見出し画像

退職読書日記 ♯8 「あのこは貴族」

第三次山内マリコブームが到来である。
ガーリーなのに忖度なしのトゲトゲ。
テンポよいユーモアのある読みやすい文体だけど、痒いところに手が届く表現には巧さと教養が滲んでいる。

好きな作家さんはたくさんいますが、
お友達になって一緒にお茶をしたい作家さんランキングでは堂々の第一位です!マリコさん!

たまにブームがやってきては読み返したり、読みこぼしていた作品を読んだりします。

「アズミハルコは行方不明」「ここは退屈迎えに来て」はタイトルがキャッチーでなんか洒落てるし、いつも表紙はかわいいし。
すきー。

今月になって「選んだ孤独はよい孤独」と「あのこは貴族」を読みました。

「あの子は貴族」について。
主人公の一人、華子は東京で生まれ育った筋金入りの箱入り娘。
こういう世界ってあるんだ・・・と思う、まさに貴族。
ご実家は松濤で、正月は三世代集って帝国ホテルでお食事したり、彼氏も甥っこもKO幼稚舎からBOY、移動はタクシー、大衆居酒屋なんてムリムリムリムリ!という正真正銘のお嬢様なんである。

この華子お嬢様が結婚に向けてなんとか奮闘する。

もう一人の主人公は華子と同世代のきれいなお姉さん、美紀。
美紀は洗練されて仕事もこなす都会の女なんだけど、
地方から猛勉強してKOに進学するも財政難で中退。その後も自分の体と知力でのし上がってきた、たたき上げ女子。

この正反対の二人が、一人の男性がきっかけで知り合って、、、?
という話の流れなんですが。

おそらく括るのであれば、フェミニズム小説。
かるーいシスターフッドでもある。

華子と美紀の絡みは、ある点をめぐって対立するようであり、
しかし結局は同質の概念「女って結局?」に立ち向かうところで戦友でもある。

 女性は外見をどう作り込んでいるかで、いろんなことがわかる。
趣味嗜好も、パーソナリティも、おおよその金銭事情も、願望も、そのすべてが外見から発信される。
                           
テレビでお笑い芸人が、若い女優さんさんを褒めそやして、三十歳を過ぎた女芸人を笑い者にしてると、本気で胸が痛む。全然笑えなくて、チャンネルを変える。でも、そういう番組が、メッセージを発しているんだよ。おばちゃんのことは笑ってもいいって。未婚の女性のことは、結婚できないダメな女なんだから、笑い者にしてもいいっていう乱暴なメッセージを発しているの。

「あの子は貴族」集英社文庫 P177、P226


上流階級と貧困層
東京と地方
男と女
自立してる人と世間知らず
既婚と未婚
子持ちと子無し
洗練と生活感

いろんな線引きの仕方があって、分断!と騒がれると
「あ、そうなのかも、分断されているかも」と気付く。

この小説にも、いろんな「住んでる世界が違う人たち」が描かれているけれど、
すこし古いかも、と思えたことがうれしい。

この小説の初出は2016年。7年前。
それから格差とか分断、とか、フェミニズムとかルッキズムとか容姿ネタ封印とか。

じわじわとそういう感じになって、今じゃ↑の引用のようなテレビは叩かれるもん。

声が上がってきて、指摘されてきた過渡期の小説ということで、
今読むと「今さら?」となるのが、ここ数年で変わってことを示しているんじゃないかしらん。

数年の流れ、の証拠のような小説で、7年前にこれを書いてくれたマリコさんが、やっぱり好きだ。

あーあ、私もそろそろ退職だ。
今月で退職で、今はフライングでパート求職活動中。
面接も何個か受けている。

ワーママからパート主婦かなー
正規雇用から非正規雇用かなー
変化はめんどうだなー

でも分断の壁を行ったり来たりすると見えてくるものあるかなー
そしたら楽しみだなー。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?