「今から歩くけど、一緒に来る？」

午前6：30
前日の疲れとサウナで思ったより爆睡したぼく。
目を覚ますと嫁ちゃんが普段着に着替えていた。

「え？なに・・・？歩くって・・・？」

寝ぼけた頭をうごかしてみる・・・

ええっと、ぼくたち夫婦は
嫁ちゃんの誕生日企画で
仙台に旅行中である。

ここはホテル。ドーミーインホテル。
朝早く、嫁ちゃんが散歩に誘ってきた。

「ほら、私たち昨日食べ過ぎたからね。
朝食のためにも少し歩こうかなって」

「ああ、ああ、たしかに。賛成、賛成だよ」

まさか旅行先で嫁ちゃんのほうから
朝散歩に誘ってくれるなんてねぇ…。
なかなか面白そうな感じじゃないか。
おかげでだんだん目が覚めてきたぞ。

支度を済ませたぼくたちはホテルの
フロントに挨拶をして散歩スタート。

・・・

さすが、冬の朝。
朝日が差し込むとはいえ身を切る冷たさ。
未だ静謐な大通りにぼくたちの声が響く。

「嫁ちゃんさぁ、目的地とかあるの？」

「ぬっふっふ。聞きたい？聞きたい？」

「聞かせてくれるのかい、おっかさん」

「仕方ないねェ、よーく聞くんだよゥ」

「へい、あっしは聞き洩らしませんぜ」

「実はね、私たちはスタバに行くのさ」

「な、なんだってェ！こんな朝早く？」

「バカだねぇおまいさん。朝だからさ」

「こいつは驚いた。まさかの朝イチ！」

「これもまた散歩の醍醐味ってやつよ」

口調がおかしなことになってきてるけど
前日のお酒が抜けていないわけではない。

実はぼくたちはテンションが高くなると
こんなふうにヘンテコな口調になるのだ。

芝居がかったかのようなコントのような
妙な掛け合いは非常に面白いものである。

というわけでベラベラとお喋りしながら
スタスタと、仙台駅へぼくたちは歩いた。
通勤途中の人々の視線を軽く受け流して。

開店前のスタバでも数多くの順番待ちが
できていたことに面食らってしまったが
無事ドリンクをゲット。そしてホテルへ。
更に朝サウナまで決めちゃいましたとさ。

・・・

二日目：朝食
「朝食バイキング、海鮮丼もあるよ」

ドーミーインホテルは食が凄いと聞いた。
ワクワクして朝食を食べに行くと、凄い。
海鮮丼が自分で作れるコーナーがあった。
なんぞこれ。

ホタテやらサーモンやらイクラやらが…
乗せ放題だと！？乗せ放題だとおぉ！？
イクラ爆誕祭り開催決定ぃいいぃい！！

驚くのはまだ早かった。
顔を上げると新鮮なセリ鍋と目が合う。
やあ、おはよう。そしていただきます。
（ぼくはセリ鍋が超絶大好きなのです）

うへへと悦に入るぼく。だが気を抜くな。
前方には仙台牛で作ったと噂が囁かれる
ローストビーフ様が睨みを効かせておる！

顔をそむけた先には、天麩羅がっ・・・！
ただの天麩羅じゃない、牡蠣の天麩羅が！
ぼくに向かって手招きしてるじゃないか。

なんだこれ、朝からこんなの…いいのか？
朝からこんなの、食べちゃっていいのか？
良いに決まっているだろう。誕生日だぞ！
（嫁ちゃんの誕生日は昨日です）

そんなわけで欲望を腹に詰めるぼくたち。
ああ、美味しい。ああ、美味しい。最高。
このホテルの朝食は自分史上№１だった。

・・・

二日目：昼食
「最強のラーメン、一風堂」

朝食バイキングで昇天しかかったぼくたちは
チェックアウトまでトドのように横たわった。
ビチビチ。

ホテルを出て向かった先は最強のラーメン屋。
そう、一風堂である。

ここだけの話、ぼくはラーメンが大好き。
そしてラーメンの中で一風堂が一番好き。

数年前のこと。
兄夫婦に「次郎、一緒にラーメン喰おう」と
連れていかれた一風堂で大衝撃を受けたぼく。

なんぞこれ・・・なんぞこれ・・・

ぼくの知っているラーメンの味を軽く超えた。
ラーメンの形をした別の料理だと思っている。
理屈じゃない、とにかく美味いそれが一風堂。

速攻で嫁ちゃんにも勧めたらファンになった。
だよねー。

というわけで今回のグルメツアーで一風堂は
欠かせないのだ。これを食べずして帰れない。

久方ぶりに食べる一風堂はやはり美味。
ぼくたちは大満足で店を後にしたのだ。

・・・

さて、ここまでくるとお腹がヤバい。

昨日から美味しいものばかりを詰め込んだら
ぼくたちのお腹がストライキを起こしたのか
グルルルとかゴゴゴゴと妙な唸り声がつづく。

「どうしよう嫁ちゃん、お腹がおかしいよ」

「買うよ」

「え？」

「こういうときはひたすら買い物だよ！」

嫁ちゃんいわく
ひたすら歩いて消化すればなんとかなると。
なるほど、なるほど。

というわけで怒涛の買い物モードへ突入。
目につく商業施設にかたっぱしから入る。
これはこれで、楽しい。
（ぼくたちはウインドウショッピングが好き）

やがて歩き疲れたころには帰宅の時間だ。

ぼくたち史上初
欲望まみれの誕生日強行軍だったけど
終わってみれば楽しかった記憶でいっぱい。

良かった。旅行をして良かった。
今年も嫁ちゃんに感謝の一年となりそう。