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『大人の本音だだもれ。』11話 モテると自覚してる20代男性【Web小説】

第11話 社内恋愛はしない主義がゆらぐ

 『汪花おうか』さん、か。

 繁忙期はヘルプが入ると聞いていたから一週間前の発表にも驚かなかった。男より女性なのはいいことだけど、そんなに期待してなかった。でも朝礼で上司が紹介してる人は好みの顔だ。

 こんなに美人だったら……。

 トラブったときが面倒なので社内恋愛はしないと決めていた。でもこの人は期間限定でいなくなる。ちょうど俺には彼女もいない……。

 性格がいいなら付き合うことも考えてみるか。

 汪花さんの机は別のシマなので距離がある。接点は持ちにくいけど視界に入るいい位置だ。仕事中も観察できて情報収集しやすい。しばらくは声をかけないで、ようすを見ることにした。


 へえ、派遣なのに仕事ができる。

 会社ごとに業務は異なるから、たとえパソコンが使えても初めは手こずるのが普通だ。去年の派遣は一週間くらい指導担当がつきっきりだった。でも彼女はスムーズにパソコンを操作している。

 おそらく派遣で何社か勤めてて慣れているな。

 学生時代、たくさんアルバイトをしていろんな職場を経験した。何度も経験すれば慣れると思っていたけど、初めての場所は毎回緊張したものだ。

 職場に慣れるまで数日かかるはずなのに、汪花さんは初日から支障なく過ごしてて、まるで以前から働いているみたいだ。

 キャリアウーマンタイプか?
 だとすると、ガードが堅いかもしれない。

 渡した資料だけで仕事を進めていけるから分析力と読解力が高い。支給されたノートパソコンも難なく操作しているのでパソコンスキルもある。日本人は自信なさげな人が多いけど彼女はそんな感じがしない。

 あまりいないタイプで新鮮だ。
 早く話してみたいけどまだ情報が足りない。
 女性は包容力のある男性を好む。
 もっと彼女のことを知ってから行動したほうがいいな。


 おしゃれにうといな。

 どんな服装をしてくるのか期待していたのに、汪花さんは初日のパンツスーツと変わらないシャツにパンツ姿だ。使う色は白・黒・グレーで、カーディガンだけネイビーかグリーンと色がある。

 きちんとしたクール系美人もいいけど、会社うちはオフィスカジュアルOKで、内勤の女性社員のなかには、私服を着ているとしか思えない人もいる。淡い明るめの色を取り入れた女性らしい服装も見てみたいな。

 

 汪花さんはフリーのようだな。

 彼氏が いる・いない はなんとなくわかる。彼氏がいる場合はメイクや髪に気合が入ってて、よく鏡を見ている。そして彼氏が何をしているのか気にして連絡を取りたがるし、彼氏のほうも頻繁に連絡してくる。

 汪花さんはどちらにも当てはまらず、彼氏がいるような感じはしない。美人の場合、男は気後れして声をかけないことがある。もしかすると彼女はずっとそんな環境にいて、恋愛経験は少ないかもしれない。


 仕事に没頭してばかりだ。

 女性はおしゃべりな人が多く、仕事中に話している人もいる。男でも短い雑談はするのに、汪花さんは休憩中も話をしてるところを見たことがない。お高くとまっているのか、コミュニケーションを取るのが苦手なのか……。

 オフィスだと汪花さんは感情の起伏がない。仕事から離れたところでないと性格がつかめないな。週末に行われる彼女の歓迎会までようすを見ることにしよう。


 楽しみにしていた歓迎会!
 離れた席で汪花さんを観察しよう。
 お酒の席だとどうなるのかな?

 うーん……。最初の一杯はみんなと合わせるべきなのにウーロン茶、歓迎会の主役なのにずっとソフトドリンク。アルコールがダメな体質なら仕方ないけど、場がしらけてしまうので少し残念だ。

 交流を図るための飲み会なのに自分から話しかけにいかない。上司は声をかけてもらいたくてチラチラ見てる。こういう場では上の人を立てないといけないのに気がきかないな。よし、俺から話しかけてみるか。


 初めて汪花さんと話したけど微妙だ。
 会話が続かなくてやりづらい。
 しかし……本当に美形だった。

 オフィスでは席が離れているし、眼鏡で気づけなかったけど、目が大きくてまつげが長い。

 ふだんは美人でも洗顔したあとの素顔は別人という女性が多い。それに比べて、汪花さんはメイクなしでも肌がきれいで、整った顔をしているから見とれてしまった。

 コミュニケーションは取りにくいけど顔が好みなのでやっぱり気になる。同僚の話に付き合いながら観察を続けていると、汪花さんが予想外の行動を取った。


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※小説投稿サイト『カクヨム』で投稿していた小説を推敲してnoteに公開しています。


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Web小説『大人の本音だだもれ。』

第1話

  • 【あらすじ】

  • 1話 会社の忘年会はなんのためにある?

第2話

会社に新しい人が来るときは期待してしまう

第3話

美人で仕事はできる。でもコミュ力がね

第4話

30代の枯れたオッサンをとりこにしたのは

第 4.5 話 小休憩(1)

物事に変化を与えるのはいつも「人」

第5話

朝礼で増員の発表があって職場の空気が変わる

第6話

自分より若いコが来て40代女性は焦りを感じてる

第7話

結婚願望はある。でも大っぴらには言っていない

第8話

仲が良くても酔っぱらいに向ける視線は厳しい

第9話

これまでの対応は社交辞令だったの?

第10話

本来の性格がわかるとき

第10.5話 小休憩(2)

モテる人っていますよね?

第11話

社内恋愛は避けてきたけど迷ってしまう

第12話

酔っぱらいの相手は大変

第13話

恋愛モードに完全に切り替わった

第14話

恋の作戦スタート!

第15話

勝利するには布石を打つ

第16話

俺の攻略マニュアルは完璧。恋の勝者は

第16.5話 小休憩(3)

会社の忘年会の裏側ではこんなことも

第17話

忘年会がスタートする前からモノゴトは始まっている

第18話

フラれても再挑戦! 諦めないこの男は策士だ

第19話

攻略するために選んだアイテムは「酒」

第20話

大人だから態度には出さない。でも脳内で叫んでいる

第21話

おじさんは若いコが心配だ!

第22話

強気で駒を進め今度こそあのヒトを落としてみせる

第23話

送り狼のピンチに騎士ナイトが参上!

第23.5話 小休憩(4)

オトナたちはどんな恋愛をしているのかな?

第24話

オトナの男の恋

第25話

嫉妬、羨望…。職場でもあること

第26話

「彼女」よりも「パートナー」を探したくなったきっかけ

第27話

人が強くなる瞬間

第28話 【最終話】

パートナーになったら絶対に彼女から引き出したい!



カクヨム
 神無月そぞろ @coinxcastle


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