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「告発してくれてありがとう」 ダイハツ不正問題に豊田会長_現場社員へのお礼 内部統制の限界

こんにちは、コンプライアンスオフィサーの越田です。

ダイハツ不正問題で親会社のトヨタ会長への取材記事が配信されています。

記事中に

《ダイハツの滋賀工場を訪れ、従業員の前に立ち「この中に告発者がいらっしゃると思います。ほんとうに言ってくれてありがとう」と話したという》

そのコメントに対し、ツッコミが殺到しているとのことです

ごもっとも、というコメントもあるのですが

私は不正の現場に関わっていた・知っていた 一般従業員にとって「安心と勇気」を与える言葉だと思いました。



不正事件の第三者委員会からの報告書を見ると

・スケジュールが絶対的に優先
・当該部署(認証試験部門)の管理職の実務知識の低さ
・当該部署員が管理職に問題を伝えて指示を仰ごうとしても「で、どうするの?」との返答
・試験項目対応に必要な車両数が用意されていない

不正を認識している社員が社内の内部通報窓口に通報しても
・通報自体の揉み消し
・通報の犯人探しが優先

スケジュールありきの業務遂行が慣例化している上に、認証試験部門の管理職が認証試験実務(現場)の知識を持っていないことが記されています。
上司に報・連・相をしても、回答は無く現場の人間で対応(不正してでも試験をクリアしろ)せざるを得ない過去からの流れがあった
内部通報があっても対応せずに揉み消して、通報の犯人を探して更なる告発ができないように部門全体で方向づけをしていた事が読み取れます。

三十数年間不正が続いていたということは、認証試験部門の歴代役員や管理職は不正のことを知りながら(知らないふりをしながら)、会社に不正の隠蔽工作をし続けてきたのだと思います。

ダイハツは2016年に上場廃してトヨタの子会社となっています。
通常であればその時に、社内の管理体制を見直しトヨタの内部統制に合わせて社内管理体制を進めていきます。
その段階で過去の不正が発覚しなかったということは、部署ぐるみで過去データの偽装・隠蔽を行なったからではないでしょうか?

今回の不正は、外部(ダイハツ社外)の通報窓口への通報から発覚したものと報告書にも記載されています。
社外機関への告発により親会社が調査を始め、第三者委員会がその内容を把握したのでしょう。

内部統制システムには、限界というものがあります。
どんなに素晴らしい内部統制システムを構築しても
・合理的な補償の限界
・経営者による内部統制の無視
役職員による共謀
・非日常的な業務
などにより、内部統制の3つの目的_「業務」「財務報告」「関連法規の遵守」が損なわれていきます。

どんなに素晴らしいルールを作っても、経営者がそれを無視したり、役職員が共謀して不正を行った場合には、内部統制システムは無力化します。

事件があったとしても、課長と部長が口裏を合わせて虚偽報告するとほとんどが隠蔽できるでしょう。

本件も認証試験部門の管理職とその上司が現場からの報連相を無視し、無言の圧力でスケジュールを優先させ、正当に試験をクリアしたことにして(不正の存在さえ知らなかった形で)事務的処理を進めていたと考えられます。

部門内で共謀して、正しく認証試験をクリアしてきたとデータ捏造・偽装をして保存していけば、監査が入っても問題になることはないでしょう。
(粉飾決算の二重帳簿のようなものです)

現場の従業員は不正を自覚しながら、スケジュールに合わせて工程をいかにクリアしていくか工夫を重ねていたのでしょう。
不正するための工夫をしていた、その従業員の心中を考えるととても苦しいものがあります。

それらの従業員たちに対して、親会社(トヨタ)会長の「告発してくれてありがとう」は心に響いた言葉ではないでしょうか?

不正に対して声を上げることのできる従業員が多く存在する組織なら
時間がかかっても再建できるのではないかと思います。



読んでいただきありがとうございます。上場企業や大企業以外では定着していない「コンプライアンス」をわかりやすく伝えていきたいと思います。