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ただの発表し合いから双方の話し合いへ

授業の中で子ども同士が交流する時間というのは、今となっては当たり前のように見られます。私も当たり前のように「話し合ってみて」「隣の人と交流しましょう」と指示していましたが、これがなかなか上手くいかないのです。

どういうことが起こるかというと、一方が書いたことを読み上げ、それが終わったらもう一方がまた書いたことを読み上げる。そして、話し合いが終わったと認識し、沈黙の時間が流れるか、おしゃべりによる脱線に陥る。これは過去に私の学級で起こったことですが、意外と話し合いあるあるではないかと思います。

そもそも、これは話し合いではなく、両者が書いたことを読み上げて発表するという「発表し合い」に過ぎません。本来、話し合いとは双方のやりとりがあってこそ成立するもので、だからこそ学びを深めていけます。

友達の意見を聞いて考えが広がっているなんて安易に納得してはいけないのです。違う意見を聞いたところで、「へぇそうなんだ」くらいにしか思っていないし、それを自らの考えの一つになんてできないはずです。言わずもがな、それを自らの考えに取り入れて、よりよく考えを深めているなんてことはありません。

では、どうするか。双方のやりとりが生まれるように手だてを打つ必要があります。私が大事にしていることは、話し合いのゴールを決めること、手順を明示すること、質問の練習を日常的にすることの3つです。

話し合いのゴールを決める

まず、「話し合ってみて」「隣の人と交流しましょう」という指示は、あまりにも曖昧で子どもたちには届きません。とりあえず書いたことを読み上げればいいと考えるのは至極当然です。私の学級では、「ペアで意見を出し合って、どんなことが大切だと言えるか一文でまとめましょう」や「ペアで調べたことを発表し合って、どちらにも共通することを見つけましょう」といったように、ゴールを示すようにしたことで、子どもたちの話し合いの質が高まりました。

これによって、「発表し合い」の先に進むことができます。つまり、共有の先をデザインしておくことが大切です。発表し合うことがゴールではないと示すことから話し合いへの道は始まると考えています。

タブレット端末を活用するのであれば、全員の意見を見られるようにしておくだけで、発表し合うステップを飛ばして、共有の先から話し合いを始めることもできます。「意見を見比べて、共通することは何だろう」や「意見を比べて、一番説得力のある意見はどれだろう」などと切り出せます。話し合う価値はここにあるはずです。

手順を明示する

話し合いのゴールを決めることと同時にやっておきたいことが、話し合う手順の明示化です。学級会を行っている学級では、この話し合う手順がよく明示されています。よく見かけるのは「出し合う→比べ合う→まとめる」といったものです。

しかし、それが学級会だけのフォーマットになっており、他の学習に転用できていない場合が多い気がします。私の学級でも学級会だけのフォーマットになってしまっていました。それではもったいないくらいよくできているフォーマットだと思っています。

どんな教科であっても話し合いの手順は同じです。意見を出し合い(端末活用でカット可)、比べ合って検討し、まとめる。これが子どもたちの中で当たり前になれば、発表し合いで終わることはありません。教師もこのフォーマットをもとにして、指示を組み立てれば曖昧な指示になることを防ぐことができます。

質問の練習

最後は質問の練習です。私たち大人も質問が得意な人は少なく、そもそも質問しないこともよくあります。つまり、質問は練習しないとできるようにはならないし、しようとすら思えないのです。

まず子どもたちには、質問のフレーズを掲載したカードを配ります。タブレット端末で見られるようにしていた年もあります。これがあるだけで子どもたちの質問意識は高まります。

しつもんワード(低学年で使用)
質問の技(高学年で使用)

質問の技については、以下を参考にさせてもらっています。

私が子どもたちによく言っているのは、話し合いで大事なのは、聞き手であるということです。聞き手のレベルが高いと話し合いの質は自然と高まっていきます。学級の中で、質問が当たり前に飛び交う状態を目指し、ペアトークやグループトーク等の活動を日常的に取り入れることをおすすめします。

これまでたくさん失敗もしてきましたし、いまだに上手く話し合いの場をつくれないこともよくあります。大人の話し合いだって不十分なことがよくあるのですから、子どもたちにとっても難しいはずです。場の設定と指導すべきことは指導するを粘り強く繰り返していく他ないと考えています。発表し合うだけでは満足しない教師の覚悟が試されている気がします。


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