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推しの両A面を味わう幸せ

両A面シングルって、いつから普通になったんだろ。

めっちゃいい曲できたからリリースしよ!けどこっちの曲も最高やねんな、どっちから行こか。いろいろ大人の事情もあるから同じタイミングで出しちゃいたいけど、Bとか裏とかにしたらちょっと目立たなくなるもんな。この子は前に出てって欲しい子やねん。華のある子やねん。Bにしといたら勿体ない。いやもう両方Aでええんちゃう?ええやん。両方A。両A面や。AとかBとかいらんねん。裏とか表とかないねん。陰と陽とかどうでもええねん。双子や。マナカナみたいにどっちの子も同時に推したいねん。そや。両A面でいこ!!


ね。

ね。って。



8月30日、自宅でKingGnuのStreamingLiveを観た。
19時開場、画面にはクリエイティブ集団PERIMETRONによる歴代MVが流れ、20時の開演へ向け視聴者の高まる気持ちをさらに揺さぶる。

私はといえば、前日からこのライブに照準を合わせ、この日の昼間の子供の相手を夫に頼んでおき、早めに買い物を済ませ、早めに夕飯の支度をし(何故かこんな日に限って子供のリクエストはハンバーグ。なんで引き受けた?普段より工程数多いものなんで引き受けた?けど大丈夫。待ちに待った推しのライブを控えた今の私は無敵。20時から私を自由にしてくれるならそのためにはハンバーグの一つや二つ、などとひとりごと言いながら涼しい顔で任務遂行)、子供たちの風呂も歯磨きも食後の洗い物まで一気に済ませ、なんとかギリギリ19時50分。フゥ!間に合った!おっと。興奮が隠しきれない。

まだあの憎きウイルスが私たちの世界に完全にのさばる前、今年の年始に発売されたKingGnuの3rdアルバム『CEREMONY』は、Billboard JAPAN HOT Albums上半期首位を獲得した。
件のウイルスのせいでこれをひっさげての全国ツアーも全公演中止となり、もちろん春フェスも夏フェスも軒並み中止、『CEREMONY』に収録された名曲の数々がファンの前で演奏される機会は次々と先送りになってしまった。

そんななかでの配信ライブの決定。沸いた。ファンは沸き立った。生で観られるはずだった人も、チケットが取れなくて涙を呑んだ人も、最近ファンになったばかりの人も、みんな。
だって、なんてったって配信ライブにはチケット売り切れがない。観たい人が全員観られる。家に小さい子がいたって、介助が必要な家族がいたって、ギリギリまで仕事があったって。数千円のチケット代と約2時間程度の時間の確保さえできれば、誰だって参戦できる。ビバ配信ライブ!

もちろんね、本当なら生がいい。生でズシンズシン響くリズムを腹の底に沈ませて、ギュインギュイン鳴るメロディーに髪を振り乱したい。でもそれが叶わないなら。叶わなくったって、私たちはそれぞれの場所で、同じものを観て、声を上げて拳を振って体を揺らせる。彼らが鳴らしてくれるなら、鳴らしてくれる限りは、私たちはいつだってどこでだって踊れるんだよ

ガチファンになって半年と、歴がまだ浅い私にとって初めてのグッズ、黒の『CEREMONY』Tシャツと水色のタオルを身に纏い、抹茶アイスを食べながら画面を見つめる開演5分前。ハア。ドキドキする。観る前なのに心の中でもう言ってる。ありがとうKingGnu。この日を待っていた

「言うなれば全曲シングル。それくらいカロリーの高い曲ばかり」

これはアルバム『CEREMONY』に関してメンバーがインタビューで言っていたこと。「白日」の大ヒットに始まった彼らの快進撃。2019年はタイアップの連続、その超多忙な日々を駆け抜けて辿り着いたのがこの『CEREMONY』だ。

インスト3曲を抜いた9曲中7曲がタイアップ。残り2曲のうち1曲は家入レオさんに提供した楽曲のセルフカバー。本当にどの曲も華があって、どこに置いたって前に出てきてしまうタイプの子たちばかり。作品のことを「子」とか言っちゃってるのは取り急ぎ大目に見てほしい。それくらい入れ込んじゃってるから。
つまりはね、「両A面シングル」どころの騒ぎではないのだよ。「ほぼ全曲A面シングルやで」。突然出てくる私の中の関西弁の菅田将暉も大目に見てほしい。ああ。ほぼ全曲A面シングル。
ノンタイアップの残り1曲は、アルバム制作当時の、リーダー常田大希の切実な想いが聴く者の胸を打つ書き下ろしのバラード。この曲の背景を聞いたファンで、膝から崩れ落ちない人はいない。
華のある圧。気持ちのいい疲労感。ああ。カロリー過多と書いて幸福と読もうじゃないか。

8月30日の配信ライブは、そんなわけで『CEREMONY』リリース後初のライブとなった。約1時間のライブのセットリストは、メンバーが口々に「このセトリきつい」と言うように、激しくてエモい曲が多く「KingGnu全部載せ」の様相を呈していた。またしてもカロリーが半端じゃない。彼らの魅力が1時間にギュッと詰まっていて、観る方はお腹いっぱい胸いっぱい夢いっぱいおっぱい(唐突にMIUの菅田久住)(ごめんなさい)だったほんとにもう。
そしてすごいのは1時間のライブ配信、これで終わりじゃなかったところ。別チケットにはなってしまうけど、このライブ映像を見ながらメンバーがトークをするコメンタリーの配信も同日にあったのだ。

コメンタリーが有料であることをしきりに気にしていたメンバーだったけれど、どうか安心してほしい。コメンタリーを買う人たちはあなたたちにお金を落としたいんです。お金を払う代わりに推したちのお喋りお戯れが享受できるのならば、こんなに嬉しい生存確認はない。そう思ってる人が買うんだから。推しってそういうものだから

ライブでは彼らが鳴らす音に痺れて酔いしれて踊って、サイコーにかっこいい演奏する姿を見ては毎秒雷に打たれたみたいに背中に電気が走って、耳からも目からもなんかやばいやつ注入されてんちゃうか、っていうほど気持ちよくなって、ああ最高かっこいい最高、最高最高って連呼する。

一転コメンタリーでは、くだらない下ネタからライブ中の裏話まで、ステージ上の彼らとはまたちょっと違った、ゆる~い空気とわちゃわちゃした空気が入り乱れる。彼らの普段の会話をとなりで聞いてるような気持ちになれる、オタクにとって至福の時間。
ファンはずぅっと、だらしなく目尻の下がったデレ顔で画面の前にいたに違いない。少なくとも私は、顔面が溶けてパーツが流れ落ちてんじゃないかっていうくらい、終始デレェ、デレェっとした顔してた。はず。

話は変わるけど学生時代にクラスの男子たちがバカみたいに騒いでる様子が好きだった人はいますか。その輪の中に入ることなんかできないし入りたいわけじゃないけど、わちゃわちゃ騒いでいるのを遠目で見ているのが好き。その中に気になる男子がいるならなお良し。ていうかそうじゃなかったら見ねぇわ。そのわちゃわちゃ尊くならねぇわ。そういう人はいますか。

あのね、運動部のマネージャーっているじゃないですか。究極の話、あれですよ。あれが一番最高なやつじゃないですか。憧れる。
グラウンドでの毎日の練習。汗が流れる真剣な顔。これがA面。教室で休み時間に何だかよくわからない話題で盛り上がってたり、帰り道にコンビニで買い食いしてわちゃわちゃ騒いでる。これがB面。いやBて。Aだわ。全然それもAだわ。スポーツマンの顔だって、気を抜いた瞬間の笑顔だって。どっちも捨てがたいじゃないこれこそまさに両A面じゃない。そしてそれを一番近くで見守れるのは!家族でも!ましてや彼女でもない!どう考えたって!その特権はそう、マネージャーにあるわけ!!ゼエハア!!


いやマネージャーの真剣な気持ちをなんやと思てんねん。
そんなもん少女漫画だけにしとけよ。

ごめんなさい。そうですよね。

私は自分自身のケツを拭くのでいっぱいいっぱいな人間なので、10代で人のサポートに徹するマネージャーなんて器のでかいもん、できるわけもなく。よく今子供の世話ができてるよ、っていう。無理やりだよねそんなの。できてなくても無理やり自分を奮い立たせて世話してるわけじゃない。我が子という自分の「最推し」のために
まあとにかく。推しの両A面を見守る、それが沼の人間にとって最高レベルの推し活なわけですよ。ギャップが見たい。どっちも知りたい。どっちも大事!だって両方A面だから!!

8月30日の配信ライブは、間違いなく両A面だった。両A面配信映像だった。
ひとつで二度おいしい。畑で二毛作。ああ無駄がない。推しに関することはどこを切り取ったってオタクの琴線に触れるわけですから、この際何毛作でもしましょう。私は声を大にして言いたい。いいんです。推すって、応援するって、そういうことですから。


#エッセイ #コラム #KingGnu #配信ライブ #ライブレポ #音楽 #推し #コンテンツ会議

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子供の就寝後にリビングで書くことの多い私ですが、本当はカフェなんかに籠って美味しいコーヒーを飲みながら執筆したいのです。いただいたサポートは、そんなときのカフェ代にさせていただきます。粛々と書く…!