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【感想】「今夜、ロマンス劇場で」

ミュージカル・キネマ『今夜、ロマンス劇場で』
原作/映画「今夜、ロマンス劇場で」(c)2018 フジテレビジョン ホリプロ 電通 KDDI
脚本・演出/小柳 奈穂子

東京宝塚劇場公演を2回観劇しました。
(寝かせているうちに3回目観劇を済ませてしまいました…)
あまりにも素晴らしいお芝居に浸り、気持ちが高揚しているので感想を綴りたいと思います。
“ムラ”の感想は薄目に、映画版は見ないほうがいいとも事前に聞いていたので全くの初見で観ました。

以下は、いつもながらネタバレありの感想を綴りたいと思います。ご了承ください。






新トップコンビ月城かなとさん、海乃美月さんのお披露目公演で、先行画像も美形な二人が既に世界観を構築しており完璧なポスターでした。
こうして見ると、映画のフライヤーにかなり忠実に寄せているのですね。
原作があるから確実に面白いという訳ではなく、過去の原作付の舞台を見ても改変でどうとでも転びやすい印象です。
そのなかで、この「ロマ劇」が大成功したことのひとつは演出の小柳奈穂子女史が原作に対して愛やリスペクトが確りあることが受け手にも伝わっていることかと思います。
パンフレットに企画・プロデュースの方が感想を寄稿されていますが、「見つけてくれて、ありがとう」の言葉がストレートに胸に響きました。






ストーリーの感想

映画を愛して一生懸命に生きる普通の男性が主人公。スクリーン越しに惹かれたヒロインが映画から飛び出し騒動を起こしながらもお互いの愛情を深めていくストーリー
設定はファンタジーだけれども、感情的に共感することも多くて心が温かくなる作品でした。
悪い人もいない。キャラクターがそれぞれにコミカルで愛らしくて魅力的でした。
「見つけてくれて、ありがとう」という言葉は誰しもが心にいる推しから言われたらたまらないセリフですが、返歌は「存在してくれてありがとう」に尽きるなと思います。
月組の皆さんが演技が細かいので、群像でいてもただ存在しているというのではなく、その人生を生きている感じがして目が向きすぎてしまう。お祭りの場面や俊藤さんの取材の場面とか。それぞれにこだわって役作りをしているんだなって思いました。
また、演出面で一番のお気に入りは映画のモノクロから、カラフルに色づき登場人物がみなそれぞれに笑顔で誰とも仲良くやり取りをしている姿に非常に多幸感を覚えるのでした。

ここからは、蛇足の自分語りなのですが
もともと涙腺が弱い性質ではあるのだけど、誰かの退団とかという要素を抜いて過去一番泣いたのはこの作品かもしれません。
実は、初回は「あれ、言われているほど泣けないかも」と最後の最後まで思っていたけれどやはり二人が最後に触れ合う場面で落涙しました。
それから、回を重ねるごとにビー玉大の涙を落しています笑
どうして、こんなに琴線に触れるのだろうと自問自答すると
過去に悪性腫瘍が見つかり手術を経て以降から、
いつか来るであろう人生の終末期に対しての不安や恐怖が常にあって
その恐怖感というのは、なかなか拭えるものではありません。
健司の最期に、それまで連れ添った美雪

が傍らにおり触れ合うことはできなかったけれど幸せな人生であったと感じさせるラストは胸に込み上げてくるものがあります。
それは、一言では説明するのは難しいのだけど。


キャストの感想

  • 牧野健司(月城 かなと)
    麗しい月城さんが、映画を愛する青年で市井の人を演じる説得力に彼女の演技力を感じました。
    顔もいいけれども、ややくぐもったしかし口跡のよい穏やかなトーンでのセリフ回しも好きでした。健司は普通の人なんだけど周囲は普通じゃない人たちでそれに律儀に突っ込みをいれるところがなんだか月城さんぽいイメージです。
    ちょっとした表情にも遊び心があり、朴訥なだけではない味わいも感じます。それこそが、ファンタジーの登場人物のなかにある“普通の人”の特徴なのかなとも思いました。
    月城さんの繊細なお芝居がこれからも楽しみです。晩年、ベッドに横たわるお姿すら美しいのだもの。それだけで涙が出ました。

  • 美雪(海乃 美月)
    月城さんに負けず劣らずの美貌の海乃さん。映画の中のヒロインがぴったりでした。上品で育ちの良さが滲んでおられるのに、おとなしいお姫様というよりは、やんちゃでお転婆な姫様が非常に好感を持てました。何よりも運動神経が良い海乃さんの大立ち回りが毎度感心してしまう。また、お衣装を何度も変えられてもその度に心がときめく着こなし。スタイルが良くてほれぼれ。美雪は当たり役だと思いました。

  • 俊藤龍之介(鳳月 杏)
    これまで丹念に育まれてきた男役芸をこれでもか!と出し惜しみせずに魅せてくれる。出てくるたびにこれぞスターと言わんばかりに視線を奪われます。次は何をやってくれるのだろう?とわくわくしてしまう。
    鳳月さんが演じるとスターは単なる虚構ではなく、地に足のついた根っからのスターで少しのことにも動じない寛大さがありみなから愛される説得力が抜群でした。そして天から授かったビジュアルの良さも手伝って、足を組み替えるだけで様になるという。面白いシーンで笑えるんだけどやっぱり恰好いいからピエロにならないのは鳳月さんだからですよね。きっと、役者が違えば大やけどの役だと思う。

  • 本多正(光月 るう)
    光月さんはもうずるいよね笑 先日たまたまスカステでアルカディアを観ながら、そうだったこの人イケオジだったわ~と思い出すくらいに老け役上手。股関節と、膝関節が変形しているような歩き方とか上手い。何気に本多のお帽子とか緑色のベルトとか小物が好き。

  • ばあや(夏月 都)
    夏月さんの演技も安心する。キュートでユニークなばあやにほっこり。

  • 萩京子(白雪 さち花)
    この方も視線泥棒すぎる笑
    とにかく、濃い。でもきっといいひとなんだろうなって思わせる。昭和のゴージャス女優ってこういうイメージなのですが実際はよく分かってないです笑
    連獅子のさち花さん最高だった。あと、おみ足が折れそうなくらい細いの。腿とひざ下が同じ細さってすごい。

  • 清水大輔(夢奈 瑠音)
    スタイルの良さに毎回目を持っていかれるけれど、丁寧なお芝居も好き。清水役ではなくて、第16場Aで幻想として老年期を演じる夢奈さんの繊細な役作りがとてもよかった。

  • 狸吉(蓮 つかさ)
    美しさを封印して、コミカルな狸を演じるその役者魂にまず感動。初見では蓮さんだとわからないくらいビジュアルも作りこんでた。歌も踊りもうまいし、温かな狸吉のことがとっても好きになったのは蓮さんの力に依るものです。

  • 大蛇丸(暁 千星)
    この役って映画版にはないのですね。コミカルだけれども等身バランスも容姿も美しくて隣国の王子である説得力。
    ふすまから出てくる時も、映画の場面で戦っている時も本人は大真面目なのに可愛くて頬が緩みました。
    タンゴの場面では、声量がすごくて恰好よかった。どんどん上手になっていく暁さん。もうこれで月組が最後だなんてさみしい限りです。

  • 虎衛門(英 かおと)
    やんちゃで大柄で可愛かった。スカステで話していた裏設定で狸と鳩を食べるための道具を背中の袋に入れていると知ってから、背中を見るようになっちゃいました笑

  • 成瀬塔子(彩 みちる)
    雪組から、月組に組替えになった彩さん。違和感がなかったし、演技の月組で遜色がない彼女も演技の人だと改めて感心しました。

Twitterで呟いた所感がすべてなんだけど。これからの活躍がとても楽しみです。塔子は映画が好きで、自分の父親の会社をとても誇りに思っているからこそ映画を愛する健司に惹かれたんだろうなと説明されていないエピソードも想像ができて、彩さんの演技の賜物だなと思ったのでした。

  • 山中伸太郎(風間 柚乃)
    よくよく考えたら主人公と一緒でこの人も普通の人の役なんですよね。風間さんがやると何かやってくれそう感があるのに、普通のいい友達で(褒めてます)なんでも際物にしないところがやっぱり上手さなんだよな~って思いながらみていました。

  • 吉川天音(天紫 珠李)雨霧【大蛇丸の従者】(天紫 珠李)
    何だろう・・・・ひとつひとつは悪くないんだけど、どちらか一つの役に絞って欲しかったなあって思うんだけどそれは天紫さんの問題ではなく、配役の問題です。雨霧のアドリブが楽しかった。

  • 狭霧【大蛇丸の従者】(礼華 はる)
    従者役がはまっていて、無表情も面白みがあった笑
    彼女は体格の良さで目をひく。

  • 鳩三郎(柊木 絢斗)
    回を重ねるごとに、なんだか鳩三郎が強くなっていく笑
    しゃべることができない役をおいしく演じていて愛おしさしかなかった。というか、三獣士が好きすぎるのです。

セブンカラーズもとても可愛くって銀橋を使って歌い踊る様は、どこのアイドルコンサートにきてしまったのか全員可愛い…とぽわぽわとなりました。結愛かれんさんって可愛すぎませんか。写真の女役宝塚はきよら羽龍さんだったのですね、こちらも観たかったです。

実は残り前楽に行くことになっているので、これもまた楽しみです。
とても好きになった作品なのでこれからも愛でていきたい。





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