見出し画像

トラウマインフォームドケアと小児科医

こんにちは。小児科医のcodomodocです。神経疾患、神経発達症、心身症などの診療をしています。最近はマルトリートメント(不適切な養育)な環境から発達性トラウマ障害をきたした子ども達への医療的な関わりについて勉強をしています。

うちの病院の院内報に毎月書いているコラム“Pediatrics Note”です(800字前後)。診療をしていて感じる、とりとめもないことを書いています。
今回は2024年の5月号です。

先月号で『親御さんの信頼を得るためにできることはまだあります。次号からその鍵となる戦術トラウマインフォームドケア(TIC)についてお話しします』と書きました。ある講演会でTICを知り実践したところ、思いのほか僕の診療に役立ったので皆さんに伝えたいと思ったからですが、やっぱり辞めます。ここで書いても仕方がないと思うんです。どうせ読んでもらえないし、書く気が起きないというか。これは冗談じゃないですよ。僕なんかそもそもコラムよりハラミの方が好きだし。ね、面白くない。

何故かいじけている僕ですが、皆さんどう思いましたか? 嘘つきだとか、めんどくさがり屋の意気地なしだとか思いましたか? そう思われても仕方ありませんが、実は先月号の後、僕宛にTICについて書くのはやめろ、さもなくば・・・というハガキが届き、それが僕の心を傷つけ、深く引っかかり、そのせいでこんなことを書いてしまったのです。

TICは今回の僕のように、問題になる行動をしてしまった人の背景にトラウマがあるかもしれないと想定し、その人がさらに傷つくのを避け、良い関係を保つためのケアです。今の僕に嘘つき!と罵るのではなく、落ち着いた部屋で優しく「何が起きたの?」と問いかけてくれるケアなのです。そのためにトラウマとは何か、どのような影響を及ぼすのか、トラウマを負った人はどんな行動をするのかを知る必要があります。今回、僕はコラムを書かない『回避行動』を起こし、どうせ僕なんかと『気分が陰性に変化』してしまいましたが、いずれもトラウマを負った人の行動でした。あなたが人に負の感情をぶつけるのは簡単ですが、それは相手を傷つけると同時にあなたの心も傷つけます。そうしてささくれたあなたの行動は周囲の人を嫌な気持ちにし、トラウマが伝染していきます。この伝染を止めることもTICの大切な目的です。これまでも折に触れて書いてきましたが、今年は順を追ってお伝えしたいと思います。時々休憩しながらですけどね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?