退職読書日記 #9 森茉莉に憧れる
森鴎外記念館で森茉莉展をやっていたので、いそいそ出掛けたのは9月中盤のことでした。
団子坂、これすなわちD坂といえば冷やしコーヒー、ですので、
記念館の中のカフェでキンキンに冷えたコーヒーで涼をとりつつ猛暑に疲れた内臓にさらに追い打ちをかけ、いざ、お茉莉の展示に突入です。
展示はコンパクトながら、楽しさにヒィヒィいいながら堪能しました。
白眉は、茉莉さんが弟に向けて「新居に遊びに来てヨ」と書いたお手紙。
原稿用紙に書かれているのですが、マス目も行もガン無視したフリースタイルで佃煮のように細かい文字がびっしり。
自分の好きなことを一方的にガンガン長文LINEするおしゃべりの人みたいでかわいい。
そして、その原稿用紙には茉莉さまが描いたお部屋の絵も!
(これが噂の汚部屋???)
棚とか小物が細かく描かれていて、絵の中央には茉莉さまご自身も描かれておりました。
自分の熱量を自分の好きなように放出する偏屈お嬢様おばちゃん、茉莉さま。
私がかねてから将来の夢にしている、偏屈不良高齢者の姿がここに…!!
好きなものは好き、ほかは知らん
しかし自分のなかで決めた品のないことはしない。
これを機に茉莉さまの本も。
「貧乏サヴァラン」
本気で気取った一人称もいいし
句読点も美。
一生、素敵なごっこ遊びを続けて、夢見がちで偏屈で頑固な
元上流階級の老婦人、それが茉莉さま。
「貧乏サヴァラン」に収録されている「絶望と怒りの夏」は一番好き。
タイトルはマッドマックスみたいだけど、
これは茉莉さまの読むVLOGです。
から始まる茉莉さまの一日。
なんと茉莉さまのWhat's in my bag?まで教えてくれる~。
vogueよりはやい~
実際ね、茉莉さま読むと、歳取るのなんて怖くなくなるわよ。
でも、自分の「好き」に覚悟もたないと、って背筋も伸びるわよ。
余談ですが、茉莉さまの生きざまを見せつけられるにつけ、育児というものも考える。
自己肯定感天井知らずの茉莉さまは、相当変わり者だったろうし、万人に好かれたわけではないだろうし
一部の文学女子に熱狂的なファンがいるとしても、文学界に太文字で名前を残したわけでもない(たぶん武田百合子とファン層かぶってる)
没落貴族のおばあちゃんが孤独死、という捉え方してる人もいるんじゃないかな。
だけんども。茉莉さまは自分の存在と感性に引け目感じたり委縮してる雰囲気なんてゼロ。自己肯定感が堂々と歩いてる感じ。
これは「お茉莉は上等、お茉莉は上等」と鴎外がもはや呪文のように唱え続けたからなんでしょうねぇ。
甘やかしたのだろうね、わがままに育ったのだろうね
でも自分は上等なのだと信じて生きられるって、なんて強いんだろうと思う(それが独りよがりな犯罪に繋がるなんてことは、品よく生きていればないわけで)
私も自分のこどもを、あなたは上等だと、そう伝えていきたいなと思った。
ためしに娘を膝にのせて「こっちゃん(仮名)は上等、こっちゃんは上等」と言ってみたら(鴎外のマネ)、
なにそれ?って言われましたので
猿真似じゃなくて本質的なことでやらんとってことですわね。
うちの娘は上等です。
そんで、私も上等。
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