロシア資源の強奪略奪を図る国際的産金軍連合がこれに付け込み、クリミア半島を含む東西ウクライナをウクライナ共和国にしてしまったのです。
 2014年から翌年にかけてミンスクで調印された議定書で停戦と政治解決を目指す合意がなされ、クリミア半島はロシア連邦に事実上編入されましたが、これで事態が終わらないのは当然で、2019年にウクライナ大統領に就任したゼレンスキーがクリミア奪還を目指す国家計画を進めたことから、勃発したのが今回のウクライナ戦争です。
 そもそもプーチンが引き下がったのは、西側がNATOを東方に進出させないと暗黙裡に約束したからですが、それを簡単に破ったゼレンスキーに平和への願望なぞ毛頭ないことが明白です。
 つまり、ゼレンスキーは自国民の被害など構うことなく、この戦争を長びかせて兵器産業を儲けさせるほか、ロシアに打撃を与えて永遠にアメリカの従属国とする策略の一端を担っているのですから、戦後八十年もその状態に置かれてきた日本人にとって極めて腹立たしい傭兵隊長です。
 世界全体のバランスを取る任にあるワンワールド國體からしても許し難い存在ですが、岸田政権が早々にウクライナ支援を国策と決定し、このほど「必勝飯しゃもじ」を土産にゼレンを励ましに行ったのは、いかなる所存によるものか。定めし何かを企んでいるもの、と狸は洞察しています。
 冒頭で口にしたNATOの無様とは、全会一致でなければ軍事行動が執れないNATOに、ロシアとの間が極めて微妙なフィンランドを加えた日には、行動の選択肢が極めて制限されるからで、NATO全体の行動の容易さを考えればフィンランドをそのまま中立にしておく方が良いのに、と思うからです。
 その反対を敢えてしてフィンランドを加入させたのは、いかなる魂胆によるものか、岸田さんと共通するものを狸は感じています。

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