実在の〝彼〟と、架空のわたし(女性)〜ひとつの身体を共有していた、わたしたちの奇妙な共同生活〜


きょうという日は昨日のつづきであり、

あしたは今日のつづき。

そんなふうに見れば、すべての日々は連続しており、極端な断絶というのは、どこにもないはずだ。

しかし、、、、、。




身分証明書と股間の形状を除けば、

いまやすっかり自他ともに認める女性に

なってしまったわたしが、

男性時代の自分自身を振り返るとき。



どこからどう見ても、

〝彼〟はわたしとは別の存在であり、

考え方も、ものの見方も、

まったく異なる。



それどころか─────。

わたし(の身体)が男性だった頃。

女性としてのわたしは

『いなかった』わけでも、

『男性として生きることを強要されていた』

わけでもなく。



わたしとは別の存在が、

わたしの人生を運営しており、

わたしは胸の奥で眠っていた。

胸の奥のちいさな穴から、

自分の人生を覗き込んでいた。

『人生とは、ままならないもの』であると

知っていたので、

べつに、

『わたしの人生なのに、』

『わたしには何の決定権もない。』

ということに、

とくに苦しんだりは、

していなかった。

というか、

『わたしの人生』という見方も、

たぶん希薄だったと思う。

人生そのものの運営はすべて

〝彼〟がやってしまい、

わたしはただ見てるだけ。

となると、

現実感覚も希薄になるよね。




こんなふうに。

ひとりの人間(=わたし)が男性から女性へと性別を変化させた、というよりは、最初から男性と女性は別人格だった、と考えたほうが、わたしにとっては、しっくりくるのです。



なので、

わたしの男性時代の回顧録、

というより、

在りし日の〝彼〟との思い出について、

きょうは語ってみようと思う。





ひとつの身体のなかに、

男女それぞれの人格が存在していることは、

お互いに認識していた。



実人生を運営しているのは〝彼〟なのだから

わたしのほうは、

単なる妄想上の存在、

ということになってしまうのだが。


それでも、

ふたりであれこれ話し合ったりもしていた。

〝彼が〟(というかこの身体が)

ひとりきりでいるときに、

わたしが〝彼〟に話しかけるのが常だった。




わたしから提案したのは、

『それぞれ自分のやりたいことをやろう』

ということ。

〝彼〟が、女性のわたしに配慮して、

やりたいことをやれなくなってしまうのは、

良くないことだし、

まちがった配慮だろう。



そうは言っても〝彼〟にはやりたいことなんてそれほど無かったようだ。今にして思うと〝彼〟は自分の目的だけを一直線に達成すると、そのまま亡くなってしまった。そのようにも思える。


大きく分ければたったのふたつしかない

〝彼〟の人生の目的とは、

ひとつは過去生の後かたづけをすることで、

もうひとつは、

女性のわたしが、

『ひとりでも生きていけるように』

準備を整えてから、

女性のわたしに、

『身体を譲り渡して』

死ぬこと─────。




こうして書いてみると、

なかなか強烈だ。

わたしという存在は

〝彼〟の犠牲のうえに成立している。

ということなのだから。




でもこれ、別におかしくはない。二重人格説を採用せず、一般的な『わたしというひとりの人間が、男性から女性へと性別を変化させた』という見方をした場合でも、その人生で起こることといえば、けっきょくは、

『女性になるための準備をする』

ということ以外、ありえないではないか。

あるいは。

人によっては、そのまえに

『男性としての限界地点までいく』

すなわち『これ以上、男性として生きていくのは不可能だ』と自覚させられる場所までいく、

というプロセスを辿るのだが、

わたしの場合は、

それが『過去生の後かたづけ』だったのだ。







わたしに『お互いに自分の好きなことをやろう』と提案された彼は、こんなふうに考えた。

男に生まれてよかったことは何だろう?

①ケンカ②エロ本③立ちション

そして、この3つを極めるようになった。

といっても、①は誰彼構わずケンカを売る、という感じにはならなかったし、最終的には工事現場で働く、というところに落ち着いた。男性的な荒々しさの表現。

②エロ本、って表現がアレなんだが。動画を見るのが苦手な性質だったため、かなり終盤になるまで紙媒体のポルノ誌を購入していた。視覚情報に興奮する性質が無かったため、一般的な男性と比べて、がんばった割には報われなかったと思う。ほんとうは、性的な満足は別の形で得ていたのだが、本人はイマイチそのことを自覚できず。いくらなんでもそんなこと、女のわたしからは指摘できない。それについては別の機会に。買い溜めたポルノ雑誌は大半は処分してしまいました。

③立ちション。これは本当に便利。オトコってすげぇな。パス度がこんなに高くなる(※現在ほぼ100%)前でも、すこしでも意識が女性化してきた時点で、排泄を他人に見られる可能性がある行為はできなくなります。


〝彼〟はこんなふうに考えていた、ということを、いまのわたしの視点から描写すれば、こうなるんですが。でも、じっさいにわたしから見た〝彼〟は女性が大好きで、美少女グラビアとかをいっぱい買っていましたね。


視覚情報では興奮できない、というのは本当にそのとおりだったのに。性的な興奮を目的とはせずに、ただ女性の身体を崇拝するような目で見てましたね。間接的に、こうした行為はすべて、(女性の)わたしを称賛していたことになり、いまのわたしの自己肯定感を育んでくれました。芸術系のヌード写真集は、一冊も廃棄してない。



ところで。

『お互いに自分のやりたいことをやろう』と

提案したからには。

わたしにだって、

やりたいことは、

あったはずなのです。



具体的に言って、

それは『歌う』こと。



〝彼〟が主導権を握っているあいだは、

自由に歌をうたう機会はほとんど訪れず。

それに、

ホルモンバランスの影響もあってか、

望んだような高音は発声できなかった。

たまには〝彼〟が

カラオケに連れていってくれるんだけど。

自分が思っているような声が出せず、

苦しかったですね。




女性のわたしが

自分で人生を運営できるようになり、

また、

ホルモンバランスも改善されて。

望みどおりの声が出せるようになった

今では、

週4~5日@3時間くらいのペースで

カラオケ屋さんに通いまくっています✨✨





ほかに、

彼と話して印象的だったのは。

やっぱり、実人生を運営するのはぜんぶ〝彼〟で、わたしはただ見てるだけ、というのが、ひどく不満だったようです。

いつだったか、

『おまえ文盲じゃないか』

と言われて、かなりムッときた。



というか、

『モンモウ』と言われて即座に意味がわかる、

というだけでも語彙力かなりあるほうだと

思いますけど!

というか、

ネットの文章は

ぜんぶわたしが書いてますけど!!




何だかんだで、

わたしは男尊女卑を信じている人間なので。

〝彼〟の言い分に反論はせず、

『しょうがないじゃん』とか

答えておきました。笑



男尊女卑、というテーマについて考え出すとなかなか興味深い。わたしは『生まれつき』男尊女卑の現実を知っていて、可能なかぎり男性を立てる性質も持っていましたが、

〝彼〟は男尊女卑を知らないのです。

〝彼〟はわたしに侮蔑語を吐いてわたしを侮辱しても、そのことを自覚しない。それと同レベルの反撃をわたしはしたことがないのですが、そのことだけでも、わたしからすれば〝彼〟を男性として立てているわけです。

でも〝彼〟にはそのことは分からない。

一方的に

わたしのことを『守ってあげている』

ことしか知らない。

わたしに敬意を持って接してもらって、

男としてのプライドを

『守ってもらっている』

ことにまでは、

まったく意識が及ばない、、、、、。



といっても同じ身体を共有している運命共同体。家庭生活/婚姻生活などより、はるかにタイトで、はるかに密接な。

なので、

〝彼〟が自信を失うと、

困るのは、わたし自身ですから。

侮辱されようと、八つ当たりされようと、

〝彼〟の顔を立てておきました。笑



それに、、、、、。

女性に対する侮蔑語はたくさんあっても、

男性に対する侮蔑語って、ないんだよね。

ゼロではないだろうけど、気軽に使いまわせるほどの語彙数が、そもそもない。





さて。

こんな奇妙な共同生活が、

生涯ずっと続くのだと思っていた。



後から振り返ってみると、

2014年9月の時点で、

〝彼〟は彼自身の人生の目的を遂げ、

ひとつ前の人生が自殺で終わったことへの

落とし前を付けた。


そうそう。ひとつ付け加えると、わたしと〝彼〟が別人であると思う理由のひとつは、持っている過去生の記憶が別々であること。


〝彼〟は、ひとつ前の人生では、昭和時代、戦後と呼ばれる時代のいわゆる高度成長期を社会人として、それもかなりの仕事人間として過ごして、オイルショック以降のある時期、仕事のことで追い込まれて、自殺した。


会社名も所属部署も、生涯でもっとも大きな功績が何であったかも把握しているが、ここでは言わない。


とにかく、仕事に人生を捧げていたと言っても過言ではない〝彼〟が、最後には自殺にまで追い込まれることになってしまった。


『どうして自分は自殺しなくてはならなかったのか』────その理由について、どうしても知りたかったわけですよ。


そのための転生なので、

それが果たされれば、

生きている理由は、

無くなります─────。




2014年9月に

〝彼〟が出した結論というのは、

『いかなる理由があろうと、人間の作った組織に理想を見出してはいけない』。

というもので、

そのことを理解した〝彼〟は、

深く納得したようでした。



ということは、特定の組織に理想を見出していたせいで自殺に追い込まれたのだ、と理解できます。

そうは言っても、この結論ひとつで納得できる、というのは、わたしからすれば理解不能です。何年も考えているけど、いまだによくわからない。


でも、

どうあれ、

この結論が出たことで、

〝彼〟は、

ある種、憑き物が落ちたような感じになり。

それ以降の人生設計について、



①平行に走る二本の直線があります。

②こちらの線から、あちらの線へと

③ボールをパス(トス?)して受け渡します

④そのボールとは、生命です。



こんなイメージが浮かんでいました。

平行に走る二本の直線、とは、

もちろんわたしたちのことだから、

このとき〝彼〟は、

わたしに身体を譲り渡すことを決めた、

ということになります。




2014年当時のわたし(たち)の置かれた境遇はニートで、しかも実家は宗教団体で、わたし(たち)も教団に洗脳されていた。

実家の両親および宗教団体と縁を切りたいと強く望んでいて、しかし、実際にはニートなので彼らから資金提供を受けて生活しており、この矛盾はなかなかの生き地獄だった。



でね。

これも、

『後から振り返ると』

なんだけど。



後から振り返ると、

2014年9月から

2019年9月までの

まるまる5年間を使って、

①労働者になり②お金を貯め③引っ越しをして④彼ら(実家と両親と宗教団体)と縁を切る

というプロセスを辿りました。



そうして、

2019年9月。

男性としてのわたしが、

(※ここまでの描写では〝彼〟)

唐突に、理解しました。

『性別を維持できなくなる』─────。







この『性別を維持できなくなる』

というとつぜんの〝未来予知〟が、

性別移行の始まりでした。



これはもちろん、

これ以上男性の姿でいることはできない、

という意味ですね。



2019年秋から

LGBT(とくにT)についての本やネット記事を大量に読むようになり、

2019年年末からは

女性用の服を大量購入。

2020年5月、

長年悩まされてきた持病の原因が、ホルモンバランスの崩壊にあることに気づいて、

『持病の治療のため』女性ホルモンの投与を始める。



そう、意外なことに、女性化するために女性ホルモンを始めたのではなく、もともとの動機は持病の治療のためでした。


つまり、ホルモン投与くらいで身体そのものが女性になっていくなんて、その時点では、想像すらしていなかったのです。持病の苦痛がすこしでも緩和したらいいな、くらいにしか思ってない。そもそも、持病の原因はホルモンバランスの崩壊、という仮説じたい、検証しないことには正しいかどうかわからないですから。(※医師の診断を受けていません。すべて自己責任でのホルモン投与です)



しかし、

予想外の変化はつづく。

2020年8月、

わたしは女性だったのだ、

と強く思い知らされる出来事が起こる。

(※本垢のトップ記事になってます)

そのときはまだ姿は男性、

なので『わたしは女性である以外の何物でもない』ということを自覚させられる体験は、かなりショッキングなものであった。


2020年10月、

女性ホルモンの副作用で、極度の情緒不安定に陥る。同時に人生最大の熱烈恋愛中でもあった。相手からは何の疑問もなくわたしは女性であると思われており、そのことも強く影響した。

かくして、女性としてのわたしは、

もはや〝彼〟に匿われて胸の奥で眠っていることなど不可能になり。自分で自分の人生を生きるしかなくなってしまった。

そうなる直前まで、

よもやわたしが直接この世の生活に関与しなくてはならなくなる日がくるとは思ってもみなかった。

ほんとうは、いつまでも〝彼〟に守られて、胸の奥で眠っていたかった。

最初のうちは、自分がこの世の現実に直面させられていることがあまりにも苦しくて、毎日泣いてばかりいた。

毎日毎日、死にたくなった。

追い打ちをかけるように、過去のトラウマがフラッシュバックして襲ってくるようになった。この世はほんとうに地獄だと思った。



こんなふうにして、

わたしはこの世に生まれた。


わたし自身の自覚としては、

わたしは2020年10月に

この世に生まれたのです。

生みの親は〝彼〟です──────。



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