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あなたの知らない<乾燥状態の肌>のミクロな世界~原因から考える対策ケア~

こんにちは!COCO.libraryスタッフの小笠です。
普段、化粧品の安全性/有効性の評価試験や肌の変化について実験し、皆さんの美肌に役立つ情報をまとめています。

今回はそんな私が、あまり知られていないけど是非知っていてほしいと思っている”肌の乾燥”について記事にまとめましたので、是非読んでいただけたら幸いです!


◆オフィスで"イライラ”することありませんか?

突然ですが、普段「集中して仕事してたのに水をさされた!」と感じるのはどんなタイミングでしょうか?

突然上司に呼び出された時、PCの動きが遅かったりフリーズした時、メールやチャットツールの通知がたくさん来た時…
人によって様々かと思いますが、オフィスでの「乾燥」もその1つではないでしょうか?

  • 乾燥でメイクが崩れてメイク直しをしなければならず、イラっとする

  • 乾燥して肌がつっぱり、酷くなるとかゆみや痛みも出てきて気が散る、集中できない

小さなことかもしれませんが、蓄積すると結構嫌なストレスになりますよね。

本記事では、そんな乾燥によるストレスなく、気分良く集中して仕事ができるよう、オフィスで感じる乾燥感の原因を肌のミクロな視点で解説し、対策を紹介します!

◆乾燥を感じた時、肌の上<ミクロな世界>で起こっていること

まず、乾燥状態の肌の上で起こっていることをお話する前に、少し肌表面の構造について説明します。

【肌表面の構造と役割】

肌表面には”肌理(キメ)”という凹凸が存在しています。
美しく健康的な肌は、形の揃った凸部分の”皮丘”と、皮丘を取り囲む凹部分の”皮溝”が細かく均一に並んでいます。

図1 キメの構造

肌理(キメ)の役割は、

  • 皮溝が汗や皮脂を適度に保持し、うるおいを保つ

  • 皮丘部分が肌の強度を保ち、皮溝部分が伸びしろとして働き、肌の伸縮を可能にする

  • 細かい凹凸によって拡散反射が生じ、肌を美しく見せる

など、いろいろあると言われています。

では話を戻して、乾燥状態の肌の上では何が起こっているかを説明していきます。

【急激な乾燥によって、角層細胞が収縮する!?】

資生堂社の研究において、急激な乾燥環境下では角層細胞が収縮するということが報告されています。

図2 角層の収縮
引用:株式会社資生堂 ニュースリリース¹⁾ p.2の図2より転載

角層細胞は過度に肌を伸ばしたりしない限り細胞レベルでは変形しないことが以前より確認されていました。しかし同社の研究において、ヒトの皮膚から採取した角層細胞を顕微鏡(蛍光タイムラプス顕微鏡及び走査型電子顕微鏡)で観察したところ、角層細胞は水分低下刺激によって10%程度縮んだと報告されています²⁾。

上記で肌理(キメ)の皮溝部分には「肌の伸縮ための伸びしろ」という役割があるとお話しましたが、乾燥によって角層細胞が収縮すると、伸びしろである皮溝が細胞の収縮分だけ引っ張られ、

  • 皮溝が浅くなる

  • 皮溝が広がる

  • 皮溝がなくなる

そして、肌理(キメ)が乱れます。

図3 水分低下による角層表面の変化
引用:株式会社資生堂 ニュースリリース¹⁾ p.3の図3より転載

肌理(キメ)が乱れ、肌を伸縮させるための伸びしろが機能しなくなることが、肌のつっぱり感や違和感、 酷い時には肌が割けて痛みや出血に繋がっていると考えられます。

◆オフィスでできる乾燥対策ケアとは?

上記でお話したように、乾燥が気になるときには角層細胞の収縮により肌理(キメ)の乱れている可能性があります。そのような状態に対してどんな対策が出来るでしょうか?

乾燥で収縮してしまった角層細胞に水分を与えつつ、再度乾燥させないような保湿ケアをすることが大切です。

1.ミスト化粧水

メイクの上からも手軽に吹きかけて使用することが可能です。 顔全体など広範囲の保湿を得意としています。様々な特徴を持った商品がありますが、リフレッシュやメイク直し目的ではなく、保湿成分が高配合されていて長時間水分維持されるものや、オイル成分が配合され、水分と油分を補給できるものを選びましょう。

2.スティック状美容液

メイクの上から、直接肌に塗って使用できるものがあります。 目元や口元などピンポイントでの保湿を得意としています。固形の油溶性分が肌を覆って水分の蒸散を抑制したり、水分を抱えた成分などが配合されて水分と油分を同時に補給できるものを選びましょう。

◆保湿ケア前後の肌理(キメ)を観察!

実際に保湿ケアをした前後で、肌理(キメ)の状態がどのように変化するのか観察しました。
乾燥状態の肌理(キメ)の状態、保湿ケアをした場合の肌理(キメ)の状態を、肌を拡大して撮影することができる機器マイクロスコープを用いて撮影、撮影した画像の皮丘密度(密度が高いほどキメ細かく整っている状態)を解析しました。

図4 キメの観察結果
※保湿ケア前後で同部位を撮影・解析

保湿ケア前後の画像を比べると、ケア前よりもケア後のほうが皮溝をはっきり確認することができます。また、皮丘密度も保湿ケア後の方が高くなっており、肌理(キメ)の乱れが改善されたことがわかります。

◆その他、工夫できること

乾燥を感じた時の保湿ケアも大切ですが、空調の風に直接当たらないようにするなど、乾燥しない工夫をすることも重要です。

また、朝のスキンケアもとても大切です。朝の行動を振り返り、洗顔をしすぎていないか、保湿ケアはしっかりとしているか、そのケアは自分の肌状態に合っているのか、など確認してみてください。もし、日中の乾燥感が続くようであれば、使用しているケア商品の見直しをおすすめします。

しっかり対策をして、乾燥による「イライラ」を解消!

何気ない肌の違和感も、肌の上の世界では様々な変化が起こっています。
どのようなことが起こっているかを知ったうえで、対策・ケアを選択していくことが肌トラブル改善の近道になると私は考えています。

是非、日中に肌の乾燥感を感じた際は、肌の上でどんなことが起こっているかを思い出し、保湿ケアを見直してみてください!

参考文献
1) 資生堂、乾燥によるキメの大きな乱れが 皮膚の角層細胞の縮みによるものであることを発見, 株式会社資生堂, ニュースリリース
2) キメの解剖学と、美しいキメを維持する角層縮み抑制剤の開発, 青木宏文他, フレグランスジャーナル, 42(2), 18-24, (2014)