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細川俊夫ー音楽を語る 静寂と音響、影と光 2016年12月出版


細川俊夫 現代オペラ「松風」2018年2/16日本初演 in新国立劇場
本日、現代作曲家である細川さんのオペラ「松風」が新国立劇場で日本初演されるということで、細川さんの著作を再読してみました。

 細川さんは、オペラ「松風」についてこのように述べられています。

 「姉の松風は、男への深い感情を歌い始め、松の枝にかかった男の形見の衣服の一部を見つけ、それを身につけることで、狂気のうちに舞いを始める。それを諌める妹の村雨。しかし、激しい歌と舞のうちに、松風は、男との一体化(エクスタシー)を体験していく。その状況をそばで見つめる村雨もまた、そのカタルシスの内に巻き込まれ、二人の姉妹は心の妄執を解き、再びあの世に還っていく。

 松風の名前は、「松」と「風」という意味の合成語である。この舞いの場面では、おそらく「松」は男を、「風」は女を象徴し、松に風が強く絡みつくことで、その一体化を暗示しているのだろう。そこには、エロティックな男女の結合のエクスタシーがある。それが「松の風」という自然の響きに昇華されることに、日本独自の世界観があるようだ。

 私は、自分の音楽が、自然の響き、宇宙の響きの一部分でありうるような音楽を生み出したいと願い続けてきた。このオペラでは、ひとりの女性の深い心の奥の情念を、歌と舞いにすることによって、松風という女性の存在そのものが、松に当たる風のような音響になりきること。そうすることで宇宙との、世界との一体化を実現するようなドラマを生み出してみたい。そしてそのドラマのあとに残るのは、浄化された松の風と海から打ち寄せる波の響きばかりであった。

 オペラ「松風」は、人の心の奥に潜む情念の深さを見せるオペラであり、その魂の浄化のオペラである。」(252ー3頁)

オペラ史の中で、今まで聴いたことがない、細川さん独自の響きがして、新鮮です。細川さんの「松風」はcdにもdvdにもなっていないのですが、最近全曲の音源がyoutubeで挙げられていました。主役の「松風」は私の好きな歌手であるバーバラ・ハンニガンさんが歌っておられます♪もし良かったら鑑賞してみてください♪

●オペラ「松風」全曲

https://www.youtube.com/watch?v=rPmCaWV3Qxk&t=2738s
注)2018年2
月16日の過去記事です。

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