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大学生よ、卒論をあなどることなかれ〜研究で得たチカラは社会でも役に立ちます〜

大学の後輩たちが卒論執筆に勤しんでいるのを見て、わたしも大学4年の今の時期は、半泣きで卒論を書いていたなあと思い出します。当時は卒論を書くのがとても苦しかったし、一刻も早く終わらせたくて仕方ありませんでした。ただ、そんな苦しかった卒論執筆を通して学んだことは、社会に出てからも役に立っていると感じています。

卒論執筆によって身につくスキルといったら、論理的思考力・情報分析力・文章力などが思い浮かぶのではないでしょうか? もちろん、それらの力は身につきますが、このページでは、「実際にビジネスの現場」で役に立っていることを「わたしなりの視点」で、わたしのエピソードを交えながら紹介しようと思います。

これを読んだら少しは「卒論、がんばってみようかな」という気持ちになると思うので、ぜひ最後まで読んでいただけたら幸いです!

卒論執筆で学んだこと・身についたスキルのなかでも、特に役に立っているなと思うことを7つ厳選しました。少し長くなりますが、一つひとつ説明していきます。


1 根拠へのこだわり

卒論もビジネスも共通して「客観性」が大切だと思います。個人的には、主観がダメで客観が絶対だなんては思いませんし、主観も客観もどちらも大切だと思っています。しかし、卒論もビジネスも客観性が求めれるものであって、根拠を示すことが必須であることは間違いないかと思います。

卒論は「客観性」が命。卒論で「なんとなくそう思ったから」なんて書く人はいないはずです。論文では根拠のない主張は認められないものなのです。
わたしの大学時代の先生は、「論文っていうのは、思っている以上に自分の考えを書けないもの。論文の大部分を占めるのは、その主張を成立させるための論拠。論拠がそろって初めて自分の考えを書くことができる」と話していました。

ビジネスでもこれと同じことがいえます。「根拠はないけど、売れそうだと思ったのでこれを企画しました」「なんとなくだけど、お客さまの要望に合いそうなので、こちらを提案します」なんて言われたら、相手は不快に思うでしょう(笑)

根拠があるかどうかは、その主張が信頼できるものかどうかにつながります。根拠がそろってはじめて自分の考えを主張できるのであり、根拠がそろってはじめて相手に信頼してもらえるのです。

2 言葉の定義へのこだわり

論文指導のときに「この言葉の定義って、なんですか?」「論文の中できちんと定義を説明してください」と何度言われたことでしょう・・・。しかし、言葉の定義にこだわることはビジネスの現場で大いに役立っています。
わたしはビジネスパーソン向けの学びの教材をつくる仕事をしています。たとえば、クライアントが「ハラスメント防止の教育をしたい」と依頼をしてきたとしましょう。もしわたしが営業担当者だったら、次のような質問を投げかけると思います。

「どのような背景でハラスメント防止教育をしようとお考えになったのでしょうか? 『ハラスメント』は、パワハラ、セクハラ、マタハラなど、どのタイプを思い浮かべていらっしゃいますか? また、研修、DVD教材による学習、テキスト学習、スマホで視聴するeラーニングなどの形式がございますが、どのようなものをご希望でしょうか?」

ほかにも聞くことがあるかもしれませんが、このように、「ハラスメント」や「教育(方法)」の定義をあきらかにしないと、相手のニーズに合った提案はできません。

今はわたしの仕事の例で紹介しましたが、ほかの仕事でも同じです。たとえば、不動産の仕事。お客さまに「広い部屋を探している」と言われたとしましょう。営業パーソンが思っている「広い」とお客さまの「広い」に大きな差があったら、的外れな部屋を提案してしまうかもしれません。

前に、営業部門の先輩から「お客さまと同じ景色を見ないと、適切な提案はできない。相手が発した言葉の定義まで、こまかくヒヤリングすることが大切」と言われたことがあります。それからわたしは相手と同じ景色を見ることを意識するようになりました。

言葉の定義をあきらかにすると、相手の見ている景色と自分の見ている景色が一致してくると思います。そして、同じ景色を見ていないと、話が噛み合わず、アンジャッシュのコントみたいになってしまうかもしれません(笑)言葉の定義にこだわることは大切です。

また、言葉の定義にこだわることは、チームづくりにも役に立つと思っています。わたしの部署のミッションには「いい会社づくり」という言葉が含まれていますが、「いい会社とは何か」について、わたしの部署では日々話し合うようにしています。利益を出している会社、社会に貢献している会社、従業員を大切にする会社・・・。人によって「いい会社」の定義は異なるし、時代によっても定義は変わってくるかもしれません。そのため、日々チーム全体で対話をし、ミッションの定義をすり合わせる必要があるのです。

どんな会社・部署・チームにも掲げるミッションがあります。しかし、メンバーそれぞれの言葉の捉え方が異なると、目指す方向性が変わってしまうこともあるでしょう。ミッションは掲げて終わりではなく、常にその言葉の定義について考え続け、チームメンバーと共有しておく必要があるのではないでしょうか。

卒論で学んだ「言葉の定義にこだわる」ことは、ビジネスでも役に立っているのです。

3 will, can, must が道しるべに

卒論の研究テーマを考えるとき、「will, can, must」が重なることをテーマにするように言われていました。研究における「will, can, must」とは次のとおりです。
・will 自分が興味がある
・can 与えられた期間でできる
・must 社会的に意義がある

こちらの図は立教大学の舘野泰一先生からお借りしました。ありがとうございます。

「社会的に意義があるし、できるけど、やりたくない」だと、がんばれない。「興味はすごくあるし、できるけど、自己満足的」だと、研究する意味がない(研究とは社会に何らかの新しい知見を提供するものだから)。「興味はすごくあるし、社会的意義もあるけど、できない」ものだと、研究として成り立たない。3つがそろうテーマを見つけることが大切です。

この「will, can, must」は、就職活動のときに役に立つとわたしは思います。就職活動をする大学生の中には、やりたいことがない、何をしたらいいかわからないと悩んでる人もいるのではないでしょうか? そんなときに道しるべとなるのが「will, can, must」です。

わたしは就活における「will, can, must」を次のように考えています。
・will 自分がやりたい仕事、興味がある仕事
・can 自分のスキルを活かせる仕事、今からでも必要なスキルを身につけられる仕事
・must 社会的に意義のある仕事、社会にニーズのある仕事

就職で悩んでいる人は、まずこの「will, can, must」で考えてみてはいかがでしょうか?

そして、この考え方は社会に出てからも道しるべになるのではないかと思います。たとえば、わたしは商品企画にこの考え方を使っています。

・will 自分がつくりたい商品、提供したいと思う商品
・can 自社のリソースや強みを活かしてできる商品
・must 社会的に意義のある商品、ニーズのある商品

こんな感じで考えてみたら、いいアイデアが思いつくかもしれません。

実際に、わたしは自分が企画した商品に対して
「これはほんとうに自分のつくりたいものか?」
「自社の今のリソースでつくれるものか?」
「社会が求めているものか?」

と問いかけるようにしています。

アイデアを完全にゼロから作り出すのは結構むずかしいものです。こういったフレームワークを使ってみると、何かヒントをつかめるのではないでしょうか!

このように、卒論執筆のときに教わった「will, can, must」が、今ではものを考えるときの道しるべになっています。ゼロから急に考え出すことはむずかしくても「will, can, must」を頼りにすれば、何かいい考えが思い浮かんでくると思います。おすすめです。

4 締切を守ることの大切さ

卒論執筆からは、締め切りに遅れることの怖さも学びました(笑)
わたしの大学は卒論を出さないと卒業に必要な単位がもらえない。すなわち、卒業ができないため、なんとしてでも出す必要がありました。そして、大学は一人ひとりの卒論提出をやさしく待ちつづけてはくれません。小学校・中学校・高校でも課題に締切は設けられていましたが、締切を守れず、怒られてしまうこともがあっても、なんだかんだやり過ごせてしまっていたし、なんとか進級できていたのではないでしょうか。しかし、卒論執筆はそこまで甘くはないです。1分でも提出締切を過ぎてしまったら受理されず、単位はもらえません。卒業ができなくなってしまうのです。

これはビジネスでも一緒だと思います。たとえば、お客さまから商品の発注を受けた際、決められた納期を過ぎて納品することは基本的には許されません。お客さまにもお客さまがいます。自分が納期に遅れることで、お客さまだけでく、お客さまのお客さまに迷惑をかけてしまうかもしれません。

たとえ、一度は待ってくれたとしても、納期を守れない人や会社は信用できないので、それ以降は別の会社に仕事をお願いすることになるかもしれません。

「締切を守る」なんてあたり前のことではありますが、そのあたり前のルールの重要性や厳しさを卒論は教えてくれました。

5 一人で計画を立てて実行する力

締切を守ることの大切さに関連しますが、締切から逆算し、計画的に作業を進める力も身についたと思います。

卒論は、人によって前後するかもせれませんが、大体は次のような過程で進めます。

これらのことを、卒論の提出日から逆算して計画を立て、実行していく必要があります。かならずしも計画どおりに進むとは限りませんが、無計画で進めてしまうと提出ギリギリになって苦労する姿が想像できるし、卒論の質も担保できません。

これはビジネスでも一緒です。たとえば、上司から資料作成を依頼された場合。まずは依頼内容をしっかり理解して、つくる資料の完成イメージをあきらかにし、そのあと、必要な作業を洗い出し、作業スケジュールを決め、実行する。このように、つくるものをイメージし、必要な作業を洗い出して、締切から逆算して計画を立て、計画どおりに実行し、締切までに仕上げるというプロセスは卒論とまったく一緒ではないでしょうか?
卒論必修で学んだ「一人で計画を立てて実行する力」は社会に出てからも役に立つスキルだといえるのです。

6 フィードバックを求める力

先生からフィードバックをもらった分だけ、卒論の質はよくなると思います。先生によく相談していた人の論文は、いい論文に仕上がっていたような印象がありました。
仕事でも積極的にフィードバックを求める人は、その分、成長も早いのではないでしょうか。ちなみに、フィードバックを求めることを「フィードバック探索行動」「フィードバックシーキング」といいますが、ある研究では、「有能なビジネスパーソンは自らフィードバックを求める傾向が強い」という結果が出ています。
https://hrd.php.co.jp/management/articles/post-1278.php)

つまり、「フィールドバックもらい上手は、成長上手」といえるのです!

しかしながら、フィードバックを求めることは答えを求めることではないので注意! 自分なりに考え、考えたことを実行してみて、そのうえで先生や上司にアドバイスを求めることが大切だと思います。
先生が、上司が、答えを教えてくれる・・・なんて思ってはいけません。自分の卒論・自分の仕事に責任をもって取り組むべし!

7 自分と対話する時間

最後に、これはスキルではありませんが、卒論執筆は自分と対話する大切な時間だったと思っています。うまく言語化できるかわかりませんが、説明していきます。

当時から人材開発の仕事につきたいと思っていたわたしは、「社会人の学び」を卒論のテーマにすることを決めました。テーマを決めたら終わりではなく、具体的にどのような研究にするのかを「研究計画書」というものにまとめれなければならないのですが、先生にはよく「君が研究したいことは、ほんとうにそれ?」という問いを投げかけられていました。何度も何度も自分のやりたいテーマについて詰められ、自分が納得いくまで「研究計画書」を書き直しました。卒論を執筆する時間は、自分と深く対話をしました。

「社会人の学びといっても、わたしがやりたいことって具体的になんなんだろう」
「わたしが主張したいことって、ほんとうにこれなのかな」
「わたしがやりたいと思っていることは、社会に求められているのかな」

このようなことを何度も自分に問いつづけました。しかも、わたしは卒論のテーマが自分のやりたい仕事と直結するものだったので、「わたしは人材開発の仕事を通して何をしたいのか。社会に何を提供したいのか」という問いにまで発展し、もはや卒論という枠を飛び越えていました(笑)

でも、そうやって自分に問いを投げかけて、答えがでるまで問いつづけた時間は、意味のあるものだったと思っています。卒論執筆で自分とじっくり対話をしたことで、わたしがほんとうにやりたいことを明確にすることができましたし、卒論が終わっても、わたしはこのテーマについて生涯学びつづける必要があるなと思うことができました。

これに関しては具体的なスキルではないですが、自分と対話をする時間は、ビジネスというより人生において大事なことだと思います。大学生のみなさんも、卒論執筆を通して自分と対話し、自分がほんとうにやりたいことや生涯の自分のテーマ、ミッションなんかを見つけてくれればいいなと思っています。

おわりに

卒論指導を受けている大学生は、きっと大学から「卒論執筆には意義があります。論理的思考力・情報分析力・文章力・・・などが身につき、それらは社会に出ても役に立ちます」というようなことを言われて、しぶしぶ卒論を書いているのではないでしょうか?

でも、大学生からしたら、卒論執筆の経験が社会でどう役に立つのか、イマイチぴんと来ないですよね。わたしも最初は「卒論って、めんどうくさいなあ。卒業に必要だから書くけど、意味あるのかな」なんて思っていたときがありました。

しかし、卒論を通して非常に多くの学びがありましたし、それは社会に出てからも役に立っています。

このページが卒論をがんばっている大学生のみなさんの目にとまり、「卒論で身につく力って、社会のこんな場面で役に立っているんだ」と前向きに考えるきっかけになれば幸いです。

「卒業のために書かされた論文」ではなく、「自分のために書いた価値のある論文」にしましょう!

それでは、大学生のみなさん、楽しい(そして苦しい)卒論執筆の旅を!

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