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#38 クルマに乗っていて生地胴について考えた話

剣道具も好きですが、クルマも好きです。
中古の大衆車を乗り継ぐ程度ですが、子どもの頃からひとりでディーラーに行き、カタログをたくさんもらってきたりしてました。
クルマの変遷を見ていると、剣道具に似てるなあと思うことがたびたびあるんです。
今回は、そんなこじつけたような緩い話題に触れてみました。

◼️どこからどこまでが本物なのか

剣道具に限ったことではありませんが、今の時代において「本物」を定義することは難しいなあと常々思いながら、剣道具店を巡ったり、道具好きの仲間と情報交換をしています。

「物」は常に進化し、変わり続けていきます。良くも悪くもです。
剣道具で言えば、素材、製法が昔ながらのものかどうか?
国内の職人が作っていなければ本物とは呼べないのか?
鉄の面金こそが本物でジュラルミンなら偽物??

…なんとも言えません。

私は生地胴に限らず、剣道具全般にそこそこ興味があって、本物を使いたい!という願望だけは常に持っています。

でも、現時点においてはそれもなかなか叶いません。
そもそも、前述のように本物の定義すらわからなくなっている時代でもあります。

そうなってくると「本物志向に近いもの」がほしいという言い方になるのでしょうか。

胴で言えば…胸のこともありますが、わかりやすい着眼点のひとつに「樹脂(またはファイバー)なのか竹なのか」がありそうです。

胴台屋さんが減っていること。
軽くて使いやすく、変形などに悩むこともないからということで、売る側も樹脂を勧めているケースが少なくないこと。
このスパイラルが螺旋状に降下し、どんどん竹胴が減っていること。

軽くて柔らかくて使いやすいということこそが正義になりつつある剣道具。
ある宴席で剣道具談議がされているのを聴いていたら
「昔の名人作とか手刺とか、使いにくいだけだしね。最近は素材とか形がどんどん研究されて、慣らし不要で使えるものが増えてるし、そっちのほうが遥かにいいと思う」
「そうかーなるほどねー」
なんて会話がされていました。

確かに道具としての進化があり、コストも下がっているということには、色々なメリットがあるのかもしれません。

しかし、耐久性はどうでしょうか。
工芸品としての美しさはどうでしょうか。
30年、40年も経った頃…
今、2020年代に作られた剣道具はどれだけ残っているのでしょうか?

◼️代車に乗って娘がボソッと呟いた

愛車の点検の間、しばらく軽自動車に乗っていたことがありました。これが家族からは大好評でした。

普段乗っているのは某ドイツ車です。ドアが重く、動きは固め。適宜メンテが必要。
ちなみにベースグレードなので余計な装備がついておらずエアコンもマニュアルだったりします。

一方、日本の最高傑作と言えるファミリーユースの軽自動車。
あらゆる操作が軽く、室内は広く、快適装備が盛りだくさん。軽自動車でもオートエアコンなんて当たり前で、オートスライドドアもついていて更に便利。
「コストもかからないし、こっちのほうが遥かに良い」
というのは私の家族の言い分です。
「こういうクルマの方が便利だよねー」
私以外の家族が口を揃えました。
そもそも愛車の方はと言えば、私の嗜好で以前から乗ってみたかったクルマでした。
なんだかバツが悪いな…なんて思っていたら、娘がボソッと一言。
「広くていいけど、ずっと乗ってると疲れる」

え。なんで?

「揺れるし、椅子(シート)があまり良くない。なんだか色々と重みがない」

申し上げておきますが、軽自動車ってホントに良くできています。私自身も運転していて「普段乗る分にはこっちのほうがいいかも」と何度も思ったほどです。
だから軽自動車という選択はアリだと思います。これもモノの進化の先にある、ユーザーの声を反映させたツールの答えです。

それでも実用性に優れた軽自動車ではなく、維持コストのかかる方のクルマを選ぶというのは、特にウチの妻のような視点からすれば、単なる嗜好品、ともすれば贅沢品でしかないのかもしれません。

◼️生地胴が語り継いでくれるもの

さて、これが一体生地胴となんの関係があるのでしょうか?
生地胴はどこまでも「革張りの竹胴」です。
余計な飾り(装備)が一切ないし、さらにそれを削ぎ落としたとしても、本物の風合いは残り続けます。この先、数十年経っても生地胴は生地胴であり続けるはずです。

とは言っても生地胴も元々は稽古用に考えられた御道具。気軽に楽しんでもらいたいものです。その考えはこの先も変わることはありません。
その上で最近は、もしかすると生地胴は、現在の剣道具のあり方における「伝統の継承」において本物を語り継ぐために一石を投じるモノになるのかもしれない…そんな大げさなことを考え始めました。

この関連の話題はおいおい書いていくつもりですが、生地胴が広まることが今あまり理解されていない「本物の剣道具」に触れることにつながっていくとすれば…もっと生地胴が普及してほしいと思います。

とりあえず、今日はこの辺で。

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