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コジマワーグナー著「コジマの日記」全巻


Cosima Wagner:Die Tagebücher in zwei Bänden(1869-1876,1877-1883)
「コジマの日記」全巻を購入しました。邦訳は東海大学出版から全10巻刊行予定のうち3巻まで既刊。このドイツ語書は邦訳本のような詳しい注釈はついていないものの、日記の全てが収まっており、ワーグナー家族に関する第一級の資料。

特に好きな日記は1870年12月25日。
コジマはワーグナーと長い同棲の末、ルートヴィヒ2世らの立ち会いのもと一八七〇年八月二十五日に結婚式をあげました。

 ワーグナーは、晴れて自分の妻となったコジマの誕生日プレゼントとして、室内管弦楽用の作品を作ります。その曲名は、自分の楽劇のタイトルでもあり、二人の初めての息子の名をとって後に「ジークフリート牧歌」と名づけられました。

 コジマの誕生日の十二月二十五日まで、この作品のことが家族に秘密にされたことは言うまでもありません。初演のメンバーとして集められたのは、チューリッヒ歌劇場のオーケストラのメンバー十六名と、ホルン奏者にしてワーグナーの秘書兼写譜係りであったハンス・リヒター(初演の際にはリヒターはトランペットを担当)。

 コジマの誕生日一二月二十五日の朝のこと。トリープシェンの二階の寝室で、コジマは美しい音楽の音に、目をさまします。階段に陣取った演奏家たち十七名とワーグナーによって行われた「ジークフリート牧歌」の世界初演です。緩やかな楽の音の中には、ドイツの古謡や自作の楽劇のメロディーが織り込まれ、暖かい思いやりと深い愛情に満ちあふれた音楽が、激することなく、あたりの景色そのままに紡いでいったのです。音楽が終わるとワーグナーは、妻コジマに総譜を手渡したと伝えられていますが、その時のコジマの喜びと感激はいかばかりであったでしょうか。

【コジマの日記 1870年12月25日、日曜日】

「子供たちよ、この日のことは、わたしが感じたことも、わたしの気分も、何ひとつ言葉にできません。事実だけを淡々と書き綴ることにしましょう。目を覚ましたわたしの耳に飛び込んできた響き。どんどん膨れ上がってゆくその響きは、もはや夢の中のこととは思えません。鳴っていたのは音楽、それもなんという音楽でしょう。それが鳴りやむと、リヒャルトが5人の子供たちを連れてわたしの部屋へ入ってきて、「誕生祝いの交響楽」のスコアを手渡してくれたのです。わたしは涙にかき暮れ、家じゅうが涙につつまれました。リヒャルトは階段にオーケストラを配置して、わたしたちのトリープシェンを永遠にきよめたのです。曲の名は《トリープシェン牧歌》。

Sonntag 25ten Von diesem Tag,meine Kinder,kann ich euch nichts sagen,nichts von meinen Empfindungen,nichts von meiner Stimmung,nichts,nichts.Dürr und trocken will ich euch nur sagen,was geschah:Wie ich aufwachte,vernahm mein Ohr einen Klang,immer voller schwoll er an,nicht mehr im Traum durfte ich mich wähnen,Musik erschallte,und welche Musik!Als sie verklungen,tratR.mit den fünf Kindern zu mir ein und überreichte mir die Partitur des» Symphonischen Geburtstagsgrußes«-,in Tränen war ich,aber auch das ganze Haus;auf der Treppe »Tribscher Idylle« so heißt das Werk.」

https://www.youtube.com/watch?v=Ry59vzTUL24

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