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スタイリストになってみた


コロナ禍の中、母は美容院に行く機会を逃してきた。とは言え、予約を取って行く気にもならないようで…。
と言うことで、私がにわかスタイリストになって髪の毛を切ってみた。

切り終わった母の顔から満面の笑み、普段あまり口にすることのない。
「ありがとう。ありがとう」
と何度も言う。いくつになってもおしゃれをしていたよね。とつくづく感じた。
「5000円浮いたわ。よかったわ。」
としっかりした口調で言う認知が始まっているようには微塵も感じなかった。
認知が始まってるといってもとても軽く、まぁ時系列がちょっと怪しくなっている位。月曜日と木曜日のゴミの日はきちんと覚えている。しかし2週間に1回、間の日を忘れてしまう。そういった具合なので、日常生活にはさほど困る事は無い。

しかししかし、今日はお昼ご飯にずっと冷蔵庫に入ったままの白菜をなんとか料理しなければ、と思って母に
「一回この白菜とちくわで白菜のタイタン作ろうか。お母さん作って〜。」
とリクエストした。煮炊き料理が得意な母にはお茶の子さいさい。同時に、ほうれん草も先週から冷蔵庫に入っているので、おひたしにしてそのまま今日食べるか、はたまた冷凍して小分けにして食べてもらおうか、なんて悩んでいるうちにレンジがチンとなる。
すかさず母は、その音に反応して、レンジの前に行きほうれん草を取り出した。私はあまり気にもせず、お昼ご飯の用意を食器の用意をしていた。トントントン、と包丁がまな板を鳴らし、よくある炊事場の風景はぼんやりと見ていると、まさか!ほうれん草がない。どうしてと鍋の中を覗き込むと白菜の横にほうれん草が入っていた。
「お母さん、ほうれん草入ってるやん!おひたしでごまあえにするんやなかったっけ?ほうれん草一緒に炊いたら苦くなるやん」と思わず口から出た私。
せっかく白菜の甘い煮物が苦くなっちゃうよーと叫びたい気持ちを抑えつつもちょっと叫んでいた。
慌てて鍋からほうれん草を取り出して、横のタッパに移している。母はほうれん草を小松菜と勘違いしていたようで、一緒に炊いたらいいなと思っていたようだ。もうすでにそのほうれん草は蒸した状態だったので、炊くとぐにゃぐにゃになるし…。

半年ほど前の母はまだまだスーパーお母ちゃんで手際良く、てきぱきと家事をこなしていた。もちろんたまに鍋を焦がしてしまうようなアクシデントに見舞われる事はあるが、炊いてるものを勘違いする事はなかったと思う。まぁこの程度の軽い取り違い、勘違い、思い違い、思い込み、これも認知機能の低下なんだろうか。

そこで疑問が湧いてきた認知症ってなんだろう自分に例えると最近ものを覚えても思い出せなくなっている。ちょっと焦る私がいる。
こういう、ちょっとした認知機能の低下が積み重なって認知症になるんだろうか?認知症ってなに?

すっかり忘れていると思っていた、父親のスラックスのゴムを入れ替える作業はちゃんとこなしていた。
先週私がお金を預かっていたことも、しっかり覚えていた。それで今日買ってきた買い物の代金は足りるのかと言う問いかけを私にした。母はほんとに認知症なんだろうか、ますますわからなくなった。笑

最近はなんかちょっと認知症がどうでもよくなってきた。と言うよりも、母が元気で暮らしてくれたらそれでいいと思えるように折り合いがついてきた感じ。

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