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【日記】解放区

こんばんは。本当は以下の記事の続き(後編)を書くつもりでしたが、気持ちが新鮮なうちに今日のことを残しておきたくて、これを書いています。

▽いつかきっと後編が書かれるとされている記事


友人Kちゃんと、KちゃんのパートナーHくんと、夫と私の4人で、スーパー銭湯に行ってきました。お祝いしたいことが重なって、みんなの時間も合ったので、じゃあガッツリとリラックスしに行こう!となり、夫が車を出してくれました。

◾️お祝い① 誕生日でした

笹塚は数日前に、歳を取りました(言い方)。夜景の見えるレストランやらフレンチのフルコースやらよりは、気心の知れた仲間とまったり過ごしたかったので、スーパー銭湯が嬉しくて仕方なかったです。

脱衣所にて年甲斐もなくワタワタしながら(私のワタワタを、Kちゃんは嬉しそうに観察する)するりと脱衣し、Kちゃんとまずは女湯へ。

両手足を広げても余裕すぎる大きい湯船に、露天風呂に、ジェット風呂に、寝転がって浸かれるお湯に、サウナまでありました。

あいにくの曇り空でしたが、雲の流れる夜空の下、一糸纏わぬ我々は、露天風呂にゆったりとっぷりと浸かりました。この瞬間に、確かに私は心からの解放を味わったのです。

ああ、ここでは、例えば脚の太さや乳房の大きさなどを、誰かから好き勝手評されたり誹られたりしないんだ。

ふと見回すと、実にさまざまな年代の女性たちが、それぞれの自由を謳歌していました。決して干渉しすぎない。気が向いたらおしゃべりするし、ぼーっとしたければそうする。それでいて、同じ湯を味わっているという、不思議な連帯感がありました。

私が、「大白小蟹の『うみべのストーブ』のなかに、こんなくだりがあった気がする」とつぶやくと、Kちゃんが「それは、『雪を抱く』だね」と教えてくれました。Kちゃんの記憶力には、うなるばかりです。

▽みんな読むといいよ

◾️お祝い② おかえり

本人の許可を得ているのでこちらも書きます。実は今回のスーパー銭湯は、Kちゃんの退院祝いでもありました。

いろいろあって、本当にいろいろあって、全く希望せずに精神科への入院をしていたKちゃん。

入院は私も経験したので(もう十何年も前だけど……)痛いほどわかるんですが、とにかく髪の毛一本から爪先まで、徹頭徹尾抑圧的に管理される生活を強いられると、人の自尊心というのは脆くなる、ということは、もう論を待たないでしょう。

何をするにも許可が必要で、許可を得るためには(立場上権限の強い)医療従事者たちのご機嫌をとることが求められて、それでもなお、患者というだけで蔑まされて時として笑われて、それでも生き延びた、そんな私たちです。

なので、Kちゃんははじめこそ戸惑ったり怯えたりした表情で、私のあとをついてくるような挙動だったのですが。露天風呂がはからずも貸し切り状態になったとき、私が「よきかな」とボソッと言ったのがなぜかツボったらしく、Kちゃんは声を出して笑いました。それから、Kちゃんはしみじみとした表情で言いました。

「あー、ほんと最高。15分以内に着衣まで済ませないと看護師に怒られるとか、リハビリとかいって風呂掃除させられたりとか、そんなのがないなんて」

私はうんうん、と頷きました。

「私のいた病院は制限時間20分だったけど、週に三回しか入れなかったなー」
「夏でも?」
「夏でも」
「うわマジか」

それから、改めて広々とした露天風呂を眺めて、他のお客さんが来るまでのしばしの間、私とKちゃんは心のままにぼーっとする時間を堪能しました。

◾️癒されつつ感じた生命の危機

Hくん&夫と合流後、4人で岩盤浴に向かいました。薄暗い洞窟のような空間に、タオルをひいて寝転がります。会話禁止なので、私はこの時間、ひたすら自分の身体と対話していました。

よくぞまぁ、今までがんばってきたよ。そりゃあ、ひどい肩こりにもなるってもんだ。もっとも、これでこそ、癒し甲斐がある、みたいな。さぁ、どんどん癒されなさい我が身体よ。

それになんだか、こんな狭い空間にこんなに人がいるのに、みんな黙って岩盤に身を委ねてるのって、ちょっと面白い気がする。ひょっとしてこれ短歌にならないかな……

などと空想しているうちに、全身からぶわっと汗が噴出してきました。うおお、ちょっとこれすごくない!?

ハッと気がつくと、おしゃべり禁止のためにKちゃんが、懸命に手招きしていました。私はすぐに起きあがろうとしたのですが、一瞬だけくらっときたので、ああこのままではデトックスされながら岩盤に殺られる……! と、這々の体で、どうにか洞窟から脱出しました。

岩盤浴は利用方法を守って、正しく癒されましょう。(水分補給が大事!)

夕飯は銭湯内の食事処で、まぐろの漬け丼をいただきました。和やかな雰囲気も相まって、なによりのご馳走でした。

◾️ドキッ!サプライズプレゼント

帰り道、Kちゃんと私のお祝いということで、Hくんと夫からサプライズプレゼントがありました。なんと、スーパー銭湯の入場回数券でした。

Kちゃんが目を輝かせて、

「嬉しい! 心琴ちゃん、今度はこれで女子会だね!」

と言いました。Hくんと夫が、ちょっと寂しそうな表情だったのが印象的でした。


繰り返し立ち現れるいろんな障壁に、しょげたり凹んだり、時に息苦しくなることがあっても、こういう時間があるから、がんばれるんだなーと、みんなとの時間が沁みた土曜日でした。

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