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政治家に話を聞いてみよう!~ 小田原潔衆議院議員編 No.2 ~

 前半戦に引き続き、「政治家に話を聞いてみよう!~小田原潔衆議院議員編~」の模様をお届けします。後半戦では、小田原さんの目指す社会像について伺いました。

外交・防衛

 沖縄返還を大きなきっかけとして政治家になった小田原さん。特に思い入れを持っていらっしゃる政策の一つが外交・防衛だ。

小田原さん 国会議員の仕事の一つが、国民に尊厳と希望を与えること。例えば、僕がどうしてもやりたい仕事の一つに、国連の安全保障理事会の常任理事になることがあります。我が国が国連に入ってほぼ70年間、世界で第2位の拠出金を払い続けているのに、安保理の常任理事国に入っていないというのは、第2位の大株主が議決権を持っていないのと同じくらい、ひどい扱いだと思います。日本が国際社会の中で果たせる役割っていうのを、もっと存分に果たすことが出来るようにする。そのことで、あたかもワールドカップで日本がベスト4に入るとか、日本人選手がオリンピックで金メダルを取る、っていうのと同じくらい、私たち同胞の心を高揚させるし、日本人でいることの誇りを守ることが出来ると思うんです。それから、国連憲章というものがあるのですが、その国連憲章の53条と107条に、敵国条項っていうものがあって、そこに我が国は国連の敵だって書いてある。というのも、国際連合っていうものは、日本人の大人たちが配慮してつけた和訳で、United Nationsって言うのは、連合国っていう意味なんだよね。要するに、私たちの祖先が、第二次世界大戦で戦った相手がUnited Nations なんです。
 我々はサンフランシスコ講和条約に調印して、国際社会の一員になって主権も取り戻しているから、United Nations の敵だというのは、そもそも実態に合っていないのだけれど、主に常任理事国のうち2か国が反対していて、この条項がなかなか改正できないという状態が続いています。
 僕はこういった不当な扱いが国際社会の常識であり続けることはないと信じているから、これも直したいと思っています。

環境問題

 次に我々若者の中でも関心の高い環境問題について小田原さんに伺った。

小田原さん 地球の温暖化、つまりCO₂の増加、海洋プラスチックなどのプラスチックごみ問題、あといま、宇宙ゴミっていうのがあるんだよね。それから一般的な環境破壊、アマゾンとか東南アジアの森林がどんどん伐採されていく問題。これらはみんなおんなじ動機と、おんなじ状況が作っていると思います。
 要するに、世の中の人が、俺一人ならいいだろう、あいつもやってるじゃないか、という感情と、競争に負けたくないっていう感情だけで動いている。将来の皆さんから様々なものを借りているという感覚が無いから、そういうことをしてしまうんだと思います。
 もう一つ難しいのが、日本人は結構まじめで、行儀がいいんです。たとえば、CO₂を減らすといっても、現在日本が放出しているCO₂のうち家庭から出るのは全体の40%未満。なので皆さんも心掛けてくださっていると思うけど、本当に減らそうと思ったら、重化学工業の生産高を落とさなきゃいけない。特に、僕は昔、日本製鉄の君津とか、鹿島とかに実際に行きました。鉄って酸化鉄に炭素を吹きかけて加熱して、酸素と炭素を飛ばして鉄にするんだけど、製造技術が非常に精緻で、化学式の重さ通りにしか物質が発生しないんです。出来上がった鉄の純度はものすごく高い。だから、精錬技術を高めればCO₂の排出量が減るって、そういう問題じゃないんです。もうぎりぎりまで、科学的に効率の良い生産技術なんです。そうすると、日本に更にCO₂を減らせっていうことは、鉄を作るなっていうことにほぼ等しいの。CO₂をがばがば出しているのはインドとか中国、ブラジルとか、まだ50年前の高炉を使っているところが多い。日本の技術を提供すれば、CO₂が少しは減るでしょう。いずれにしろわが国だけが行儀良くしていても環境問題は解決しないんですよ。
 全世界の人たちが協力して初めて、CO₂も減るし、プラスチックごみも減るし、森林伐採も少しは減ると思うの。だけど、一方で格差の問題がある。先進国はすでに裕福になっているからいいけれど、後進国はこれから豊かになる権利があるはずだから、鉄を作らせて、プラスチックを作らせて、建物を建てさせてと主張するわけです。
 したがって、すぐに解決することじゃないわけ。でも解決の方向に向けていかなければいけない。だからこそ日本は国際社会で強い発言力を持つべきなんだと思います。実際に、僕はこの仕事をしていても、日本人や日本政府程、わがままじゃなくて、行儀が良くて、いろんな意味で清潔で、民主主義を重んじる参加者はいないと感じています。なのでこの問題は、もっともっと日本が国際社会で発言力を持ち、その応分の敬意が、国際社会の意思決定にきちんと反映させられるようにする、という事から描いていかなくてはならない、とてつもなく大きな絵だと思います。

 小田原さんは、環境問題よりも先に私たちが直面する大きな課題があるという。それはデータや、生体認証がもたらす、人間への大きな挑戦だ。


小田原さん 僕たちは、データと、生体認証がもたらす、人間への大きな大きな挑戦に、多分5年から10年で直面する。AIとか、データ分析とか、生体認証とかドローンとか、自動運転、フィンテック、それらはみんな、西側諸国で開発されたものなのにもかかわらず、皮肉なことに実用段階に行くと、中国とか北朝鮮とかの方が、親和性が高い。中国には1億3000万台の監視カメラがあって、3年後には5億台にする、って言っている。顔認証機能がついてるから、13億人の国民が今どこにいて何をして、誰と待ち合わせしてて、どういうツイートしてて、いくらで何のお金を誰にいつ払ったか、というのを、リアルタイムで把握することができるようになっています。
 ただ、それですめばいいけれど、技術が進むと人間は遺伝子組み換え人間のようなものをだんだん作り出すようになると思うんです。実際に成功したという事例が報道されていますよね。これがまた難しくて、僕も同じ気持ちだけど、世の中のお母さんの中には、遺伝子組み換えの大豆は絶対食べたくないっていう人が多いよね。それは、食べても今のところ害はないように見えるんだけど、どうなるかわからない。だけど、おそらく遺伝子組み換えで生まれた人も、プライバシーは保護されて、恋をして結婚して子供を作るかもしれないよね。その人たちの人権は尊重されるべきだからきっとそうなるでしょう。遺伝子組み換え大豆はあれだけ嫌がっていても、遺伝子組み換え人間は全然わかんないっていう世界がきっと来てしまう。日本ではすぐには起こらないけど、国際結婚した相手が実は遺伝子組み換えでした、っていうことが出てくるかもしれない。それに、今はゲノムの解析を一生懸命していますけど、解析が終わって上書きしたり書き直したりできるようになるかもしれないよね。そうすると、めちゃくちゃ足が速い人とか、スタイルがいい人とかそういう人が作られるようになってしまうかもしれない。そういう風になってくと、本当に生命って何なのかって話になりますよね。もっと言うと、13歳の時にあこがれの女の子の髪の毛落ちてるの拾って、将来とっても安く手に入る培養キットが普及して、自分の欲望のままに、もてあそぶためだけの女の子を、作ってしまうってことも出来るかもしてない。
 そういった、道徳的なデータと生体認証、再生医療の使い方を、どこで線引きするか、っていう問題に、環境問題よりも先に直面すると思います。

ジェンダーやマイノリティーと政治

 アンケートの中で関心度が高かった社会問題の中に、LGBTQなど社会的マイノリティーの人権保障があった。LGBTQなどの性的少数者に限らず、男女間においても日本には依然として大きなギャップがあることが指摘されている。世界経済フォーラムが発表するジェンダーギャップ指数では149ヶ国中121位と極めて低い順位をつけられている。特に政治分野においての女性の進出の遅れは特に指摘されている。この点について小田原さんにお考えを伺った。

小田原さん もともと政治の大きな役割に、市場の取引では救われないものに光を当てる、というものがあります。先ほどの環境問題もそうです。正当な商取引で出来上がったものの、負のコストをだれも見てこなかったから、政治が何とかしないといけない、って思います。
 LGBTと、女性っていうのって、どういう理由で虐げられているのかが1つ1つ違いますよね。つまり、差別というものは千差万別なんですよ。LGBTの人たちがなぜ社会の中で居心地が悪いのか、という理由と、女性がなぜ活躍できないか、っていう理由は全く別の事象なんだよね。日本社会は新入りと異質者には冷たいんです。それは100年たっても200年たっても変わらない。例えば外国人労働者に対して、今はどちらかというとコロナに感染が拡大するから、外国人締め出せ、っていう方がむしろ政治家としては受けがいいですよね。だけど、一個人としては、そんなに外国人を、奴隷みたいにこき使って、3年たったら帰せ、女房子供は連れてくるなというような横暴なことをしていいんだろうか、っていう思いはやっぱりあるんですよね。差別は人の心の中にあるって言うことを、しかも全員の心の中にあるって言うことを、前提に置いたうえで、色々なご意見を聞くしかないと思います。
 でもその中には、聞ける意見と聞けない意見があると思います。例えば同性婚を認めてくれっていう人がいる一方で、絶対だめっていう人もいるよね。この二つの意見は全くかみ合わないわけ。なので、今は自治体レベルでパートナーシップ条例を制定して、一緒に不動産物件を、法律上夫婦じゃない男性2人とか女性2人で借りてもいいですよ、とか、病院に入って危篤になった時の第一連絡者をパートナーにしてもいいですよ、というようなことを実現する。そういう出来るところをちょっとずつ、ちょっとずつやっている、っていうのが現状だと思います。

教育政策

 我々若者に深くかかわるテーマの1つである教育政策。小田原さんはご自身の政策の中でも教育について触れていらっしゃる。小田原さんはこれからの教育についてどのようにお考えか、聞かせていただいた。

小田原さん 50年前、アメリカから帰ってきて、小学校5年生の教育レベルの高さに驚いて、とっても劣等感を持った記憶があるんです。その反省で、自分の息子には小学校4年生から大手の塾に行かせました。それなりに満足のいく人生を歩んでるんじゃないかと思いますが、私の息子は多分、大きな石をどかしたらその下にダンゴムシがいるっていうようなこととかを知らないと思うのね。霜柱を踏んだこともないと思うの。それで、本当にこういう育て方をしてよかったんだろうか、という自責の念を持ったこともあります。それでもっと一人一人の子供が伸び伸びと育つ、そういう社会にしなければいけないんじゃないか、っていう風に思っています。
 ただ、教育・子育てというのもこれまた千差万別です。今いった、子供をいつ塾に行かせるか、といったような次元の低いことではなく、子育てはこうあるべきだ、とか、科目ってこうあるべきだ、っていう議論は、こうあるべきなんて教育にはそもそもないんだっていう議論も含めて、ほぼ、国会議員の数だけ、主義主張があります。ただ僕は、どうしても、機会の均等だけは社会としても国としても達成しなくてはいけないと思う。というのも、子供にとって親は選べないでしょ。だから、親が学校に行かなくてもいいと考えていたり、お金が無くて塾に行かせられないとか、そういった理由で本来だったら伸びたかもしれない才能を伸ばすことができないという状況は変えなくてはいけない。しかもそうなると子供のころに、社会に対する恨みを持つでしょ。全ての人が、誰かに愛されているっていう実感を持って育ってほしい、というのが僕の思いです。同時に、必ずしも褒められた親じゃないっていう家庭に生まれた子供たちにも、失敗のモデルはないって言うことをわかって欲しいです。それがわかるような社会にしたい。我が国は努力が報われやすい国だから、かならず成功の種は見つかるはず。そのことを幼い頃から教えてあげる、そういう世の中にしたいと、思っています。
 貧困は連鎖しやすいですし、かといって裕福な人がずーっと世代を超えて裕福であり続けるかって言うのは別問題ですけど、貧困家庭から這い出る、って言うのはそんなに簡単じゃないっていうのは事実だと思います。特に自民党政権になってから、中学校、高校になっても勉強するのが好きだっていうか、知性を刺激することに喜びを感じる、っていう人間に育つ、とっても大事な原因が幼児教育だという事がわかって、重視するようになっています。だから、幼児教育の無償化とか、当初は機会均等っていう方に目が行って、高等学校の授業料の無償化、って言うのを先にやったんですが、今は、その根本は幼児教育にあるっていう助言を重視していて、幼児教育を充実するようにシフトしていると思います。高校の授業料が払えなくなって、退学しなければいけないっていうようなことも、何とかして救いたいと思っています。

 また現在の日本では、高学歴で博士号を習得していても活躍の機会が得られない人が沢山いる。いわゆるポスト・ドクター問題である。その背景にはやはり国が年々大学への運営交付金などを減らしていることなどがあるのではないか、との参加者の質問に対して、小田原さんは以下のように答えてくださった。

小田原さん 僕も心を痛めているところです。非常に僕自身が合点がいかないのは、大学院まで進まれている人ってほとんどの人が、学業成績優秀な人なのに、どうして秀才が、貧乏になる心配をしなくてはいけないのか、という事です。これは先程のマーケットや市場で救えない部分ができているからだと思います。さっき、心の興味を大事にして且つ、進路という現実的なところも両方大事にした方がいい、って申し上げたんだけど、それも、それもつき詰めるとまさにこの話になるんですね。おひとりおひとりが、なぜ科学の道に進んだのか、また、その研究テーマを選んだ理由は何なのか、その研究の成果を通じて、世の中に何を訴えたいのか。正しいものが見つかった、というのも大きな研究の成果だし、その結果、何かの暮らしの役に立つ、というのも成果だと思うけど、その研究の先に、世の中とのかかわりをどういう風にしていくか、という発信も大事ですね。中には、一生研究するけど、何かをつかめずに研究生活をおえる人もいると思うんですけれど、そういう人たちにも、手厚く研究生活を続けてもらうことが大事なんだ、と、日本人のノーベル賞受賞者は口をそろえて言うでしょ。そのすそ野はとっても大事だと思います。科研費(科学研究費)がすごく少ないって言うのは、僕も8年前からよく聞いています。いま、自民党の中では特に基礎研究について軽視しないで予算をつけろ、っていう機運が盛り上がっています。

若者と政治

若者の政治参加は大きな課題だ。僕自身カラフルデモクラシーで活動をする中でその大切さと難しさをひしひしと感じている。同世代からは度々こんな声が聞こえてくる。「色々問題があるのはよくわかる。でもそれを自分でアクションを起こして変えていこうと思うかというとそうは思わない。世の中悪くなってしまったら困るけど、それが世の中の流れなら自分は受け入れるしかないかな」。そんな若者に向けて、政治の現場から世の中をより良い方向に向けていこうとされている小田原さんにメッセージをいただいた。

小田原さん 私自身は、毎日駅に立ったり、地域のお祭りに必ず顔を出したり、あと、今日のように対話の機会を作ってくださいって言われたら、先ず断らずに、こういう機会を作るようにしています。私たち1人1人の暮らしと、私たち自らが選んだ代表を通してやってもらっている政治というものは、繋がっているっていう実感を味わってほしい。選挙の時だけ、小学校の投票所に行ってポスターを見て、この人顔がいいからこの人に入れる、とか、自民党だからこの人に入れる、とか、それだけの繋がりはあまりにももったいない。みんなの代表なんですから。僕の感覚では、5人有権者が集まるから、これは高校生でもいいんですよ。来てくれませんか、って言ったら、僕は行く。市議会議員も多分来ると思う。まず、任意の5人でいいから今お茶飲んで5人で話そうっていう企画をしているんだけれども、だれだれ議員、ちょっと顔出してくれませんか?って声を掛けたら、2人に1人は行きます、っていうと思う。なので、議員には躊躇せずに声をかけてみることをお勧めします。
 70代80代の人たちの投票率は極めて高く、意見を言ってくれるから、割と、その意見が通りやすいですよね。若い人たちは、政治に関心が無いとは、僕全然思わないです。関心はあるけど、ネットで投票できないんだったら、今日は遊びに行こう、というような選択をしてしまうのではないかな。

 実際に小田原さんは非常に丁寧に、私たちの聞きたいことに答えてくれた。終了後、参加者からも普段政治家を身近に感じる機会がなかなかないが、今回の企画に参加して「政治家って僕たちとこんな風にかかわってくれるんだと思った」といった声が寄せられた。

 今回の企画が、政治家と若者を近づける1つのきっかけになったらよいなと思う。

 小田原潔衆議院議員、ありがとうございました!

                   (記事作成:松浦 薫・黒野 優喜)

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