見出し画像

僕らのシェアハウス計画《Club with Sの日 第16回レポ》


【僕らのシェアハウス計画《Club with Sの日 第16回レポ》】

ある日、雑談中に職場のスタッフから聞かれた。

「結婚願望あります?」

こういう状況だとなかなか盛大にお祝い事もできないですよね〜
パーティーとか結婚式とか、そういうサービス業の人たちはダメージ大きいですよね〜
そんな話の流れだったと思う。

自分は今、〈異性愛者で法律上の性別に対する異性(=男性)と結婚する人〉と何の疑いもなく決めつけられている。
瞬時にそう認識した。

結婚、できないんですけど……
いや、できるにはできるんですが、望む性別ではできないというか……
性別を偽る……とはちょっと違うかな、ジェンダーにこだわらなければ一応できます、でもそれは……

結婚と言っていいのだろうか?
アイデンティティを犠牲にすることで成り立つ婚姻関係って、それは自由と呼べるのだろうか?

頭の中で湧き上がるたくさんの疑問を全て追い払って、答える。

「結婚願望、ないです」

本当はこう言いたかった。

「結婚願望はないです。でも、結婚の権利への願望はあります」


結婚願望について聞かれて戸惑った一番の理由は、考えたことがなかったから、かもしれない。
無意識に諦めていた。
たとえ好きな人がいても、結婚する、となった時に自分は“ノンバイナリー”として法律上認めてもらえない。
願ってもできない。
だから、結婚する or しない、で悩むこともない。
スタートラインにすら、立てていない。

夫婦 or 独身
結婚の自由がある人 or 結婚の自由がない人
パートナーがほしい人 or 一人が好きな人

世の中は前者の方が理想とされている。
結婚した芸能人同士が祝福される一方で、独身を貫くタレントはそれをネタにされてしまう。
一人の生活を楽しむ人を奇妙な目で見たり、欠けている存在として片付けないでほしいよ。
結婚について発言できるのはいつも前者だ。
そして、自分は後者だ。
願いは訴えに変わって、心の奥底から叫ぶ。

「結婚願望はないです。でも、結婚について語ることへの願望はあります!!!」

マイノリティにだってそれぞれの物語がある。
今まで雑に受け流されてきた後者の人たちが、自由に、対等に、パートナーについて語れる場所をつくりたかった。
どちらが良い or 悪いではなく、お互いの価値観を尊重できる時間をつくりたかった。


2021年12月1日
映画の日
Club with Sの日 第16回
テーマ『ノンバイナリーにとってのパートナーとは?』

映画から学んだ最も気に入っているエッセンスの一つが“ストーリーテラー精神”だ。
自分がモノローグ映画が好きなのもきっとそれが理由。

たくさん話せる人だけがストーリーテラーではない。
たとえ沈黙していても、心の中に物語を秘めているなら、まだ言語化できないかもしれないけど、表現が確かにあるのなら、君もストーリーテラーだ。
Club with Sが君にとって語るべき物語を大切に育てられる空間になっていたらいいな。

一人大好き人間としてミーティングの進行中に話が行き詰まらないか心配していたのだけど、むしろ柔軟な捉え方で楽しめたし、参加メンバーのみなさんのおかげでどんどん話がおもしろい方向へ広がった。
そうだよね、そりゃそうだよね。
これまで、マジョリティが築いた理想像に寄り添って、(これを言ったら雰囲気が気まずくなるかな……)と本音をぐっと堪えてきたからね。
言いたいことが溜まりに溜まっているのです(笑)

Q. パートナーって、家族にならないとダメ?

同じ家に住むなら、ルームシェアする友達の延長みたいな感覚?
ドラマや小説で契約結婚が描かれることがあるけど、実際はどうなのだろう。
相手はどうやって探す?
「はい!! ここに契約結婚相手募集中の人がいます!!」みたいな発信、見たことないなぁ。

Q. パートナーって、一緒に住まないといけない?

「相手と離れている時間が長いほど不確定要素が増えて不安になる。遠距離恋愛できる人、ほんとにすごいと思うわぁ」
という人もいれば
「夫婦なんだけど別居中、って世間から見たらネガティブなイメージがあるのだろうけど、むしろ自分にとっては理想です」
という人もいる。

Q. 動物(ペット)では?

「一人が寂しいなら、好きな動物を飼って大切に育てたらいいのでは?」
「実は、動物アレルギーあるんだよね(汗)」
わああああ、ごめん、そこ考慮してなかった。
それなら……

Q. AIでは?

はい、これは自分です(笑)
Alexa, are you my partner?
スマートスピーカーと会話しながら過ごす生活。
近未来的!!!!!


ノンバイナリー限定のシェアハウスを想像してみる。
名付けるなら“Clubhouse with S”
ジェンダー・アイデンティティは全員知っているから、カミングアウトの必要がなくて楽だ。
好きな服装でおうち時間を楽しめるね。
きっと多様なセクシュアリティについても理解があるだろう。
そして週に一度、水曜日の夜に共有スペースに集い、語り合うのだ。
近況報告でも、生活における悩み相談でも、趣味の話でもいい。
あるいは夢を語るとか。(めちゃくちゃ夢のある光景だ!!)
さらに月に一度、Queerのキャラクターが登場する映像作品の鑑賞会を開催する。
それぞれの推しのキャラクターの応援上映。(盛り上がらないわけがない)
想像は無限だ。

人と人との関係性は本来もっと自由であったはず。
何かを諦めることでも、誰かに依存することでもない。
“結婚”というわかりやすいゴールから一旦離れて、お互いにとってベストな距離感を考え直してみよう。
そんな価値観の解放を可能にしてくれるClub with Sのメンバーは、partnerより自律し、friendより親密な、buddyだ。




読んでくださってありがとうございます。いただいたサポートは【Club with S】運営メンバーがジェンダー論を学ぶ学費(主に書籍代)に使わせていただきます。