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研究発表で社会学系の学生の発表を聞いてきた

はじめに


 先日であるが、所属学部の研究発表に行ってきた。今回のnoteでは、その感想についてまとめようと思う。なお、身バレ防止のため、僕や他の学生の研究内容などは記載しない。

僕について


 心理学系のゼミに所属。大層なものではないが研究を実施し、謎の力により発表会の発表者に選ばれた。あまり乗り気ではなかった。研究内容はマジで大層なものではない(強調)。

僕の学部について


 詳細は身バレリスクを考え公表しないが、社会科学色が強い。

僕の所属するゼミについて


 先述の通り心理学系のゼミである。このゼミに入った理由は様々あるのだが、正直に言うとボーダーフリーの不人気ゼミである。しかし、恐らく不人気の理由はレベルが低いわけではない。実はゼミの募集要項や先生が持つ授業のシラバスでは、度々「ガチでやらない人はいらない」といったことを強調しており、それが学生を遠ざけているものと思われる。「いやゼミをガチでやるのは当然だろう」という意見もあるだろうが、他の先生はもう少し柔らかい表現で学生を募集しているので、相対的に硬派なゼミであるという印象はついてしまう。あとは量的データを重点的に扱うという部分についても学生を遠ざける一因であった可能性がある(人のことを言えた立場ではないが、社会科学系の学部なので数字に弱い人が多い)。

 なお僕のゼミの実態はというと、募集要項が醸し出す「硬派」な印象とはおおよそかけ離れたものである。確かに「ガチ度」は高いが、募集要項で協調されているほどではなく、他のゼミと同じくらいだろう。ただし、科学的な態度というものについては非常に重視する。権利の都合上資料は掲載できないが、一番最初のオリエンテーションで「心理学は科学」「科学的な態度を養おう」ということについてみっちり叩き込まれた(その時若干社会学をdisっていた)。

 
 


発表会について


 卒論やそのほかの研究を実施した人がみんなの前で発表する。ゼミ所属メンバー全員が発表するわけではなく、一応ある程度はゼミ内で選考をする。共同研究もOK、似たような研究を無理やり一つにまとめて数人で発表するのも一応OK。僕のゼミでは基本そういう感じの物はなく、各自やりたい研究をやっていた。
 発表メンバーについてはある程度ゼミ内で選考をすると書いたが、選考方法は厳密に決まってるわけではなく、各ゼミに任せられている。なので他のゼミがどのように発表者を決めたのかは分からない。僕のゼミでは、発表会の2~3週間前くらいに先生から通達された。

僕の発表について


 いよいよ発表会当日になった。どういった人たちと発表会をやるのかについてはほとんど知らされていなかったのだが、直前に公開された資料から、周りはほとんど社会学系の学生で、心理学系は自分たちのゼミだけであることを知った。
 僕の発表については特に言うことがないのだが、先行研究をいくつか紹介した後、自分の研究の手順、結果、考察について説明。発表後には質疑応答があった。テーマがなじみ深いものであったためか、ありがたいことに(?)多くの質問をいただいた。それらに回答した後、自分の発表は終了。

 他の心理学系学生も大体同じ感じであった。


 

他の学生の発表


 他の学生(社会学系)の発表は学びが多かった。というのも、僕はあまり社会学について真面目に勉強したことがなかったのだ。理論的な部分について授業で勉強したりはしたが、そうしたものをどのように検証するのか?ということについては知らない部分が多かった。以下、興味深かった点について述べていこう。

①調査手法の違い


 
 まず驚いたのは調査手法であった。僕たちのゼミ(心理学)では、発表者もそうでない人も、全員が量的調査のみを実施した。量的調査とは簡単に言えば数量データを扱うもので、「〇〇と△△との間には有意な正の相関があった(r = .xx, p < .05)」みたいな分析のことを言う。

 他方で社会学系の学生は、量的調査の他にインタビュー調査を行っている人が多かった。「量的調査&インタビュー調査」の場合が多く、他にはインタビュー調査のみの人もいた。量的調査のみの人は社会学系の学生では極めて少数派であった(2人くらいはいた)。

 興味深かったのは、僕らと同じようなテーマの研究でも違いが見られたことである。社会学勢の発表の中には「このテーマ、うちのゼミ生の研究と似てるな」というものもあったのだが、分析方法が違ったりしていて面白かった。

どういうこと?という読者の方のために、簡単な例を紹介しよう。

 例えば、「パートナー選択の際、女性は男性よりも相手の経済力を重視する」という仮説があったとしよう。こういった場合、我々心理学ゼミの学生であれば、数値データで「経済力」に対する好みに男女差があるかを検討する。男女差が統計的に意味がある物であれば仮説支持で、そうでなければ棄却となる。
 これに対し、社会学系の学生は、上記のような統計的分析の他にインタビュー調査でのアプローチもする。統計的分析で仮説の検証をするだけでなく、インタビュー調査でも仮説の検証をするのである。インタビュー調査で得られる情報は仮説支持や棄却といったものだけでなく、語りから得られる他の情報もあるので、そうした部分も報告する。

  と、まあこんな感じである。

 もちろん量的データから得られる情報とインタビューのような質的データから得られる情報は異なる場合もあるので、社会学勢の発表の方が様々な情報が得られるというのは言えるだろう。実際社会学部系学生の発表では、「ある方からは、〇〇という語りが得られました」といったように個別具体的な部分を詳細に報告していた。

 こうした点は素直にすごいなと感じた。我々心理学ゼミの学生は、量的データで仮説の検証をしたらそれで満足してしまうので、見習う部分は大きい。

②発表内容の違い


 これは①による部分が大きいのだが、発表内容も僕ら心理学勢と社会学勢とで違いが見られた。一番大きかったのは結果の報告である。

 僕ら心理学勢は量的データしか扱っていないので、量的調査についての(数値的な部分の)説明が中心となるのだが、それに対し社会学勢はインタビュー調査の結果を中心に報告していた。量的調査とインタビュー調査を両方やっている人の場合、両方詳細に発表するのは難しいためだろうか、量的調査の結果については「〇〇分析をした結果、仮説が支持/棄却されました」ということのみ発表し、インタビューの結果について細かく発表する人が多かった(量的調査の分析方法を説明しない人もいた)。

 両者の違いを例で表すと以下のようになる。

・心理学勢(僕たち)→「Aグループの平均値は〇〇、Bグループの平均値は△△、p値は.001でした。よって仮説は支持されました(^^)」

・社会学勢→「量的調査では仮説は棄却されました。一方インタビュー調査では~ということが分かりました。ある人は、・・・と言っていましたが、別の人は***と言っていました。」

といった感じ

 量的調査の結果を詳しく知りたかった自分としては少々残念であったのだが、恐らく分野やゼミ教員、研究内容によって重視する部分が異なるのだろう。そうした部分も自分にとっては興味深かった。

 他には、心理学部勢は先行研究の紹介に時間を割いた一方、社会学部勢は背景にある社会問題の説明に時間を割いていたといった違いもあった。この辺りは教員の指導の違いだろう。


おまけ:先生の評価ポイントの違い


 ①、②の違いによって、先生からの評価にも違いが生じた。我々心理学勢は「データの厳密性」を特に評価してもらった一方、社会学部勢は「インタビュー調査で得られた語りの興味深さ」が高く評価されていた。我々心理学勢はとにかく先生からのツッコミを恐れていたので数値データに関しては特に気を付けていたのだが、それが功を奏したようだ。思ったよりも先生に深く突っ込まれることは無かった(笑)。

 最も、たかが学部生の発表なのでそこまでしっかりと評価されているわけでもないだろうというのはさすがに分かった。僕の研究を大学院などに持って行ったが最後、1日かけてダメ出しされるだろう(1日で済めばよいが)。

まとめ


 社会学系の学生の発表を聞いて面白かった部分をまとめてみた。2つ(おまけを含めると3つ)書いてみたが、一番大きいのは①の「調査手法の違い」である。社会学系の学生は、分析において「当事者の語り」を重視しており、人間から得られるデータを数値化して弄ることに終始していた我々とはだいぶ違っていた。

終わりに


 今回は社会学部系の学生と研究発表を実施したことで学んだことについて簡単にまとめてみた。最も、ここでまとめたのはあくまで「僕が所属するゼミ」と「一緒になった社会学系学生の発表」の比較であるため、厳密な比較ではないことに注意が必要である。社会学の中でも分野やテーマによって分析方法などは異なるだろう。

 ぶっちゃけてしまうと、今回の発表で分かった違いについては「指導教員の違い」による部分が大きいと考えられる。そのため今回のnoteで書いた内容を「心理学と社会学の違い」と一般化するのは難しい。とは言え、例えば大学受験を控え、進路選択などで迷っている人などであれば少しは参考になるかもしれないので、「そういう違いもあるんだな」くらいに思っていただければ何よりである。


 
 



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