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King Gnuが巻き起こす「この風」に乗って、私は私を生きていく【KingGnu Dome Tour『THE GREATEST UNKNOWN』】

 2023年11月に発売された新アルバム『THE GREATEST UNKNOWN』を引っ提げたKing Gnuの5大ドームツアーが、3月23日に札幌で千秋楽を迎えた。私は2024年1月28日の東京ドーム公演に現地参戦し、千秋楽の札幌公演を配信視聴した。
 前回ライブから約半年、今回はなんといっても新アルバムのツアーだから、これまでとはちょっと違う特別感があった。私が彼らのファンになったのは2020年2月で、当時彼らは3rdアルバム『CEREMONY』をリリースしたばかりだったけど、アリーナツアーはコロナで開催中止。それからおよそ4年近くアルバムリリースはなく、今回が私にとってファンになって初めての、待ちに待ったアルバムリリースツアーだったのだ。

プレステのデカジャケ。デカすぎ

 これまで参戦したライブはほとんど一人だったから、いつも心ゆくまでKingGnuの世界に浸ることができた。でも今回は家族のリクエストに応えて初めてファミリーシートのチケットを取り家族4人で参戦したので、いつもとちょっと勝手が違っていた。開場前のグッズ列に並ぶ時間、開場までの時間の潰し方、入場した後の過ごし方、どれを取っても自分以外を優先して考えなければいけない中で、その場の空気を感じたりこれから始まるライブに想いを馳せたりするのは難しかった。だから開始前は「ライブ中もこの調子なら、ライブに集中できないんじゃないか」と少し不安に思っていたのだけれど、実際のところはまったくの杞憂だった。始まってしまえば一気にKingGnuの世界に連れて行かれて、家族のことなんてまったく気にならないくらい(すまん母を許せ)、歌って踊って頭振って声出して涙ぐんで、たっぷりKingGnuに浸っていた(ライブ中に3回トイレに行きたいと言った娘に対応してくれた夫に感謝)。ただ、ライブが終わればやっぱり優先事項は家族になるから慌ただしくて、反芻したり感想を整理したりできないまま時間が過ぎていった。
 だから千秋楽の配信ライブはありがたかった。自宅で何度も、それこそ心ゆくまで何度も繰り返しライブを堪能することができる。生のライブは何ものにも代えがたい体験だけど、どこが良かったかこと細かに書き出したり、ファンの人たちとSNSで感想を共有したりするのもまた一興なのである。
 アーカイブ配信の最終日、22時半を過ぎてようやく画面の前に座り、日付が変わるまで好きなところをピックアップし繰り返し視聴した。0時ぴったりでアーカイブ終了の画面に切り替わると、私は我に返って涙と鼻水をティッシュで拭った。
 幸せだった。こんなに好きになれる、こんなに心を震わせてくれる存在に出会えるなんて、そうそうあることじゃない。改めてKingGnuに出会えたことに感謝した。
 


 今回は新アルバムのツアーだから、一曲目はアルバムと同じ『MIRROR』~『CHAMELEON』から始まると思っていた。そういう、しっとりしたのも大人でいいよねなんて、インタビューで言っていた気がするから。でもKingGnuはそんなに生易しくはなかった。初っ端、巨大スクリーンにギロリと瞬く2つの目玉が映し出され始まったオープニング映像は、「大人の雰囲気で始まるんだろうな~」などとのんびり構えていた私に、King Gnuがそもそもアンダーグラウンドからやってきた尖り散らし集団だということを思い出させた。オープニングからいきなりのトップギア、『SPECIALZ』~『一途』~『千両役者』~『STARDOM』というアッパーチューン4連打でライブは幕を開けた。待ち焦がれたファンを挑発するような、強気で不敵な歌声と演奏。一気に攻め立てる4人に、観客は腕を突き上げ叫び声で応える。「無茶苦茶にしてくれないか?」「眩暈がするほどU R MY SPECIAL」と、歌詞がまるでファンへ向けた言葉に思えて、私は開始早々胸がいっぱいになった。

 今回のセットリストで個人的に一番印象に残っているのは、その後の『MIRROR』~『CHAMELEON』~『DARE??』~『Vivid Red』の一連だ。アルバム冒頭の流れを踏襲しながら、ファンの間で伝説になっていた未発表曲『Vivid Red』と『DARE??』をマッシュアップした新しい曲に繋ぐ。これが本当にすごかった。
『CHAMELEON』はもともと好きな曲ではあったけれど、ライブで聴くと曲の持つ詩情が増幅されるのか、より胸に来るものがある。井口さんは以前なにかのインタビューで「歌に感情は込めない」と言っていた。悲しい曲なら悲しく聴こえるように歌えばいいだけであって、歌う自分自身が悲しくなる必要はないと。感情を込めずともあの歌い方ができるなんて、聴く側をこんなにエモーショナルな気持ちにさせるなんて、やっぱり表現力がバケモノ級だ。常田さんの曲作りもきっと同じで、人の心を揺さぶる音を熟知しているからこそ、高度な技術や身体に染みついた直感のようなもので、そういう曲が作れてしまうのだろう。
『CHAMELEON』最後の「君は誰?」をツインボーカルで交互にリフレインさせ、そのまま『DARE??』へ。うねるようなリズムの中に2人の声が混ざる。このリフレインから『DARE??』×『Vivid Red』への導入が憎い。言ってしまえば単純に気持ちいいのだけど、少し自分なりに解像度を上げてみる。2人の声で「君は誰?」を何度も繰り返すことで、「君」の存在そのものやそれを口にする「僕」自身の境界が曖昧になっていく感じがする。2人の声がゆらゆらと色を変えるようにボイスチェンジされているのも一役買っているように思う。そして『Vivid Red』の最初の歌詞が「一つ一つがあなたになる」なのがまたすごい。「君」と「僕」を混ぜ合わせ曖昧にしたあとに、きゅっと「あなた」に焦点を絞ってくる。いつのまにか『Vivid Red』の世界に引き込まれている。以前ライブで披露していた『破裂』からの『PrayerX』や、今回の『2 Μ Ο Я Ο』から『Vinyl』への繋ぎなど、KingGnuのライブでの曲と曲の繋ぎ方には本当にいつも興奮させられる。
 以前の『Vivid Red』では、常田さんはピアノを弾きながらラップをしていて(それもものすごく好きだった)、サビの歌唱は井口さんだけだったと記憶している(すごく曖昧な記憶ではあるけれど)。それが今回常田さんは楽器なしのハンドマイク(かなりレアでは?)、サビは2人のハモリと掛け合い。もう、本当に最高だった。特にラストのサビは、ツインボーカルの良いところがギュギュッと濃縮されていて、メロディにもハーモニーにも、歌声にも出で立ちにも、すべてに色気が特盛出血大サービス状態。完璧すぎてクラクラした。KingGnuの高音低音ツインボーカルの気持ち良さはこれまでにも散々書いてきたのでここでは泣く泣く割愛するけれど、この『DARE??』×『Vivid Red』ではその魅力が最大限発揮されていて、というよりもさらに進化を遂げていて、2人の声の化学反応にたっぷりと酔いしれた。
 ライブ後に多くのファンがこの新しい『Vivid Red』の歌詞を書き起こしていたので、ありがたくそれを参照させてもらいながらアーカイブを聴くと、曲だけでなく歌詞にも衝撃を受けた。(歌詞については『Vivid Red』含め、また別の機会にまとめる予定なので、よければそのときにぜひ読んでほしい)歌詞を読みながら聴いて、目を閉じてイメージして、常田さんの精神世界の深遠さを覗き見る。そこで私は改めて彼の作家性に完全ノックアウトされてしまったのだけど(何回目?)、そうやって常田さんの紡ぐ言葉を受け止めて考えるたびに、私は毎回困ってしまう。常田大希、さすがにずるくない? って。こんなに胸を打つ言葉を紡ぎ出せる人間性に惚れ惚れさせておきながら、その尊い言葉を発する彼自身の声とビジュアルまで、あまりにかっこよすぎるんだもの。音楽だけ、言葉だけでもこれだけ心臓を掴まれているのに、それを言っているあなたの声がそんなにかっこいいの、楽器をプレイする姿がそんなにかっこいいの、そもそもあなた自身がそんなにかっこいいの、さすがに反則ですって……と頭を抱えてしまうのだ(だから常田狂はやめられない)。耳も目も脳も心臓も休ませてくれないのが常田大希。全身フル稼働で常田大希に夢中。一曲で感覚すべてをハックされてしまうから、私はいつも身も心も常田さんに無条件降伏なのだ。

 声でKingGnuの世界観を担っているのは井口さんも同様で(というか比率で言えば井口さんの方が多くを占めるだろう)、それを如実に感じた最近の楽曲は『硝子窓』『IKAROS』『三文小説』あたりだ。井口さんの歌声は最近どんどん磨きがかかっているように思う。『IKAROS』では脳を融かすような声で耳を満たしてくるし、『三文小説』では壮大な物語を語る器、懐の広さを感じる。『硝子窓』では裏声や吐息混じりの声を巧みに使い、繊細で変幻自在なボーカルを聴かせる。切なくて、もどかしくて、でも芯があって優しくて。常田さんの書く詞と胸を掴むような楽器隊の演奏との相乗効果で、聴く者の涙腺を容赦なく刺激してくる。
『硝子窓』は所謂バラードに分類してもいいような曲でありながら、自然と身体が動いてしまうところが良い。勢喜さんのドラムと新井さんのベースに常田さんのピアノが寄り添い、その上を井口さんの美しい歌声が流れていく。以前のインタビューでリズム隊の2人が『白日』について、「あれはバラードじゃない、ファンクだ」と言っていて音楽素人の私は驚いたものだが、それは『硝子窓』にも通ずるような気がする。身体はノッているのに心はぎゅっと切なくなるというこの絶妙なバランスが、KingGnuのバラードなんだと思う(本人たちは『硝子窓』をバラードとは言わないかもしれないけれど)。

『硝子窓』で満たした繊細な空気そのままに『泡』へ。『泡』は断然、ライブで聴くのが好きだ。私はアンビエントという音楽ジャンルを、常田さんに出会って初めて知った。演奏と歌声が一体となって空間を埋め尽くし、その中に自分が浮遊するような感覚。ゆらゆらと揺蕩う水面を彷彿とさせる照明がさらに没入感を与えてくれる。シンセベースの重低音に痺れながら、常田さんのボコーダーの声と井口さんの透き通った声が混ざり合うボーカルを聴いて、全身が空間に融け出していく。あの場所でしか得られない音楽体験。彼らが作り出した空間に自分が混ざっていく感覚がめちゃくちゃ気持ちいいから、『泡』は絶対にライブで聴きたい一曲なのだ。
『泡』でこれだけ放心させておいて、一転洒落たなイントロでガラリと空気を変えてきたのは続く『2 Μ Ο Я Ο』。『泡』の深遠な精神世界から急に「君の枕に飛び込んで」……「ぜんぶ放り出しちゃいなよ」……ってそんな急に……待って心が追い付かない。なんて言いながらも、聴いているうちにすぐ「特別なことは何ひとついらないよ」って、常田さんの半径5mの日常に連れて行かれて、コロッとリズムに踊らされて身体ゆすって楽しんじゃうんだから、私ってば本当に現金。はい……どちらの常田さんも大好きです……。
 『2 Μ Ο Я Ο』のアウトロのノリに「あれ?」と感じたのも束の間、そこからシームレスに始まった耳馴染みのあるイントロは『Vinyl』だ。思いもよらぬ粋な曲の繋ぎ方をされると、興奮で肌が粟立つ。こういうちょっとしたライブならではの楽しみがあるから、KingGnuのライブは癖になるのだ。ここで初期からの定番曲『Vinyl』が来るというのも嬉しかった。冒頭の爆速系4曲でも常田さんのギターは冴えわたっていたけれど、数曲ピアノ曲を挟んでからの『Vinyl』のギターソロはまた格別だった。縦横無尽な新井さんのベースと重なり合って、めちゃくちゃかっこいい音を聴かせてくれた。

 常田さんのギターの音色は攻撃性が高い。ここぞというときにソロで暴れまわるから、観客の熱狂はさらに勢いを増す。それでいて『白日』や『逆夢』などでの胸を掻きむしるような切なげなギターソロもある。喋るとたどたどしい常田さんだけど、鳴らす音は本当に饒舌だ。
 ギター含めすべてのパフォーマンスにおいて、そんな常田さんの攻撃性が顕著だったのは『W●RKAHOLIC』~(東京公演のみ『W●RK』feat.椎名林檎~)『):阿修羅:(』の一連、魔改造を繰り返した『Slumberland』あたりだろう。威嚇するような荒々しい演奏と歌声、それに表情。かっこいいという言葉じゃ全然足りない、かっこよすぎて笑っちゃうくらいかっこいい。かっこよすぎて涙まで出てきたからもはや意味不明。「かっこいい」がインフレしてて文字書きとしては嫌になっちゃうけど、でも他に言いようがないから仕方がない。そういうとき、言葉って本当に無力だなと思う。

 KingGnuのライブで私がいつも楽しみにしていることのひとつが、『Flash!!!』で我を忘れて飛び跳ねることだ。勢喜さんのドラムソロが始まった瞬間に興奮度が跳ね上がり、井口さんの「飛べ!」を合図に身体と心を投げ出す。トレードマークになりつつあるドレッドヘアーを振り乱しながらベースを弾く新井さんと、ファンを歓喜させる常田さんのギター、突き刺すレーザーの光に眩暈がして、高揚感は青天井だ。『Flash!!!』は毎回楽しすぎて跳びすぎて、筋肉痛になったこともあるし靴擦れしたこともあるけれど、むしろ望むところ、身体に刻み付けられるのがなんなら嬉しいくらい。今回のライブで、『):阿修羅:(』もそれと同じ、テンションぶち上げチューンであることが確定した。4人の演奏にかき回され、会場の熱が渦を巻いていたような気がする。楽しすぎて目が回った。4人の最高にかっこいい演奏で踊りまくる気持ちよさはライブ会場でしか得られない。周囲も一切気にならない。この2曲は特に、ただただKingGnuの音楽で高揚する時間を楽しめるから、これからもライブで聴き続けたい曲なのである。

『Sorrows』では井口さんの、晴れた空にどこまでも続いていきそうな伸びやかな歌声に聴き惚れて(「悲しみ」の曲であるはずなのに不思議)、『BOY』ではちびヌーの映像とステージ上の4人がカットバックでスクリーンに映し出される演出に自然と笑顔になった。そして、朗らかな曲でもギターソロで睨みをきかせ荒々しさをぶち込んでくる常田さんは本当に油断ならない、と思ったことも付記しておく。
 讃美歌を思わせる『SUNNY SIDE UP』は、挙げた両手を揺らしながら合唱した。まるで人生を肯定し照らしてくれるような歌と照明の光で、会場全体から多幸感が溢れていた気がした。そして私は、続く『雨燦々』の合唱パートで観客にマイクを向ける井口さんを見て、ふと「主役はおまえらだろ」と言われているような気がした。KingGnuの4人がしきりに私たちに「歌え!」と煽るのは、観客との一体感を味わいたいというのはもちろんあると思うけど、もしかしたらそれ以上に「あなたがいて初めてこの歌が、この場所が成り立っているんだよ」と、伝えたいのかもしれないなと思った。『Flash!!!』の頃から「主役はおまえだろ」と歌い、『SPECIALZ』で「U R MY SPECIAL」と歌い、アルバム発売の際にキービジュアルの5つの星について「一番上にはあなた」と言った常田さん。MCで「(こうして5大ドームツアーを完走できるほどバンドがデカくなると)信じてくれていたのはみんなだけだったよ」と言った井口さん。彼らはいつも心からファンを想い、いつもファンをまんなかにしてくれている。合唱しながらしみじみそう思えて、とても嬉しかった。

 アンコールの『Teenager Forever』では井口さんが「歌おう」と呼びかけ、アカペラで合唱するファンの歌声に合わせるように常田さんがギターで伴奏をつけてくれて、そのたびに「みんなの方が信じてくれてたから」という井口さんの言葉がよみがえった。私たちが大好きなKingGnuが、私たちを主役にしてくれる。こんな幸福があっていいのだろうか。そして、歌う観客を見てとても嬉しそうに笑う4人を見るのもまた、至福だった。
 ラストの『飛行艇』は、普段ならライブの一曲目になることが多いKingGnuのテーマソング的楽曲だ。今回のライブでは常田さんの提案でセットリストのラストを飾ることになり、メンバー全員その終わり方を気に入っているとラジオで新井さんが明かしていた。このフィナーレが本当に圧巻だった。常田さんの「全員歌えるか? 歌え!」の掛け声で曲が始まり、真っ赤な照明のなかで4人は、持てるものをすべてそこに置いていくように、魂の演奏をぶつけていた。常田さんのギターソロも、いつも以上に鬼気迫るパフォーマンスだった。どこにも収まりきらない猛々しい情熱が暴れて、繊細な器を壊してしまうんじゃないかと見てるこちらが心配になるほど。歌詞の随所に出てくる「この時代」「この風」というワードが、それを聴き、歌う私の「今」このときととリンクする。私はKingGnuと同じ「この時代」に生きていて、今「この風」、KingGnuが巻き起こした「この風」に乗っているよ。大地に響くようなヌーの群れの歌声と4人の演奏で、命、揺らしているよ。そう思ったらもう泣きべそをかいていた。終盤、「あなたの期待に飛び乗って」「今夜この羽で飛びたくて」で巨大スクリーンが4分割され、4人がひとりずつ映し出されたところで無事涙腺崩壊。また「信じていてくれたのはみんなだけだった」の言葉が脳裏に浮かぶ。周囲の期待、ファンの期待。それは裏返ってプレッシャーでもあったはずだ。でもあえてその「期待」に飛び乗る。「この羽」で飛んで、期待に応えてみせる。『飛行艇』を書いた頃の常田さんの胸の内を勝手に想像して、涙が止まらなかった。だめだろ。泣かせすぎだろKingGnu……。

 演奏が終った後、この日MCでほとんど喋らなかった常田さんが放った「ありがとう」の一言は、この先もずっとファンの間で語り継がれるに違いない。やりきった充実感のあるお顔と、穏やかで優しい声。「ありがとう」はきっと、「歌ってくれてありがとう」で、「いつも応援してくれてありがとう」で、「ここまでついてきてくれてありがとう」の「ありがとう」だったんじゃないだろうか。
  2ndアルバム『Sympa』の発売時、たしかKingGnuがメジャーデビューするタイミングで、常田さんはSNSに「新しい曲を作るたびに、この一曲で自分の人生を変えようと、メンバーの人生を変えようと、聴いた誰かの人生を変えようと、毎曲毎曲作ってきました」と書いていた。中途半端なことはしたくない。自分たちの納得のいくものを。その上で大衆を巻き込んでいく。そういう目標に、覚悟を持って挑んでいたのだろう。ひとつひとつの曲が出来上がるまでに、きっと私には想像もつかないような努力と試行錯誤を重ねてきたに違いない。

 日本での活動はおそらくこれで一区切り。初のアジアツアーを前に、4人の才能と情熱、信頼し合っている関係性、そのすべてが結実したライブを目撃できて幸せだった。アジアに留まらず世界を視野に入れたKingGnuの活動が、この先どうなっていくのかはわからない。でも今回のライブを終えて、彼らがファンをまんなかに考えてくれていることは痛いほど伝わってきたし、きっとこれからもそれは変わらないんじゃないかと思う。4人が全力でそう思わせてくれたから、私は今、存外さびしくないのだ。大丈夫。KingGnuが「主役はおまえだろ」って力強く背中を叩いてくれるから、落ち込んでも、苦しくても、私は私をしっかり生きていける気がするよ。帰ってくるまで、日本でおりこうにして待ってるね。きっとまた、絶対、こっちでかっこいい姿を見せてよね。

燃え尽きたあと

セットリスト
1 SPECIALZ
2 一途
3 千両役者
4 STARDOM
5 MIRROR
6 CHAMELEON
7 DARE??
8 Vivid Red
9 白日
10 硝子窓
11 泡
12 2 Μ Ο Я Ο
13 Vinyl
14 W●RKAHOLIC
(W●RK 東京公演のみ)
15 ):阿修羅:(
16 δ
17 逆夢
18 IKAROS
19 Slumberland
20 Sorrows
21 Flash!!!
22 BOY
23 SUNNY SIDE UP
24 雨燦々
25 仝
26 三文小説
27 ЯOЯЯIM
―アンコール―
1 It’s a small world(札幌公演のみ)
2 Prayer X(札幌公演のみ)
3 Teenager Forever
4 飛行艇

#KingGnu #音楽 #ライブレポート #エッセイ

子供の就寝後にリビングで書くことの多い私ですが、本当はカフェなんかに籠って美味しいコーヒーを飲みながら執筆したいのです。いただいたサポートは、そんなときのカフェ代にさせていただきます。粛々と書く…!