映画「私たちの声」

この映画を知ったきっかけは、
女優の杏さんだ。
杏さんがインスタグラムで告知していたので興味を持ったのだ。
平日に休みを取り一人で観に行くことにした。

「私たちの声」という映画は、
七つのショートストーリーの集まりだ。
アメリカ・イタリア・インド・日本の
女性監督と女優による、それぞれ女性を主役にした短編映画だ。
実話ベースもあればフィクションもあるのだが、どの作品も世界各地でリアルに起こっているであろう出来事を描いている。

映画を観始め、まず圧倒された。
薬物中毒で刑務所のリハビリを受ける女性、コロナ禍で家族を失ったホームレスの女性など、
自分の世界・生活とかけ離れた境遇で、
苦難を強いられる女性の姿を見たからだ。
ズシンときた。社会、または家庭のもとでこんな重い物を背負わされている人がいるんだ…。
ずっと圧倒されながら観る。
希望、救いが見えた時、緊張の糸が切れて込み上げるものがあった。
それほどリアルな演技、作品が続いた。

深く印象に残った作品がある。
マリア・ソーレ・トニャッツィ監督の
「声なきサイン」。
獣医として働く女性が、足の怪我で
病院に運ばれてきた犬を治療するのだが、その飼い主である夫婦に違和感を覚える…というストーリー。

獣医を演じるマルゲリータ・ブイの表情と演技に引き込まれ、
話の展開に息を呑み、見終わった後
じわーっと鳥肌が立った。
決して明るい内容ではないのだけど
優しさと希望があって、しかも何というかすごく完成されていて、好きな作品だ。

さて、日本の作品「私の一週間」は、
呉美保(お・みぽ)監督と杏さんがタッグを組んで製作されたものだ。

二人の子どもを育てながら働く女性を
杏さんが演じている。
これぞワンオペ育児、という生々しい日常の様子が描かれている。

時間に追われ続ける息のつまりそうな
一週間だけど、確かな喜びがあり、
終盤には素敵な出来事もある。
ほっこりして、じんわり幸せになれる作品であった。

七つのショートストーリーの中では
薄味な方だなと思ったけれど。
“日常”や“生活”の描写をていねいに
大切に描いており、
でもその中に、ハッとするような瞬間や
小さな落とし穴みたいな怖い描写が
散りばめられているのが印象的だった。

日本は平和な国だけど
平凡そうに見える日常の中に、SOSが隠れている。
それは誰にも気付かれないまま埋もれてしまい、それでも人々の必死の忍耐によって何とか生活は繋がっていく。

呉美保監督の伝えたいこと、
杏さんの表現するものを完全に理解できたとはいえない。
母親の偉大さ、大変さに思いを馳せ、
やはり圧倒される私である。

「私たちの声」という映画を観て、
女性である自分に向けたエールを感じ
胸が熱くなった。
性別に関係なく観てほしいとは思うけど、女性が鑑賞することで心強さを感じられる作品だと思う。
何より七つのストーリー、ひとつひとつが短めで見やすいです。
映画館で観ることをおすすめします。

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