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カメラを止めるな!を観てきた話。

映画「カメラを止めるな!」を観てきた。

前から気になっており、上映館が増えたので観に行こうと思っていたもののなかなかタイミングが合わずにいた。観たい気持ちを抑えながら我慢する日々を耐え、やっと行けそうな時間が出来たので機を逃すまい!と映画館まで足を運んで来た。

今作を楽しむにあたって大変だったのは前情報をシャットアウトする事だった。ネタバレが致命的な映画という事をなんとなく聞いていたので出来る限り情報を入れないよう努めた。

もともとテレビは見ないのでそこは大丈夫なのだが、Twitterをぼんやりと見ていると時折「カメラを止めるな!」という文字が流れてくる。僕はすぐさま人差し指でスイーとタイムラインを流して視界からその文字を消す。TLを止めるな!だ。

最もネタバレが危うかったのは宇多丸さんのラジオ番組アフター6ジャンクションでの木村拓哉さんインタビュー回。油断して聞いているとふいに「カメラを止めるな!」の話題に。内容に少し触れそうになり危ない!と思い急いでボリュームゼロにしようとするも間に合わない。万事休す!と思ったが流石はアフター6ジャンクション。ピーという音で伏せてくれたお陰でネタバレは無事に回避。危なかった。九死に一生。

というくらいに、必死にネタバレを避けて情報を何も入れずに観れた事が僕にとっては大正解だった。なので、この記事内でも出来るだけストーリーについては書かないつもりだ。内容に触れずに感想なんて書けるものなのかは自分でも疑問だか挑戦してみよう。この挑戦的な映画の感想を書くには自分でも何かしらの挑戦をする事が必要なのだと思うから。

午前11時10分からの回を観るために映画館へ向かう。駅から映画館へ歩いていると同じ方向へ進む人々がみんな「カメラを止めるな!」の鑑賞を目的に来ているのだと思えてくる。我々は仲間だ。ウィアハッピファミリ!

チケットを購入して上映館へ入ると割と席は埋まっている。指定した席へ向かおうとすると気がついた。チケット購入時、自動券売機の画面の見方を間違えており、席がかなり前だった事に。しょうがない。

上映時間が近づくと人が増えてきた。客層は初老のご夫婦から小学生グループまで老若男女問わず幅広い層が集っている。予告が流れている間は割とガヤついていたので大丈夫か?と少し不安になった。僕は映画は出来るだけ静かに観たいのだ。しかし、そんな不安は杞憂に終わり、いざ上映が始まると客席はすっと静かになった。

いよいよ始まる映画。映画前半は、数枚のスチール写真とポスタービジュアルから想像していたのと近い内容が進んでいった。所々にある何とも言い難い独特の間に笑いを噛み殺し、色々な意味で緊張感を持ちながら進んでいくストーリー。

途中、映画がターニングポイントを迎えてからは客席の所々からクスクスと少しづつ笑い声が聞こえてくるようになり始める。その笑い声は物語が後半に入ると大きな笑いとなり、いたるところで爆笑が巻き起こっている。僕も堪えることが出来ず普通に笑ってしまっている。映画館でこれだけ笑い声を聞いたのは初めてかもしれない。あれ?自分は静かに観たかったのでは?

笑いの構造としてよく「緊張と緩和」という言葉が使われるが、この作品は見事にそれが構築されていた。映画が後半に入り、序盤の独特な緊張感から解放される。まるで答え合わせのように伏線の回収が次々と行われていくと大きな緩和が生まれる。最初の違和感からの解放により僕たち観客は安心をして心から大笑いする。なんて素敵なんだろう。笑いながら映画を観るのが楽しい。

映画が終盤に差し掛かった時、爆笑しながら観ていた僕の目からは涙が溢れていた。全く自分では感動している自覚はないのに、涙がどんどんと流れていた。目薬なんか使っていない。

僕はもともと泣き虫な所があり、映画・小説・漫画・音楽など様々な作品に触れては直ぐに泣いてしまう。そんな時はいつも感動して泣いてしまっている自覚があるのだが、今回は全くそんなつもりはなかった。こんな事は初めてだ。なぜだろう?という思いが頭の片隅にある状態で映画のクライマックスを観ていると気がついた。僕はこの作品の情熱とクリエイティビティに感動をしている。

自分もこんな仕事をしたい。こんな情熱が詰まった作品を作ってみたい。という羨ましさ。そして、大きな組織が手がけた訳ではない、小さな集団が生み出した素晴らしい作品がしっかりと世の中に評価されている。これが物事のシンプルで美しい在り方じゃないんだろうか。僕はこの状況に感動をしていた。

館内が笑いで包まれる中、涙を流していることが少し気恥ずかしくなりこっそりと涙を拭った。

個人的に最も印象に残ったシーンがある。最後の最後、ある人物が紙コップに入った水を素早く2杯飲み干すのだが、そこのシーンのあまりの格好良さにしびれた。プロフェッショナルの格好良さ。映画の終わりに、この水のカットを初めとした一連の映像を入れた事こそが最も大きなメッセージだったのではと僕は感じた。

本当に2回目をすぐにでも観に行きたい映画なので、出来ればリピート鑑賞をしようかと考えている。今度は間違えずに少し後ろの席から観られればいいなと思う。

#エッセイ #コラム #カメラを止めるな #映画

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