【読書ログ】目的ドリブンの思考法


書籍情報

タイトル:戦略コンサルタントが大事にしている 目的ドリブンの思考法
著者:望月安迪
ジャンル:ビジネス、問題解決
オススメする読者層:ビジネスマン全般、タスクはこなせているが成果につながらない方
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要約

まず、「目的」から始めよ

成果を創出するためのつながりは<目的-目標-手段>という三層ピラミッドにより成り立ちます。

目的(Why):何のために
目標(What):何を目指して
手段(How):どのように達成するか

これら3つの階層がつながるとき、次のようなストーリーを語ることができるようになります。

「この仕事の『目的』はこうだ。それを果たすためには、期限までにいくつかの『目標』を達成する必要がある。その達成に向けて、具体的な『手段』としてはこう考えている。それらを実行に移すことで目標を達成し、最終的に目的の成就を目指していきたい」

このことは、目的を成し遂げるための筋道、成果創出のストーリーに他なりません。戦略とは「目指す姿を実現するための筋道を描いたもの」であることを思えば、こうした成果創出のストーリーを編み出すことは戦略的思考そのものであるといえます。

【”何のために”やっているのか、それが問題】
VUCAとも言われる不確実なこの時代には、過去の延長線上に望ましい未来は存在しないことも多くなってきました。過去の延長線上に未来を見るのではなく、望む未来を最初に描くこと。その未来像から現在に立ち戻り、その実現に必要な手段を見つけ出すこと。時代はこのような思考の点を我々に要請しています。

未来起点で物事を考えることが必須の時代にあって、目的は「未来像そのもの」です。目指す先が定まっていればこそ、「そこまでどうやって行こうか」「実現には何が必要か」という逆算の創意が働きだします。

【目的とは何か?】
目的がなかなか理解しにくいのは、その内容が抽象的でつかみどころがないことが理由としてあげられます。本書ではさしあたり、直感的な理解のために、目的を次のように捉えます。

「何のために?」という問いに対する答え、それが目的である。

目的に対するより深い理解に挑むべく、目的を英語で表すとき、以下の3つの単語が当てはまります。要諦は以下の通りです。

✔ Purpose:語源は「前に置かれたもの」、より大きな価値を実現している将来の状態、「目的は未来像そのもの」
✔ Objective:「対象、ターゲット」狙いとするものであり、「意図を持って狙いとするところ」
✔ Goal:語源は「限度、リミット」、中継地点や通過点ではなく「到達点」

これら3つの性質を併せ持って「目的」は成り立っています。つまり目的とは、「新たな価値を実現するために目指す未来の到達点」のことであり、これが目的の意味の中心になります。

【目的不在の問題点】
上記の目的の性質を踏まえると、「成果の創出」は「目的の達成」とイコールといえます。言い換えれば「業務の完了」とはノット・イコールとなります。”仕事が終わったか/終わっていないか”ではなく、あくまで、”目的に”寄与したか/寄与していないか”に意識を向けましょう。

このことは、目的が明確でなければ成果の創出が叶わなくなることを示唆します。目的が不明では、仕事がどれだけ目的に貢献したか判断のしようもないし、必要な修正もかけようがなくなります。目的の不在は仕事のあらゆる面に対して致命的な影響を及ぼします。

目的は、「押さえておけばいいことがある」という半端な意識で済ませていいものではありません。「確実に押さえなければ仕事が体をなさなくなる」絶対的な要素です。目的を欠いてしまうと、次のような深刻な悪影響が発生します。

①そもそも対処すべき問題が何か分からない
②何を優先すべきか・劣後すべきか判断できない
③的外れなアクションをとってしまう
④上司にも部下にも動機づけ・説得ができない

このように、目的が疎かだと”問題解決不全”に陥ってしまい、目的を語れなければ、上司も部下も動かなくなるという影響もあります。

【三層ピラミッド構造】
当然ですが、目的それだけでは、仕事の成果は生まれません。目的を達成する実行の手立てが伴わなければ、目的は絵に描いた餅に過ぎなくなります。重要なのは、目的とその達成を受け支える実行の仕組みを理解することです。

出典:目的ドリブンの思考法 ディスカヴァー・トゥエンティワン P51

第1層 Why :成し遂げるべき「目的」を頂点として、
第2層 What:目的を成し遂げるために達成が必要な「目標」が続き、
第3層 How :目標の達成に必要な「手段」が基盤となって受け支える

目的、目標、手段は「どのように?」と「何のために?」で三層がそれぞれ互いにつながっています。これが目的を果たし、仕事で確実に成果を生み出すための要諦です。

つまり、三層ピラミッド構造をつくることで、抽象的だった目的を「実務として”制御可能”かつ”有効な”対処を打てる状態」にすることができます。

5つの基本動作

【成果を出すための基本動作】
「目的」と「現状」の間にあるギャップを埋め、目指す姿の実現を可能にさせるものが「手段」です。どれほどビジョナリーな目的を設定しようとも、そこに対してどれほど的確に目標を定めようとも、実現の「手段」が伴わなければリアルな成果は生まれません。「手段」はピラミッドの全体を支える基盤として位置づけられます。

そのような「手段」を考えだすのに、時代・場所・仕事を問わず変わらない本質的な技法があります。予測・認知・判断・行動・学習という「5つの基本動作」です。

【土台となる認知・判断・行動】
5つの基本動作は大きく「現在」「将来」に分けることができます。現在の問題に対処するための「認知・判断・行動」は、全体の土台となるものです。いくら予測できていても、気づいて行動できないと意味がありません。

認知:目標の達成に向けて解くべき問題を特定すること
目標と現状を比べたときに、どこに・どのようにギャップがあるのか、その中でも優先的に埋めるべきギャップは何かを特定することであり、「イシューの見極め」ともいいます。

判断:対策案を考案し、優先すべき実行策を意思決定する
問題解決をQ&Aとして単純化してみると、「認知」の段階で特定した問題(Q)に対して実行策(A)を決めることをいいます。より具体的には、判断軸を設定して優先すべき実行策(やること)と劣後する選択肢(やらないこと)を決める思考プロセスをいいます。

行動:実行策を行動計画としてチームに落とし込み、実行に移す
いくら鮮やかな問題解決のシナリオを描いたとしても、それをチームに適切に伝え、リアルな動きに落とさなければ、現状は何も変わらず成果は生まれません。だからこそ、優れたリーダーは「行動」の段階で詰めが甘くならないように細心の注意を図ります。

【より効率的に仕事をこなすための予測・学習】
5つの基本動作のうち、将来の問題解決を見据えた「予測」と「学習」です。まだ顕在化していない将来の問題に対処しようとする点で頭の使い方は高度になるが、「予測」と「学習」によってより多くの成果を、より少ない労力で生み出せるようになります。

予測:将来に発生し得る潜在的な問題を先読みし、先手を打つこと
問題解決の最も有効な方法は、当の問題が発生する前にその芽をあらかじめ摘み取っておくことです。小さな労力で潜在的に大きな問題を解消すること、これが「予測」がもたらすインパクトです。

学習:経験によって得られた学びを将来の問題解決に転用すること
問題解決は「予測・認知・判断・行動」によって行われるとすれば、「学習」とは過去の経験をレバレッジさせ、基本動作のパフォーマンスを底上げするための所作ともいえます。学習により個人やチームはその能力を継続的に高め、より成長することが可能になります。

問いの地図

【目的-目標-手段】を定めるための問い
考えることはつねに「問い」から始まる、という言葉があります。紀元前ギリシャの哲人が「世界の根源は何か?」という問いを立て、そこから人類の知性が大きく花開いたように、3千年近く経った今でも「問い」を立てることは考えを前に進めるための原動力であり続けています。

まず、<目的>を定めるための問いです。
✔ 上位目的は何か?
✔ その背景は何か?
✔ 何のためなのか?

目的が立てられたら、<目標>に具体化します。目標が目的に対して一貫してつながっていることが肝心です。
✔ 目的を達成するために何が必要か?
✔ 目的の構成要素は何か?
✔ 達成までの期間はどの程度か?

最後は目標にたどり着くための<手段>を講じます。
✔ 目標をどのように達成するか?
✔ 現状とのギャップを埋めるために何が必要か?
✔ 目的・目標の達成を可能にする要因は何か?

【5つの基本動作を極めるための問い】
上記の手段を戦略的に講じるための5つの基本動作のうち、まずは解くべき問題を見極める<認知>の問いです。
✔ 目標に対して現状はどうなっているか?
✔ どこに、どのようなギャップがあるか?
✔ その問題は実際に解決できるか?

問題を特定したら、その問題に対して何をやるのか、何はやらないのかを以下の問いにて<判断>します。
✔ どのような対策案の選択肢があるか?
✔ 何を判断軸と置くか?
✔ 判断軸の重みは?

認知と判断により問題に対して打つべき策を特定したら、考えられた対策を<行動>に落とし込みます。
✔ 具体的にどのようなアクションが必要か? 
✔ 相手にとって行動につながるか?
✔ 誰が、いつまでにやるのか?

次は将来の問題に対処するための<予測>です。
✔ 何に対するリスクか?
✔ どの手段に対してどのようなリスクがあるか?
✔ リスクのインパクトの大きさと発生可能性は?

5つの基本動作の最後は、経験から得られた学びを昇華してより有効活用するための<学習>のための問いです。
✔ 既存の知識を活かせないか?
✔ アナロジーで考えられないか?
✔ 結局のところ何のためのものなのか?

これらの5つの基本動作を通じて、強固な「手段」が三層ピラミッドの基盤に据えられます。最後に確かめておくべきは、<目的-目標-手段>という成果創出のストーリーのつながりです。

✔ <目的-目標-手段>は一貫して繋がっているか?

成果創出のストーリーを確かなものとするために、すべての締めくくりとしてこの問いを忘れないようにしましょう。 

感想

目的とセットになる背景

要約では触れませんでしたが、<目的>は、その設定となった<背景>も重要である旨本書で主張されています。いきなり目的だけが与えられても、その設定した人が誰か、設定に至るまでの組織や部署、チームでの経緯や背景も、その目的を理解するためには非常に重要です。

同じ目的でも、背景が異なると意味を誤って解釈することがあり得ます。目的を意識していてもいまいち的を外してしまう方は、目的と背景をセットで捉える癖をつけましょう。

うまく扱うには

本書の内容は極めて価値のあるかと思いますが、現実に落とし込むには一工夫必要なようにも思います。典型的には「これは何のために?目的は?」と問うのはやや直接的すぎて、組織文化によっては煙たがられる可能性もあります。

「そんなことを問うていう暇があるなら早くタスクをこなしてくれ」と言われてしまうこともあるかもしれません。誰が正しいかは別として、正しさをぶつけることが日常業務の最適解とはならない場合が往々にしてあります。

まずはしっかりと与えられたタスクをこなし、真正面から目的を問いかけても議論してもらえるような関係性作りを優先する考え方もあるかもしれません。

また、部下や後輩に「目的は?」と試すように問うのもやや負担をかける傾向にあります。それでふるいにかけるのも一つのやり方かもしれませんが、少子高齢化のこの時代、今いる人を大事に育てることもまた同じように重要です。

成長や成果を求めるのためのストレッチのコミュニケーションと、配慮を重視した丁寧なコミュニケーションのバランスを考えてみるのも良いかもしれません。

常に問いを持つ

(自分も含めてですが)多くの人はわかりやすく具体的な方向へ流れてしまいがちです。具体的にどうすれば?成果物には具体的には何と書けば?のように。

抽象的な目的はわかりづらく、「しっかりと意識する」程度では飛んで行ってしまうような存在に感じます。これを忘れないようにするためには、要約でも記載したような問いを常に念頭に置き、他人に問われたら即答できるように、問われずとも自分で問うようにしておくと、目的を忘れないようにすることができます。

本書の内容はあらゆることに転用できる極めて汎用性の高い内容です。要約では概論中心ですが、それぞれの内容が深く掘り下げられていますので、ぜひ読んでほしい一冊です。

最後までお読み下さりありがとうございます!

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