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ぼくの作った、にじいろキリン。|白梅幼稚園(小平市)の日常 #2

年長組では、みんなでお祭り(おみせやさん)を開くことになりました。Mちゃんは、お祭りで売るために、キリンをはじめてつくってみました。丈夫なキリン、乗れるキリンにしたいと牛乳パックを重ねました。ボンドやセロハンテープを使って、しっかり留めていきました。

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丈夫に仕上がったキリンは、背中に乗って座っても壊れません。クラスでも大人気となりました。毎日、キリンに話しかけたり、一緒に遊んだりしているうちに愛着もわいてきて、Mちゃんは売りたくなくなってしまいました。

「このキリン、かわいいから持って帰りたくなっちゃった。売りたくなくなってきちゃったよ。どうしよう……」。

どうしたら売らずにすむか、Mちゃんは思いつきました。

「そうだ、1億円にしたらみんな買わないかもしれない。誰も買わなかったら、ぼくがもらえるよね。それなら、このキリンは1億円にする!」。

Mちゃんは値段を示し「これはすごいキリンなんだよ」と自慢のキリンを友だちに見せています。キリン制作に自信がついたMちゃんは、新たに大きなキリンもつくりました。

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お祭り当日。
キリンは、開店と同時に完売しました。「1億円なのに売れたよ~」。

手放すのは寂しいけれど、売れると嬉しさがこみ上げます。売りきれてしまったので、買えなかった年中組の子から注文が入りました。頼まれると、キリンのつくり方を教えに行くこともありました。

キリン人気が一段落したころ、Mちゃんは「自分のキリンをつくるよ。もう得意だから!」と、自分のためにキリンをつくり始めました。Mちゃんの姿に仲間も気づいて手伝いに来てくれます。

自分の大事なキリンには「にじいろキリン」と名付けました。

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首の根元にペットボトルのキャップを2個つけました。そのキャップに、輪にしたモールをかけると首が立ち上がり、モールを外すと首が下がります。

そう、にじいろキリンは長い首を動かせるのです。口も開けられます。口を開くと、水色のなが~い舌をだします。背中には、もちろん人が座れます。あちこち動くキリンは誰にも魅力的でした。

「キリンをつくりたい人は来てくださーい」。
Mちゃん自ら呼びかけ、仲間とのキリンづくりは続きます。お友達は自らガイドになって、クラスに訪問者があると、にじいろキリンの特徴を説明しています。

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自分のためにつくっていた「にじいろキリン」は、いつの間にか、みんなのものになっていました。

【書き手】本橋幸子・白梅幼稚園主任。保育者になって30数年過ぎても、子どもたちとの出会いはいつでも新鮮です。幼稚園のシンボルツリーのメタセコイアのようにたくましく、こころもからだも大きくなっていけるように幼児期の大切な根っこになる時期を、一緒に楽しく過ごしていきたいです。

9月白梅