見出し画像

無水染色の技術について

繊維の染色業

水をたくさん使う、廃液がたくさん出る、それをキレイにして循環させるろ過装置が必要。結果、電気もたくさん使う。いかにもコストがかかり環境負荷も大きい故に、日本の染色業は廃業に追い込まれつつある業種ということができます。残っている染色工場は逆にいうと超優秀な工場です。

一方、発展途上国の染色業は廃液を綺麗にして地球に戻しているところもあるが、往々にしてそのままの廃液を垂れ流す。これの方が安くできるから、発注している先企業も煩く言わなかったり。

もちろん日本の大手SPAなどしっかりしたところは工場に出向いてエシカルであることをしっかり要求して、そこにかかるコストも払っています。

つまり染色工場は水をたくさん使う。これが問題なのですね。

超臨界二酸化炭素を媒体にした無水染色

そこで超臨界二酸化炭素(scCO2:supercritical  CO2)の登場。水を使わずに二酸化炭素で染色するという新技術が一部実用化されています。二酸化炭素に超高圧(7.4MPa※以上:メガパスカルと読む)をかけると気体と液体の中間の不思議な物体と化し、染料を繊維の中に入れ込んで染めてくれるというやつ。現状は、ポリエステル繊維に有効で次いでナイロン。天然繊維を深く染めるところまでの技術は確立していません。ただ、ちょっと詳しく説明すると、分散反応染料という新しい染料を使って超臨界二酸化炭素で染める研究がされている段階。

 ※:0.1MPa=約1気圧(正確には0.987)。なので7.4MPaは73気圧ほど

参考文献

具体的な超臨界染色のメリット

・廃液が出ない
・助剤が不要
・染色時間が短い
・染まらなかった染料は粉末で回収できる
・乾燥工程が不要

研究では世界をリードする日本、でも工場は海外

例によって学術、研究室レベルでは世界に冠たる研究成果が示されていますが、国内に工場を新設する機運なし。中国資本でアセアンに工場が作られるケースが多い。台湾やインドも積極的。

実は超臨界染色色加工機も日本は進んでいます。日本の工場が新規設備投資しない。

https://www.hisaka.co.jp/textile/other/product08.html

地球にやさしい技術:超臨界二酸化炭素による染色、研究も量産機械も進んでいるのに日本でこの工場ができないのは残念ですが、生地がそもそも海外で作られるのはほとんどなので、致し方ないところです。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?