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hazeru coffee窪田さんインタビュー


本日はコーヒー共和国(以下共和国)メンバーで、現在、富山でhazeru coffeeを営む窪田さんにお話を伺います。窪田さん宜しくお願いします。

hazeru coffeeの窪田 豊久(くぼた とよひさ)です、宜しくお願いします。

コーヒーとの出会いからお話をすると、中学生くらいの時に母親に淹れてもらったインスタントコーヒーを飲み始めたのが最初でした。
初めはミルクと砂糖も入れて甘くして飲んでいましたが、だんだんブラックコーヒーと甘いお菓子、みたいな組み合わせで飲むのにハマっていきました。それが大学生くらいまで続きました。

大学は横浜の大学に行っていたのですが、ちょうどその頃横浜に初めてスターバックスがOpenして、そこで人生で初めてのエスプレッソを飲みました。
それまではドトールコーヒーによく行っていて、カフェオレはよく飲んでいたのですが、エスプレッソで作るカフェラテをスターバックスで初めて飲み、コーヒーが濃厚で同時にミルクのコクも感じるということで、すごく衝撃を受けました。ただその時はエスプレッソというものの存在を知らなかったので、なんかスタバに美味しいコーヒーあるな、くらいに思っていました。

BankerからBaristaへの転身

その後大学を卒業して銀行に就職しました。全国に支店がある銀行で、振り出し店舗は希望できたので、一回地元に帰ろうかということで地元の石川県に戻りました。
銀行に就職したのは、経営に興味があったからというのが理由の一つなのですが、想像以上に金融業界の固さが自分に合わないなと感じていて、ただ、入ったばかりですぐ辞めるのもなぁ、でも、本当にこのまま何十年も過ごしていいのだろうか、という感じでモヤモヤしていました。

そうやってモヤモヤしながらも、仕事で使う資格の勉強なんかをカフェでコーヒーを飲みながらやっていたのですが、ある日ふと、そういえば昔スターバックスで飲んだカフェラテ、おいしかったなーってことを思い出したんです。
その時「経営に携わる仕事がしたい」「コーヒーが好き」「(当時)地元の石川県にはスターバックスがない」といった事柄が組み合わさって「自分がスターバックスの北陸一号店を呼んで来ればいいんだ!」と閃いたんです。

もうそう思ってしまったら、居ても立っても居られなくなってスターバックスに電話しました。確か「北陸にはスターバックスが無いんですが、僕はスターバックスで働きたいんです」みたいな話をしたんだと思います。
すると、実はその時既に北陸一号店Openの話が進んでいたそうで、じゃあ面接受けてみますかってことになり、面接を受けて採用された、というのがコーヒー業界に入った経緯です。銀行に就職してから半年後くらいの出来事でした。

入行後半年で銀行を退職する、というのはかなり勇気のいる決断ではなかったですか?

友人にも「辞めるのはもったいない」と言われたり、自分自身も最低でも3年くらいは働かないと、という気持ちもあったのですが、やりたいことがあるんだったら少しでも早く飛び込んでしまったほうがいいんじゃないか、と考え決断しました。

スターバックスに入社するまでは、趣味でコーヒーを淹れていたというのもなかったんですか?

そうですね、それまでは飲む専門でした。家ではインスタントコーヒーを淹れるくらいで、外で飲むことの方が多かったです。

じゃあ、入社後イチからコーヒーを学ばれて、っていう感じだったんですね。

そうですね、チェーン店ということもあり、イチから体系立ててコーヒーのことを学べたのはすごく良かったですね。
それに、お店の経営という観点でもスターバックスで働けたことは良かったです。やはりお店をやっていく上で、美味しいものを出すだけではダメで、一番大切なことはそこで働く人たちが同じ方向を向いて仕事をすることだと気付きました。
コーヒーを通じてお客様に豊かな時間を提供する、ということがスターバックスのビジョンであり、その為にどうやって組織を作るかとか、どう商品を売っていくかということを学べた事が良かったですね。スターバックスではそういった理論がきちんと実践されている印象でした。

スターバックスではどういったキャリア形成をされていたのでしょうか?

ちょうどスペシャルティコーヒーが日本でも普及し始めた2002年にスターバックスに入社しました。

勤務地としては、石川→富山→京都→大阪→富山という感じで転勤しました。約15年間勤めたのですが、そのうち10年間くらいは富山での勤務でした。

仕事内容としては、最初はイチバリスタとしてコーヒーを淹れたり、レジ打ちをしたりという業務から始まり、その後新しいスタッフの教育係になり、時間帯の責任者になり、最後は店長、という感じでした。社員だったので、割と早い時期から店舗の責任者としての仕事をするようになりましたね。

一方、焙煎についてはスターバックスではやっていなかったです。マニュアルに焙煎の時のコーヒー豆の変化が書かれていて、それを覚えたくらいですね。

コーヒーが好きでスターバックスに入った訳なのですが、その時はまだ自分の店を持とうとまでは思っていなくて、スターバックスの店長になれば経営に携わる仕事ができるだろう、くらいに思っていました。

暮らす場所を自分自身で選ぶ

そこからhazeru coffeeを開業するに至ったきっかけは何かあったのでしょうか?

はい、2011年に京都に転勤になり、そこで初めてスペシャルティコーヒーというものに出会いました。
京都はWEEKENDERS COFFEEさんとか、Unirさんとか有名なスペシャルティコーヒーのお店が多くあって、そういったお店でコーヒーを飲むうちに、このコーヒーは美味しいな、何が違うんだろうと考えるようになりました。

一部の店舗を除く一般的なスターバックスの店舗では、コマーシャルグレードのコーヒーを提供していますが、それとスペシャルティコーヒーを比べるとやはり味わいが全然違うんです。
当時私はブラックエプロンと呼ばれる、お客様にコーヒーの楽しみ方を啓蒙する立場にあったのですが、一方で自分達が提供していない、スペシャルティコーヒーの味わいが心の中に残っていて、このままここで働き続ける自信がなくなっていったことが独立を考えたきっかけでした。

その他にも、京都に転勤になったちょうど1ヶ月後に東日本大震災が起こり、人生について考え直すきっかけになったり、その1年後に一人目の子供が産まれて、一つの土地に根付いて子供を育てていくのもいいな、と思ったりだとか、色々な要素が絡まって独立に至ったと思っています。

土地に根付くという意味では、スターバックスでもずっと同じ店舗で働いて、その土地のお客様との関係を築いていくスタッフもいるんですが、自分は社員として全国の店舗に転勤する立場であり、一つの店舗で長く勤務することが難しかったので、そういう働き方が正直羨ましいな、と思ったこともありました。

そういったことを色々考えているときに『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』という本に出会ったのです。タルマーリーというパン屋さんをやっている方が書かれた本なのですが、自分の仕事がよりうまくいく場所を選ぶというだけではなく、家族にとっても幸せに暮らしていける場所を選ぶ生き方があるんだなとその本を読んで気付きました。
生きていく土地を自分自身の意思によって選択する、という生き方もいいなと思う気持ちがだんだん強くなってきて、「そうだ、自分でスペシャルティコーヒーの店をやろう」と思い、妻の地元であり、スターバックスでも長く働いた富山県で店を開こうとなって、2016年にhazeru coffeeを開業しました。

以前、共和国で「hazeru coffeeさんのコーヒーを飲む会」を開催したときに、そこを目掛けて来てくれるような場所に店を持ちたかった、というお話をされていたと記憶しています。どのように店舗の候補地選びをされたのでしょうか?

最初は、漫然と不動産サイトをみたり、いいなと思うところを車で走ってみたりしていたのですが、当然というか、それでは全然決まらなくて、そろそろやばいと思い出した頃に、同じように開業を目指していた友人に、まずは創業計画書を書いた方が良いというアドバイスをもらって、書き出してみたのです。それによって、自分のお店のお客様ってきっとこういう人達で、だとするとこういうところにお店を持つべきだ、と考えが進み始めました。

スペシャルティコーヒーって値段が高いですし、周りの友人で自家焙煎店でコーヒー豆を買って自分で淹れてる人っていないな、と思いました。
じゃあ、自家焙煎店でコーヒー豆を買って自分でコーヒー淹れる人ってどういう人だろうと考えると、やはり食にこだわりがあるっていうのは、すごく重要なテーマだろうな、と。
そしたらどういうところにそういった人達が集まるかというと、まずそもそも人が多く集まる場所には一定数いるだろうから、その意味で繁華街や大きな駅の周辺が出店候補地の一つになると考えました。
ただ、当然そういう場所は土地や家賃が高いので、限られた開業資金では難しいということも分かっていました。
繁華街ではなくても雰囲気の良いエリアというのはいくつかあるのですが、そういう場所は空き物件もなかなかなくて。
自分がお店を出した場所の周りに他にも良い感じのお店が集まってきて、あのエリアちょっといい感じじゃない?って言われるようになるのが理想的だなと漠然と思っていましたが、何も無いところにイチから作っていくのもなかなか厳しいよな、と葛藤がありました。

そんなことを考えている時に、当時家の近くにあったお気に入りのパン屋さんが、こだわりのお肉やハム・ソーセージを出すことで有名な精肉店の隣に移転するという話を聞いたんです。

こだわりのある精肉店に来るお客様は、当然食にこだわりがあるだろうからスペシャルティコーヒーもハマるのではないか。
そして自分が好きなパン屋さんがその隣に移転する。
ご存知の通り、パンとコーヒーは相性が良い。
ということを考えると、絶対そこが良いとなり、お店の方に周りの土地について話を聞くとちょうどいいタイミングだった事もあり、トントンと話が進みました。
そして、やるからにはその土地に根付くという意志を持って、今の場所で新しくお店を建てるという決断をしました。

いいですね、土地に根付くというのが。

コーヒーって習慣化する飲み物だと思いますので、ずっと同じ店で買い続けてくれるお客様は多くいらっしゃいますし、自分もここでずっとコーヒーを売っていくんだ、ということを決意した感じですね。

2016年に開業されてもう既に2店舗目も出されて、経営は非常に順調そうに思えますね。

開業して3年くらい経った頃に、お客様が増えたなという感覚はありました。ありがたいことに、hazeru coffeeでコーヒーを買うのが習慣化して来てくださっているんですかね。
でも経営的にはもっともっと良くしていかなければと思っていて、従業員の給与ももっと増やしていきたいですし、課題はたくさんあります。

店舗数の拡大という意味では、逆に1店舗に絞った、オーナーの目が行き届いたこだわりのコーヒー屋さんにも憧れるんですが、コーヒー豆の買い付けや生産者との関係性を考えると、ある程度規模がないとそもそも欲しい豆が買えなかったりしますし、生産者の方へ貢献ができる事が少なくなるなと感じています。
お店を拡げていって、ある程度の規模を持って生産者と消費者の間を繋ぐ存在になりたいと思っています。

コーヒー屋をやっていると、美味しいコーヒーはたくさんあるのにまだまだ一般的には知られていないと感じます。その意味でいうと、1号店は「目的地になる場所」というコンセプトで立地を選んだこともあり、美味しいコーヒーが飲みたいという目的や感度があるお客様が来てくれるお店だと思っています。
ただ、そうして1号店のある場所でお店をやっていると、スペシャルティコーヒーの存在を知らない層にももっとアプローチしたいと考えるようになり、繁華街に2号店を出すに至りました。2号店はコーヒースタンドという形式でドリンク売りがメインなのですが、フードとの組み合わせでコーヒーの魅力を伝えられたらなという想いもあるので、3店舗目はフードも一緒に出せるお店を作れないかなと考えています。

以前つねぴさんにお話伺った際、コーヒーを趣味として楽しむ人ってまだまだ少数で、そういった人達にもコーヒーの魅力を伝えたいと思い、手軽にコーヒーを淹れられるコーヒーバッグにたどり着いたというお話をされていました。
結構、そういった根底にある想いが似通っているなと感じます。
コーヒーって非常に一般的な飲み物だと思いますが、一方でスペシャルティコーヒーの様に様々なフレーバーを持ったコーヒーが存在するっていうところまではそんなに浸透していないんじゃないかなと思います。

コーヒーって、苦くて黒くてっていう典型的なイメージがありますけど、そうじゃないコーヒーもたくさんあるっていうのは、この世界の面白さだと思います。お客様にも楽しいなって思ってもらえたらいいなと思いますね。
例えば、1杯1,000円も出せばかなり高品質なコーヒーが飲めるじゃないですか。1,000円ってコーヒーの値段としたら高いですが、1,000円でちょっと手軽な贅沢として生活に潤いをもたらすという意味では安いんじゃないかと思います。
普段は1杯100円のコーヒーで良いですけど、ある日ちょっと贅沢したいなって時に1杯1,000円のコーヒーが飲めるっていうのは、選択肢としてありじゃないかなと。

確かに、都内でランチ食べようと思ったら1,000円とかは普通にしますし、手頃な贅沢という意味で全然ありですね。

Top qualityのコーヒーを富山で

あと以前、World Brewers Cup 2021 第2位になられた畠山さんのクラウドファンディングに出資されたというお話も伺いましたが、畠山さんをお呼びしてどんなことをされたのかお聞きしてもよろしいですか?

はい、畠山さんにはゲストバリスタとして店に来て頂いて、セミナーを開催しました。

富山でスペシャルティコーヒーを出しているお店ってまだまだ少なくて、本当のTop qualityのコーヒーを飲める機会ってあまりないんです。自分は富山に長く住んでいて、今は店もやっているわけですが、「こういうコーヒー飲みたいな」と思っても、富山だとなかなか売っているお店がないわけですよ。

例えば、今となってはかなり一般化しましたが、ちょっと前に新たな精製方法としてアナエロビック(アナエロビックファーメンテーション=無酸素状態で発酵させ、独特なフレーバーを発現させる精製方法)が注目され始めた頃、じゃあそのコーヒーが飲みたいと思っても買える場所がなかった、みたいな。
なので、自分の店をそういう新しい技術や、Top qualityのコーヒーにアクセスできる場所にしていきたいという気持ちは以前からあって、いつか世界トップクラスのコーヒーパーソンをお呼びしたいなとは考えていました。
あとは単純にミーハーなので、著名な方をゲストバリスタでお呼びできたら楽しそうというのもありましたね。

ただやはりチャンピオンになるような人は何かしら繋がりがないとなかなかお呼びするのって難しいじゃないですか。畠山さんともそれまで直接の面識はなくて、でもどうにかしてお呼びできないかなーと思っていたところに、クラウドファウンディングを募っていることを知りました。
個人で世界に挑戦するのはとてつもなくお金もかかるだろうし、大変だろうから、すごく応援したいという気持ちもあり、かつ自分が望んでいたようなリターンも用意されていたので、これはぜひ支援させて頂きたいとなりました。

そういった経緯で、畠山さんにゲストバリスタとして来て頂いて、多くの方に世界トップクラスのスキルで淹れて頂いたコーヒーを飲んでもらうイベントを開催しました。
加えて、そういった競技会に出てみたいけど、東京に行くのはちょっと、と躊躇しているような方をターゲットにセミナーを開いて頂き、ブリュワーズカップのお話もして頂きました。

なるほど、素晴らしいですね!
お店でセミナーってよくされていらっしゃるんでしょうか?

今はコロナ禍でちょっと下火になってしまいましたが、以前は定期的に開催していました。ご自宅でどうやったら美味しいコーヒーが淹れられるか、コーヒーの味わいはどう違うのか等をテーマに、ハンドドリップのセミナーや飲み比べのイベント等を定期的に開催していました。

やはり啓蒙のところに注力されているんですね。

そうですね、家だとお店で飲んだコーヒーと同じ味にならない、という声を頂くこともありますので。
もちろん店頭で淹れ方とかお伝えはするのですが、やはりより詳しく伝える、それこそお湯の温度、抽出の時間、豆の挽き目、とかいう話になってくると、ある程度時間をとってセミナーという形でお伝えするのが一番だなと思っています。

今度共和国メンバーでPop-upカフェをやろうという話もあります。その時、ぜひhazeruさんのコーヒー豆を売らせて頂きたいです。

ぜひぜひ!!その時は小ロットでも承りますよ!

ありがとうございます!今考えているのは、共和国メンバーが関わる色々な商品を売ってみたいよね、という話をしていますので、hazeruさんにもぜひ参加頂けますと幸甚です。

共和国の皆さんは本当にいろんな経歴をお持ちなんですが、今回は銀行マンからバリスタ、そしてカフェオーナーという異色の経歴の持ち主である窪田さんにお話を伺いました。本日はありがとうございました。

◾️hazeru coffee HP


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