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助手席の異世界転生 #毎週ショートショートnote

「もし、私が異世界転生したら、どうする?」

助手席にちょこんと座った妻が僕を見る。
丸い瞳は好奇心を表すかのように大きい。

異世界転生だって?何を言っているんだ。
昨今の異世界転生ブームにあてられたか。

でも、そうだな・・・。
少し考えて僕は暗澹あんたんたる気持ちになった。
いやいや僕の妻は異世界じゃ生きていけないぞ。

なにしろ極度の世間知らずだ。
電子マネー決済は使えないし
外食でも「これなに?」だし
人見知りが極度にひどすぎる。

「君が異世界に?なら僕も一緒に行かないとね」

「ついてきてくれるの。うれしいな」

大きな瞳を細めて無邪気に笑う妻。
そういえばこの笑顔にやられたんだったな。
僕の大好きな妻との出会いは・・・

「ねえ、楽しかったよ。私」

助手席を見ると誰もいなかった。

「えっ?・・・えっ???」

妻が消えた?そんなばかな、だって、

だって、

だって?

あれ、僕は何言ってるんだ?

・・・

あーあ。僕の隣にポンと可愛い女性が出て来て
嫁になってくれないかなぁ。
(410字)


今回のお題は『助手席の異世界転生』。たらはかにさんの
【毎週ショートショートnote】企画に参加させていただきました。

うーん、書いてて悲しくなってしまいました。
嫁が消えたら最悪です。でも嫁がいたことを忘れるほうがもっと最悪です。


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