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【進路】大学院に行って人生を棒にふる方法

 以下の内容は、基本的に10 steps to PhD failureの自分なりの意訳です。自分が大学院に行っていてものすごーく共感したので、衝動的に紹介します。

 子供のころ地元の学校では勉強ができて、変に「頭がいいやつ」というアイデンティティが身に付き、そのイメージを保つために無理して大学院に行った挙句、人生を棒にふる人が後を絶ちません。以下はそうならないようにするための、反面教師的なガイドラインです。身に沁みます……。

大学院に行って人生を棒にふる10のステップ

人生は楽しいことばかりではないですよね……え、そんなことはない?もっと自分の人生をチャレンジングにしたい?そんな人には、大学院進学がおすすめです。特に以下の10のステップを踏んでいけば、予想を超えた人生の奈落に身を落とせること必死です!

1)出身大学と同じ大学院に進学する

 まずは、出身大学と同じ大学院に進学しましょう。学部(順調に行って4年)、修士(かなり順調に行って2年)、博士(ものすごく順調に行って3年)、計9年~を同じ場所で過ごすのです。決まった友達と、慣れ親しんだ環境で、同じ指導教官の元で同じ研究テーマに身も心も捧げることができます!決して途中で違う大学院に行ったり、留学したりしてはいけません。そんなことをしては、気が散って自分の研究に集中できません。知見を広げるとか、外の世界とのネットワークは今後の就職活動にも有利とか余計なことを考えず、自分の研究にひたむきに向き合いましょう!

2)自費で大学院に進学する

 日本ではあまりありませんが、特に理系の博士課程だと、海外先進国(アメリカ、ドイツ、シンガポールなど)では学費、生活費を含む給料が何らかの形で与えられるのが普通です。

 当然、このように金をもらいながら大学院で研究するなんてもってのほかです。大学院生も大学生と同じ、先生方から学ばさせていただいている身です。当然、お金を払ってでも研究させていただく、この姿勢が求められます。親のスネをかじる、バイトをする、借金をする、など方法はいくらでもあります。チャレンジングな人生を送りたければ大学院に自費進学して、同期が社会人としてどんどん年収が上がる中、研究で疲れた身体に鞭打ってバイトしましょう!

3)実績のない、評判の悪い指導教官を選ぶ

 実績がない指導教官の下には、人が集まりません。人が集まらないと、研究が進みません。そのため、迷い込んだ学生はゼッタイに手放しません。研究室の仕事をあれもこれも、自分の研究テーマと関係なくても与えてくれます。そのため自分の卒論と関係のない雑務もたくさん経験できます。自分の研究以外のことで忙しく研究実績はなかなか作りにくいですし、従って学位を取るまでにかかる期間も博士課程だけで10年弱と非常に長くなりますが、それでこそチャレンジングな人生です!

 また、いわゆる「世間で有名な」指導教官もおススメです。こうした先生はテレビ出演などで忙しく、なかなか研究の面倒を見てくれません。そのため、なんとか研究を卒業論文の形にできたとしても、永遠に添削が返ってくることがないため、先生に何かの間違いで時間ができない限り、やはり学位をとることができません。すでに学生を何人も卒業させている指導教官を選んではいけません。人生をチャレンジングにしたければ、学生をなるべく安く、長く拘束して、搾取したがっている指導教官を選びましょう!

4)周りがなんとかしてくれると期待する

 大学院は、大学とは一線を画した組織です。カリキュラムに従って決められたことをやっていれば、時間が経てば学位が手に入る……なんて世界ではありません。指導教官は研究などのことで忙しく、あなたがどんなコースを取ればいいとか、どんな論文誌を購読すればいいとかアドバイスはしてくれません。だからこそ、指導教官の言うことを絶対教義として奉りましょう!おそらく単位取得に必須のコースがあっても、「そんな授業取る時間があるなら手を動かせ!研究しろよ!!」と恫喝されるでしょうが、それでこそ正しい大学院生です。とりあえず指導教官の言うことに従ってれば大丈夫です!なんとかなります!

5)自分の研究テーマだけに集中する

 大学院に行く目的は何ですか?自分の研究をするためですよね?ですから、大学院では自分の研究だけに集中しましょう。他の人のプロジェクトとか、他の学問分野の勉強とかに費やす時間は無駄です。もしかしたら違う視点を持つことが自分の研究にも大事かもしれない?それは言い訳です。指導教官に言われたこと以外に時間を使うのは、正しい大学院生ではありません!

6)友達や家族に理解してもらおうとする

  大学院生も人間なので、友達や家族は大切です。特に、そうした身近な人たちに、あなたががんばっていることを認めてもらいたい!その気持ちよくわかります。大学院に行っていない人に、大学院生の日々を理解してもらうことは難しいでしょう……でも諦めないでください。以下に、典型的な例を載せるので参考にしてください!

(あなた、電話で)「お母さん、やったよ!学〇(有名な奨学金)が通ったよ!」

(母)「わぁ、おめでとう!ところでそれっていくらくらいもらえるの?」

(あなた)「なんとね……月20万円ももらえるんだよ!」

(母)「えっ……(絶句)。あなたもう20代後半でしょう……!もう一個もらってもいいんじゃないの?お隣の、幼馴染のA子ちゃんはその2倍は稼いでるわよ」

(あなた)「えっ……(絶句)。い、いや、でもこれってすごいことなんだ。採択率10%くらいなんだよ……これは若手研究者にはとても名誉なことで……」

(母)「それで……年100万円以上かかってる学費は免除になったりするの?」

(あなた)「え……ならない……」

(母)「保険は?あなたずっと学生で払ってないでしょう。加入期間が短いと老後もらえる金額がだいぶ少なくなるのよ。厚生年金には入れるの?」

(あなた)「ほ、保険?い、いや……入れない……てか厚生年金ってなに…?」

(母)「ボーナスは?昇給はあるの?」

(あなた)「え…な、ないけど……ば、バイト先の店長が、そういえばあと月20時間多くシフト入れれば時給50円上げてくれるって……!」

7)全てをやる

 大学院生にとって、自分の卒論は自分の全てです。全てを投げ打って、そこに全てを投入しましょう。人類にとって価値のあるものにしましょうよ。考え着く限りの方法論を取りましょう。この世に存在する全ての解析を試しましょう。ありとあらゆることをやって、やりつくして、そうして出来上がるのがあなたの卒論です。妥協は敵です。

 その結果、あなたが燃え尽きて消耗し……というか、現時点の人類の英知を全て研究に注ごうとすると、人の一生をかけても終わらないものになると思いますし、卒論のページ数も辞書の厚さに勝るとも劣らないものとなり、あなたの指導教官を含め誰も読んでくれなくなりますが、それでこそ大学院生、孤高の研究者への第一歩です!

8)読み手、聞き手のことは意識しない

 あなたの研究のことを一番知っているのはあなたです。論文を書いたり、学会で発表したりするのは研究者の大事な仕事ですが、伝えるのはあなたの本質的な仕事ではありません!ライティングやプレゼンの力を磨く時間があったら、手を動かして研究を進めましょう。孤高の研究者、かっこいいじゃないですか。

9)批判に敏感になる

 非常に残念ながら、全ての人があなたのように賢いわけではありません。あなたが出した論文が採択されなかったり、学会発表で総スカンを食らうこともあるかもしれません。でもそれはあなたが悪いんじゃありません。みんながバカなんです。あなたは指導教官に従って、言われたことを素直にやってきただけです。

 あなたは地元では神童でした。頭いいね、賢いね、脳みそ分けて、って皆に言われてきました。親にも、友達にも、将来を嘱望されてきた。それがここにきて、あなたが心血注いできた研究を否定される……?そんなことあってはなりません。あなたは失敗しないんです。負けないんです。やり返しましょう。目には目を、歯には歯を。あなたの論文を蹴ったレビューアーの能力を疑う手紙を論文誌に送り、学会であなたの研究を批判したやつの研究を否定しましょう。

10)学科関係者と付き合う

 プライベートではぜひ、所属の学科の関係者と付き合うべきでしょう。教授、准教授、助教授……それなりに候補はいます。自分より力がある存在と深い関係になることによって、他の学科関係者との関係も大きく変わります。誰もあなたのことをただの学生として扱わないでしょう。あることないこと、ゴシップが流れるでしょうが、なんにせよ大学院生ながら、一目置かれる存在になれますよ!

 もちろん、自分の現在と未来を握る人から迫られたら、望まなくても断れないこともあるかもしれません。相手はあなたの身体にしか興味はないかもしれないし、何かがあれば、全ての代償を負うのはあなたです。大学側も、切り捨てるなら職員よりも学生の方がラクです。ですがそうしたリスクを背負ってこそ、チャレンジングな人生です!

終わりに

 大学院には、上記のように人生を棒にふる罠が満載です。もちろん、研究者になりたければ大学院に行くしかないのですが、なんとなく進学するのはゼッタイにおススメできません。それでも進学する、特に博士課程に行くツワモノは、自分の目的、やりたいことを明確にして、こうした罠に自覚的になりながら、実りの多い研究生活を送りたいものです。



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