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2023上半期best9(読書記録その15)

 2023年1~6月に読んでよかった本を12冊紹介します。「Best9なのに12冊?」と思った皆さん。メジャーリーグもパ・リーグも東都大学野球もDH制を採用しているので+1、さらにプロ野球のオールスターゲームのファン投票で投手部門は先発・中継ぎ・抑えで分かれているので+2ということです。ご容赦ください。(Instagramでは10冊でやったんですけどねww)


Best9に選出された12冊

  1. 『カプチーノ・コースト』片瀬チヲル

  2. 『セリエA発アウシュヴィッツ行き』マッテオ・マラーニ

  3. 『本は読み方が9割』やまてつ

  4. 『旅立ちの日に』清水晴木

  5. 『汝、星のごとく』凪良ゆう

  6. 『<あの絵>のまえで』原田マハ

  7. 『瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。』荒木俊哉

  8. 『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈

  9. 『丸の内魔法少女ミラクリーナ』村田沙耶香

  10. 『桃を煮るひと』くどうれいん

  11. 『Yuming Tribute Stories』小池真理子・桐野夏生・江國香織・綿矢りさ・柚木麻子・川上弘美

  12. 『オリックスはなぜ優勝できたのか』喜瀬雅則

紹介済みの本

 5.『汝、星のごとく』、7.『瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。』8.『成瀬は天下を取りにいく』、12.『オリックスはなぜ優勝できたのか』は過去に紹介しているので、過去の記事を参照してください。

5.『汝、星のごとく』https://note.com/clock_plum22/n/na60ff2d073ed

7.『瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。』https://note.com/clock_plum22/n/n3851637a8096

8.『成瀬は天下を取りにいく』https://note.com/clock_plum22/n/n620f73586b40

12.『オリックスはなぜ優勝できたのか』https://note.com/clock_plum22/n/n2f0558b89afb


初出しの本

『カプチーノ・コースト』片瀬チヲル

 休職中の早柚は自宅の近くにある海で腕時計を落としてしまう。肝心の腕時計は拾えず、拾うのはゴミばかり。ただ、そのことをきっかけに早柚は海岸でゴミを拾うようになる。そしてそれを通じて様々な人と出会う。
 自分にとってはゴミじゃないと思えるものも、他人にとってはゴミだったり、自分では諦めていることも、他人には諦めちゃいけないことだったり、自分では何かを変えられると思っていることでも、他人には何も変えられないと思われたり。
 人それぞれの価値観は十人十色でみんな違う。そのうえ、海岸に落ちているゴミと同じで目に見えるとは限らない。
 ゴミ拾いを一緒にしているカメ姉さんの「一度見えるようになってしまったら、もう見えなかった頃には戻れないんだよね。」というセリフとこの本の最後のほうにある「1日1回でいいから、よかった、と呟けるような暮らしがしたい、と思った。」という早柚の呟きが印象的。

『セリエA発アウシュヴィッツ行き』マッテオ・マラーニ

 1930年代にインテルで1度、ボローニャで2度のセリエA優勝、ボローニャではさらにパリ万博カップ(今でいう欧州CL)を優勝に導いた監督、アールパード・ヴァイス。しかしユダヤ系ハンガリー人だったためにイタリアを追われ、逃げた先のオランダでナチスに捕えられ、捕虜となり理不尽な死を遂げることに。
 監督になってから収容所でなくなるまでの彼と彼の家族の消息について書かれている。
 1930~40年代のイタリアサッカー・オランダサッカーだけでなく当時のイタリア・フランス・オランダ・ドイツの社会情勢についても書かれていて、当時のヨーロッパ全体がいかにしてユダヤ人にとっての地獄だったのか、収容されたあとのユダヤ人への扱いの酷さなども合わせて書かれている。
 もしアールパードがこの時代の前後に生まれていたら、イタリアからはなれるときにヨーロッパではなくアメリカ大陸やソ連に行っていたら、ユダヤ系の血が入っていなかったら……彼はこんな理不尽な死にかたをせずにすんだし、仮に大戦後も存命であれば、現代のサッカーは多少違っていたかもしれない。
 スポーツができるには平和である必要があり、かつ戦争で敵にすべきは民族でも国でも人でもなく、欲ではないだろうか。

『本は読み方が9割』やまてつ

 1冊の本からいきなりすべてを吸収する必要はない。その吸収した知識をアウトプットするときは本に書いてあった通りに行動する、特に印象に残ったところとその理由と自分の考えを書く・話すを中心に。
 本は目的を決めて読む本とアウトプットを目的として読む本とでわける、短期的な目標が明確なら同じジャンルを一気に複数読む。そうでないならばらばらなジャンルを乱読する。但し小説や哲学書は1冊に抑えておく。
 読書の質は=書籍の質x読み手の経験値、読書のメリットは主に「考え方の幅が広まる」「人の気持ちを受け止められるようになる」「情報処理能力が高まる」「言語化能力が高まる」「自分の判断に自信が持てるようになる」「読書仲間ができる」といったところ。
 読書量が増えたきっかけが読書会への参加やSNSへの投稿だったので、自然と伝わるアウトプットを心掛けて読むようになったかもしれない。必然的に語彙が増えたことによって言語化能力も向上し、他人の考えに対して「間違っている」と否定することがなくなったように感じる。そして何よりも本に関する投稿や発表をすることで人とのつながりもできた。本はコミュニケーションツールである。
 欲を言えば、自分が中高生のときに読みたかった……。

『旅立ちの日に』清水晴木

 千葉・金谷を舞台に展開される出会いと別れの物語。それを見守るフェリー乗り場の総合案内係・椿屋誠の変化の様子も描かれている。
 スタートはフェリー乗り場の中にある定食屋「春風亭」から。そこからいろいろな人が絡み合って、様々に展開され、店主の息子・大輔の成長の様子も描かれていく。
 ほとんどの登場人物は出会いと別れによって傷つき、既存の人間関係から離れるために金谷の街に行き着いているが、そこから立ち直って、思いも寄らない新しい一歩を踏み出せたのもこの街での出会いによるものだった。
 同じような経験をしたもの同士、言葉にできなくてもわかり合えるものがあって、それによって強く結びつけられていったのかもしれない。
 今年の東京都立高校の一般入試にp.106,L8~p.112が使われていたのがキッカケ(東京都教育委員会のHPだと見れないので新聞社のHPから見たほうがいいかも)。
 個人的には息子の大輔とその友人たちが自分と同世代で、出てくる音楽が学生時代に聞いていた曲がドンピシャ。それによって物語の世界観にはまることができたのかも(BUMP OF CHICKENの『天体観測』とかMONGOL800の『小さな恋のうた』とか)。

『<あの絵>のまえで』原田マハ

 目の前の現実から絵画を見たときの記憶を思い出し、そこから傷付いても再び立ち上がる勇気を得て、新しい未来へと歩み始める女性たちの姿を描いた短編集。
 絵画とは感情を色と図形を使って目に見える形にしたものである、そして傷付いても、振り回されても、諦めても、強い人はまた立ち上がれる。
 「潮風が吹き渡っていた。そのさなかに私は立っていた。新しい私が、佇んでいた。」(さざなみ)という3文がこの一冊のハイライト。

『丸の内魔法少女ミラクリーナ』村田沙耶香

 茅ヶ崎リナ(36)は9歳の頃に魔法少女ミラクリーナに変身して遊んでいた。そして27年後、リナは相変わらず魔法少女ごっこを続けていた。
 そんな中、友達レイコとレイコの彼氏がモメて、リナはその彼氏に魔法少女に変身することを強要し、リナもそれに付き合うことに…。そして事態はあらぬ方向へと進む。
 表題作を含めて4編が入った短編集。表題作が一番ソフトで、それ以外は平常運転。いつも通りの村田沙耶香ワールド炸裂な一冊。
 「言語化できない違和感を葬り去る」ことについて書かれている指南書(?)なのかも。
 気に食わない仕事を振られたときに「魔法少女に変身して云々」は普段使いできるテクニックかもしれない。

『桃を煮るひと』くどうれいん

 食事にまつわる41のエッセイが収録されたもの。普段の何気ない食事の1コマ、家族の風景、特別な日の慌ただしさ、東北の様子が見えてくる。
 ひとりで飲食店に入れないからと近くの友人を誘うものの、この日ばかりは断られ、原画展に来てくれた読者に声をかけた(「ひとりでご飯を食べられない」)のには一番笑った。むしろひとりで飲食店に行くより難しい気がするが(笑)
 かわいい挿絵と東北の風景がところどころに見えてくるのもこの本のいいところ。岩手にしかないであろう瓶ウニやさんさ祭りについても書かれている。

『Yuming Tribute Stories』小池真理子・桐野夏生・江國香織・綿矢りさ・柚木麻子・川上弘美

 小池真理子・桐野夏生・江國香織・綿矢りさ・柚木麻子・川上弘美の6人がユーミンの楽曲をコンセプトにして書き下ろした小説が1作ずつ収められている。
 国語の問題で少しだけ川上弘美さんの作品を読んだが、他の方は初めて。6人の他の作品もこんな感じなのかな、と興味を持てる一冊。
 楽曲がリリースされた時代(70s~90s前半)が舞台になっているのかと思いきや、小池真理子さんの作品以外は現在が舞台となっている。
 一番刺さったのは桐野夏生さんが書いた『DESTINY』。大学職員である重森亮太はルーティンを崩さずに生活するアラサーだったが、ある日フェンスによじ登ってボールを取っていた女子高生と目が合い、そこからその女子高生が気になって仕方なくなり、亮太は「これが運命だ」と思い込み、ついにはいろいろとルーティンを変えてしまうまでに。
 「運命かもしれない」と思ったら、いろいろと変わるのが普通なんだろうなぁ、そしてそれがすべて崩されるのも普通なんだろうなぁ、そして運命とか恋には年齢は関係ないのかなぁ、と。
 あと、『DESTINY』『青春のリグレット』など、かなり有名な曲でもシングルカットされていないのか!と驚いた。


さいごに

 先ほど紹介した『桃を煮るひと』について、NHKラジオ第一で放送されている『ラジオ深夜便』で紹介されています(っていま記事を書きながら聴いていたんですが)。
 その中では「ねずみおにぎり」と「瓶ウニ」について紹介されていました。「日常の食事の様子が独特の感性を通して見事に表現されている」と評されていました。

7/16(日)午後11時台の聞き逃しhttps://www.nhk.or.jp/shinyabin/program/a7.html

というわけで今回はここまで。

ではでわ



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