映画『PERFECT DAYS』

(※ネタバレ若干あります。展開には触れてません)

予告を見て気になっていた映画。
役所広司さん演じる主人公・平山の生活を切り取った、ドキュメンタリーのようなフィクションだ。


どんな作品かというと、ずーっときれいな空気が漂っている映画だ。
基本的には、トイレ清掃員として働く平山さんの毎日が繰り返される。早朝、まだ薄暗い中起きてもみじの苗木に水をやり、顔を洗い髭を剃って、作業着に身を包む。
質素な木造住宅の扉を開け、外に出た平山さんは何かを見上げて微笑む。
毎朝、この喜びと期待の浮かぶ表情から一日が始まっていく。


何を語るわけでもない、ただルーティンと仕事を着実にこなす彼の生き方が描かれる。
渋谷区のトイレを廻り、黙々とていねいに掃除していく。人が入ってくると、静かに目礼して外に出る。
清掃員に注意を向ける者はほとんどいない。トイレを使用した後、無視に近い形で通り過ぎられても、平山さんはちょっと頷いた後、また穏やかに作業に戻る。

昼休憩に木立を見上げては、嬉しそうに写真に収める。
車の中で好きな曲のカセットテープを流す。
仕事帰りに立ち寄った飲み屋で、いつものメニューを頼み野球中継を見る。
夜、眠る前に布団の中で本を読む。


何気ない日常が、とても大切でかけがえない喜びに溢れている、と。
平山さんの表情や態度から伝わる。
それは特別な事をしなくても得られる幸せで、ただ自分の好きな事・なすべき事を自分の満足するやり方でやればいいのだ。


平山さんのようにキチンと生活を送れてはないけれど、自分の生き方や感じ方を肯定してもらえたようで救われた。
この映画を観て共感するような人間は、もしかしたら社会で息苦しさを感じることが多いかもしれない。
ただ自分なりの幸福を見つけて、小さな誇りを持って生きているという点ではかなりラッキーだと思う。
「PERFECT DAYS」は、何者でもない私に自信を抱かせてくれる作品だった。


平山さんのような澄んだ目の人間になりたい。だけど私は求道者にはなれない気がする。
依存してるし、甘えてるし、自分をよく見せたい。
最終目標のひとつとして平山さんを心に置いとこうかな、というかんじです。


ここからは雑な感想。
平山さん、いつも家に鍵かけないのが地味に気になった(笑)
自動で鍵の閉まる扉…?いや、でもレトロな文化住宅だし、鍵を開けてる描写もないしなあ…といろいろ考えてた。

あと、平山さんが仕事に行く前、必ず自販機で買うBOSSのカフェオレ。
映画を観終わってから、旦那と買いに行きました。
「PERFECT DAYS」の影響で缶コーヒーの売り上げ伸びてるんじゃなかろうか…?ってくらい無性に飲みたくなります。


今の渋谷区のトイレって、めちゃくちゃお洒落なんですね。
幾つもTOILETが登場するんですが、デザイン性のある綺麗な建物でびっくりしました。
自分は、家の便器を磨きながら「トイレを掃除している人がその家の主だ!」などとよく考えるのですが、その理論でいくと清掃員さんは街の営みを支えている重要人物。会うことは少ないけど、顔を合わせたら「ありがとうございます」って言おう。


最後に、この作品は音楽が最高です!
「PERFECT DAYS」、大好きな映画となりました。
よかったら観てみてくださいね。

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