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From Rain

From Rainとは

From Rainは、筆者である近藤碧が作曲したホルンとピアノのための楽曲。
曲中には様々な指示がある。しかしそれらは非常に抽象的で曖昧、かつ音楽用語には使われることがほぼないものばかりである。
その中で描かれている世界を文字にしてみた。

本編

〜雨〜


雨が降る。少しずつ、ポツポツと、気がついたら降っていた。
風が音を立てて近づく。木の葉に垂れる水が滴り、地面を打つ。
雨が強くなる中オオカミが吠える。それに応えるのか、大きい鳥も鳴く。
幾度となく風は吹き、木を優しく撫でる。その度に水は滴り落ちる。
風が吹いたり、雨が降ったり、そうして森は潤っていく。
雨が強くなってきた。どこからか歌が聞こえてくる。なんだか鹿が歌っているに聞こえる。
雨が止むと山に染みる。地面に染み込み、地下水となって流れる。
湧いていく水は川ととなっていく。

〜川〜

川は悠々と流れる。湧水から流れた水たちは集まり一つの流れになった。
時にぶつかり、流れが別れ、またどこかで出会う。
やがて別な川とも合流し、一つの流れを作る。
川幅が大きくなると流れは穏やかで優しいものになる。
日が暮れてきた。そのうち学校のチャイムが聞こえてくる。
それは夕方になって帰宅する時間であること示す。
そらは様々な色彩を伴いながら濃い青色、瑠璃色とか群青色とかになっていく。
遠くから船の汽笛が聞こえる。海が近いのかもしれない

〜海〜

穏やかでありながら力強く、水はうねり波を作り上げる。
その音は低く、腹に響くようなおおらかな響きに聞こえる。
どこからか鈴の音が聞こえる。祭りなのか、儀式なのか。
鈴の音に向かうと勇ましい男性の歌声が聞こえてきた。
それは波と調和しながらもハッキリと聞こえてくる。
歌が終わり、空は青から黒になる。
しかし星は輝き海に映る。その明かりは空も照らす。
水は地球の鼓動かと思うようにうねり続ける。
水は循環する。海の上では雲が形成される。空に浮かぶ雲は海から来るものも多いのだ。
それらは大地に向かいながら大きくなり、波を大きくする。
ゆっくりと、じっくりと大きな水を混ぜていく。
やがて雨を降らせる。
再び雨になるのだ

〜水は巡る〜

雨は降る。少しずつ、ポツポツと。
やがて山に染み込み、川となる。
それは海に流れ、雨となる。

水は巡る。雨から始まった物語は、雨に戻っていく。

あとがき

この曲では水の循環をテーマに情景を描きました。
それは既存の曲と同じような形式を持たない、和声も変わったものでした。
いいのかこれで。と思っていましたが、コンサートの観客や先生、初演時の演奏者、様々な人から嬉しい感想をいただけました。
胸を張って代表曲と言える作品だと思っています。
この作品、その時思ったことがきっかけになって音楽大学に入ったというのもあります。
人生の分岐点です。
ここまで読んでいただきありがとうございます。

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