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初彼、のち、ストーカー

高校生の頃、私には彼氏がいた。

地元の同級生とバイト先で再会を果たし、あれよあれよとお付き合いに発展。

まぁよくあるパターンと言えばそうだが、この彼氏はちょっとそこらの高校生とは一味違う。


まず、前提としてお互いに初めての彼氏彼女。

つまりは童貞&処女の初々しさ極まりない組み合わせであるということ。

そして彼曰く、私が初めての精通の相手とのこと。


「???」となっている人の為に説明しよう。

彼はこれまで異性に興味が全くなく、それ故性欲のせの字もなかったと。しかし私と付き合うようになってから飾りだったおちんちんはあら不思議、生命が宿ったようになったわけですね。

今思えばこれは全部嘘だったと確信しているのだけど、まぁそんなことを言ってしまう彼なのでちょっぴり変わり者なのはお察しのこと。


実はこの彼のお話、ずいぶんと前に記事にしたことがあるんだが、淡々とあったことをそのまま書いたら恐怖のストーカー記録になってしまったので、記事としてリニューアルしてみようと思ったのである。

あった事実はそのまま、現代の私が当時高校生カップルだった彼と私にツッコミ入れつつ回想してみようと思う。


出会い~お付き合いまではたいしておもしろくないので省略。ちなみにアプローチは私から、告白は彼から。(ここでパブロンのCMが脳内に流れた方は私と気が合う)

お付き合いから数日後、彼に呼び出されたかと思えばいきなり「付き合いを家族に反対されている」とのこと。え?どこかの家元かなにか?
現代では珍しくもない片親な彼だったが、特別なご家庭でなにか有名企業のご子息とかでもないし、反対される理由がよくわからねぇ。

初めての彼氏が出来てハッピーお花畑な脳みそだった私は、一変して不幸のどん底&悲劇のヒロインに。
家族の反対!?そんなの私たちに関係ないわ!なんて言える勇気も脚本も持ち合わせていなかった私は「え・・・どうしよう・・・」と困り果てる。

彼は「付き合うにふさわしい(?)ってことを納得させられればいいんだけど・・・」と言っていたが、やっぱり意味がわからない。そこらのJKにうちの息子ちゃんはあげられないわ!!みたいなやつ?

とりあえず、私がちゃらんぽらんじゃなければいいみたいな結論に至り、付き合って初めての修羅場は終了。修羅場っていうかひたすら意味がわからなかった。まぁ遊びダメ、真面目に付き合いをせよってことかな?と解釈した。


お付き合いが始まってから数か月で初めての合体。

手を繋ぐのも照れまくり、初キスなんて下を向いて1時間とかわちゃわちゃして初々しいったらありゃしない私たちだったが、なんと初めての場所は野外。初えっちin野外というアウトドア派な私たち。

このとき学んだことと言えば「初めての挿入はバックからは入らない」ということ。

一度貫通してしまえばあとはもう高校生、寝ても覚めても合体祭り。特に高2の夏なんてそれしかやることないくらいの季節、そりゃヤるよね。


そんなこんなで充実のセックスライフを送る私たちだったが、まぁ喧嘩なんぞもする。

主に彼が怒り出す→私謝る、のお決まりパターン。
彼が好きで別れたくない私は、どんな理不尽な彼の怒りも受け止めるキャッチャーミット。

とある日、ラブホでいつも通りに事を終えベッドでゴロゴロしていたときのこと。
“ラブホテルはペイチャンネル見放題”という情報を友人から仕入れた私はおもむろにテレビをつけた。チャンネルをひとつずつ確認すると、えっちな映像が流れだした。私が「みてみて!エロいのが流れてるよ~!」とウッキウキで報告すると、なんだか浮かない表情の彼。みてるうちにムラムラしてもう1回戦とかそういう展開を期待しつつ、もう一度彼に声をかけるも、無視、フルシカト。明らかな不機嫌オーラを出してきて、目も合わせようともせず背を向ける彼。

ここら辺で「やべぇ」と気づく私。

どうやら彼は「みたくもない女の人の裸を見せるんじゃねぇ」ということだったらしい。(のちの彼談)
つまり、私以外は興味がないのになぜそんな嫌がらせをするんだ。僕ちゃん怒っちゃうぞ、と。

良く言えば一途だけど、そんなに怒ること?

タイトルからもわかる通り、彼の愛はヘビー級だったのである。


まぁとにかく嫌がる彼にふざけ半分でペイチャンネルをみせた私が悪いということで、謝ることにした。(というか不機嫌さを察した時点で謝りまくっていた)
無視を決め込んだらしい彼は、表情一つ変えず無言で立ち上がり、そそくさと着替えだす。対するすっぽんぽんの私は焦り出す。この感じ、ホテルに置いてきぼりにされる!!!

焦りと不安から彼の服をつかみ(全裸)謝りまくる私。返してと冷たく言い放つ彼。

全裸VS着衣、全裸の完敗である。

さっさとホテルの清算を終え私を置いていこうとするが、これが意外と間に合う私。(たぶんなんだかんだ待ってた彼)
泣きそうになりながら謝る私を尚も無視し続け、最寄り駅に到着。
いつもなら彼は私家まで送り届けてくれるのだがこの日はもちろん無視。私は徒歩、彼はチャリ。ダッシュでもされようものなら追いつけるわけがない。

しかし彼の性格を知る私は「このまま帰宅すると余計ややこしくなる」と直感し、チャリで走り出す彼を、彼が見えなくなるあたりまで走って追いかけた。息を切らさない程度のところで走るのをやめ、颯爽と帰宅した。(追いかけた感じは伝わっただろう)

すると家に着くなりメールが届く。

「今どこにいるの?」

え、こわ。

やべぇ、と一声漏らしてまたしても家を出る私。さも諦めずに追いかけていたことを演出しようと近くの公園へ向かう。
「公園にいる・・・」と反省の色をアピールした感じでメールを返信、見覚えのあるチャリが公園に入ってきた。

くるなり「なにが悪かったかわかってるの?」と説教が始まり、私がいかに悪いことをしたかを淡々と語る彼。もうやめてよ残HPないよ瀕死だよ・・・と思っていたら「じゃ歯食いしばって」と彼が申す。え?と思いつつ言われた通り歯を食いしばる素直でイタイケな高校生の練乳。するとバチーン!という音と共に揺れる私の頭部及び顔面。私、ビンタされました。
少しずつジンジンと頬が痛み出し、自分が今思い切りビンタされたことを自覚した。

そして彼が驚愕の一言。「目、覚めた?」


え、うん起きてたよね?謝ってたし話し聞いてたよ?思いっきりお目覚めしてたよー!!!

なんて言えるわけもなく「うん・・・」と頷き、放心状態の私。
突然抱きしめる彼。「ごめんね、痛かったよね・・・」

はい、これが世に言うDVの典型です。テストに出ます。

ビンタをしてすっきりしたのか、自分の思い通りに私が反省して満足したのか、急に優しさをみせる彼。
痛いのわかってるならやるな、暴力、ダメ、絶対。

今ならビンタされたらビンタし返せるくらいには強くなった私だが(そもそもこれ以降ビンタする男には出会ってないのでご安心を)、当時はとりあえず許された安心感からそのやり取りを受け入れてしまったピュアすぎる私。

もちろんこの後完全なるDV沼にハマっていくのだが、あまり楽しい話ではないので暴力的な話はここだけにしておこう。


まぁそんなこんなでずっぷりどっぷり良くない感じの恋愛模様を繰り広げていた高校生の私だったが、お付き合いから1年程した時にちょっとした転機が訪れる。

いつもの如くしょうもない理由でお怒りの彼。
学校にいる最中の私に「反省してるなら今から会いにくるべき」だの「できないのは愛してない証拠」だの無理難題を押し付けてくる。(決して“早退しろ”とか具体的な指示は出さず、愛があればなんでもできるはずと私を試すタイプ)
当時の担任がめちゃくちゃ話しやすくて理解のある先生だったので、「先生・・・ごめんまたです・・・」と言って早退し、彼の望みを叶える私。
そしてお決まりの仲直りセックス。ここまでが彼のハッピーセット。

人間というのは慣れる生き物である。初めは一喜一憂していた喧嘩→仲直りも、同じようなくだりを繰り返されてしまうと「はい、またです」と動じなくなってしまう。代わりにただただ(早くこのしんどい時間が終わってくれないかな・・・)と言った具合に、戦うことを諦めた戦士のような状態になるのだ。

せめて応えられる範囲のワガママならまだいい。
彼はわざとかと思うほど私の生活に無理がきたすようなワガママが多すぎた。しかも結局は全てセックスして解決。懐が深いことで有名な練乳も呆れポンチである。

そんな気持ちが態度に出ていたのだろうか。私の乗り気でない感じを察してかまたしても不機嫌な彼。お前はジーンか。
お得意の「そんなんだったら別れよう」と彼。

そっか、別れればいいんだ!

こんな単純なことに気付くのに1年もかかってしまった。彼のことが好きで離れたくないと思って縋り付いてきた私だったが、きっともう無理なんだ。私がどんなに尽くそうが望みを叶えようが彼にとってはずっと足りない。もう大丈夫!私きっと次は良い恋が出来るよ!!

「わかった・・・」

決して「あっそ、じゃあいいわ」的な感じは出さずあくまでも私ではあなたの理想通りになれない。私の力不足のせいでヨヨヨ・・・的な感じを醸し出し、仕方ないので別れを受け入れますよ、私。という雰囲気で別れることに合意。

ちなみにこの別れよう云々のやりとりはメールだったので、身の危険(ビンタ)はない。安心安全の実家なのだ。

すると10分程してメールが届いた。

「本当にいいの?」

お察しの良い方はというか、お察しもクソもないけどそういうことです。
基本的に不機嫌になることで私の気持ちを試す彼。別れようと言う言葉もサラサラそんな気なんてなくて私が「いやよ!あたいなんでもするから別れたくない!」というのを期待してのこと。
薄々わかってはいたけどこんなにバカらしい気持ちになるなんて。

その後は色々言い訳を並べて別れることを撤回してきた彼。
心底嫌いになっていたわけでもなかった私は付き合いを継続することにし、再び泥沼のような恋愛に両足からズブズブ埋まっていく。


私が別れを受け入れてからは安易に「別れよう」と言わなくなった彼。
代わりに新しい作戦「だったら今から死ぬ」を繰り出すように。

ずいぶんと立派なメンヘラに成長したもんだ。

冒頭の方でも書いた通り、「精通の相手があなただよ」的なことを言えてしまう辺り彼の愛には一癖も二癖もあった。
立派なメンヘラに進化するのも時間の問題だったし、私も彼も死ななかっただけありがたいと今では思う。(そもそも死ぬ気なかったよな?)


一番衝撃だったのは、喧嘩して私が別れを切り出した末「今自分を包丁で刺しました」という報告が来たこと。

え、包丁で刺したのにメールできるの?ダイイングメッセージ?

そしてその後颯爽と私の前に現れた彼。いやいや病院行けよ。

普通に歩いているし苦しそうな様子もない。
まぁ彼の目的はセックスして安心したいだけなので本当に刺したなら傷が確認できるはず。

傷はもちろんない。お肌綺麗だね。

まぁ本当じゃなくてよかった。刺したら痛いもんね。ほんと、質の悪い嘘とと暴力はやめてくれよ。


これ以降はさすがに「今○○した」みたいなメールは届かなくなったが、死ぬ死ぬ詐欺は尚も続く。

なんやかんや付き合いは2年程続き、そろそろ私も高校卒業が近づいてきた。
地元企業の受付に就職が決まっていた私は、残り少ない学生生活を謳歌できるわけもなく時間さえあれば彼と会う日々。(ちなみに彼は定時制に通っていたのであともう1年は高校生)

この頃も喧嘩は絶えず、もはや彼との付き合いに疲弊しきっていた私。
私が就職して環境が変われば、彼の中でなにかが変わってくれるかもという一縷の望みにかけるしかなかった。
本音を言えば一秒でも早く別れたがったが、死なないとはわかっていても「それなら死ぬ」と言われてしまっては別れられないヘタレな練乳。
早く彼も社会人になって一緒に住むなり結婚するなりすれば、四六時中一緒にいられるようになるんだし、そうすれば私への無茶ぶりもなくなってくれるはず。

“私の人生はこの人と結婚してこの人の子供を産む”

ある意味自分の意思とは関係のないところで決められていて、覆すことができない決定事項のようだった。


あっという間に高校を卒業し、就職。
彼は「これから大変だと思うけど、お仕事頑張ってね」と私が欲しがっていた大好きなブランドのバッグをプレゼントしてくれた。

私がしようとすることを応援されたのは記憶の限りほぼ初めてで(文化祭とか修学旅行とかもなにかと文句ばかり言われていたので)すごく嬉しかったのを覚えている。

彼の言う通り、というか、まぁ普通に仕事は頑張った。
接客業だったため基本的に帰りが遅かった私を彼はいつも駅で待っていてくれた。「少しでも会いたいから」と言って、1時間以上私を待ち家に送り届けてくれる毎日が続いた。
慣れない社会人生活に毎日緊張していた私は、彼の気持ちを嬉しく思った。

しかし、そんなことを思えたのは2週間程だけだった。

次第に「一緒にいる時間が足りない」「このままどこか(主にラブホ)に泊りに行きたい」「近頃愛されている気がしない」と盛大に不満を漏らすように。
応えてあげたい気持ちはやまやまだが、今までの私とは状況が違う。
一刻も早く帰ってごはんを食べてお風呂に入りたい。なんなら仕事の復習とか明日あの先輩と一緒だからどうするとかそういうことで頭がいっぱいなのだ。彼の入る余地はほとんどない。
最初こそ公園でおしゃべりしていちゃいちゃしてなんとなくやり過ごしていたが、帰ってからも不満気なメールが来たり結局はセックスしたいだけやんけな内容が増えたりして、私の別れたい願望がピークに。
ある日、いつもの通り仕事を終えて帰るといつもの通り彼が駅で待っていた。翌日仕事な私に対して「最近ずっと愛されてる実感がない(要約すると)このままホテル行こう」といつもの通りお誘いが。
当然無理だと断ると、不機嫌&怒り気味に駄々をこねる彼。
「本当に無理。これ以上私に無理を言うなら別れて」
何百回と別れて欲しいと伝えてきた。その度なんだかんだと(主に死ぬ死ぬ詐欺)で別れずずるずるしていた私。でもこの日の私は違った。

彼「別れるなら今ここで・・・」
私「本当無理だから!!!」

間髪入れずに怒鳴る私。
私「そういうのももう全部無理!いい加減にして!もう帰る!」

なにやら死のうとしているらしい彼を尻目に帰宅を決め込む私。
「ごめんなさい、もう言わないから、別れないで・・・」
ズンズンと歩き出す私の後ろをついてくる彼。

ほぼ無視の状態で自宅前に到着。このまま帰られると困ると思ったらしき彼は私の腕を掴み、物理的に帰れないようにする。
ここで殴られたりするのも怖いので一応話し合いに応じるかたちに。

絶対に別れたい女VS絶対に別れたくない男の闘い。ファイッ!

彼「これから全部だめなところ直す、練乳ちゃんの仕事の邪魔をしない、だからお願い別れたくない」
私「今までも同じようなこと言われて同じように裏切られてきた。もうその言葉は信じられないし絶対また同じことが起きるってわかる。だからもう無理別れる」

お互い一歩も譲らない攻防戦。早く帰りたい。

そんなとき、私に孔明が舞い降りた。今すぐ帰れる且つ納得させてこの場を終わらせる方法が思いついたのだ。

私「じゃあわかった、今は別れない。けどひとつ条件がある」

その条件とは、1週間連絡を取らず(もちろん会うこともなく)私に考える時間を与えること。
この願いすら聞いてもらえないなら今すぐ別れる。
この願いを聞いてもらえるならひとまずは別れない。

私からすればどっちにしろ別れることができる素晴らしいプラン。
1週間考えるとは言え、別れる気マンマンである。

こうして別れるかどうかの主導権を私が握ると同時に、帰宅することが叶った。(少々ゴネられたけど)


これで束の間(1週間)の自由が手に入った!
彼の機嫌をうかがう生活からの解放だ!!!


そう思った翌朝、出勤途中の私の携帯がブーブーと震えていた。

予想通り、彼からの着信である。

もちろんその電話には応答せず、相手が電話を切るまでそのままにしていた。
やがて諦めて切られた携帯電話の画面に、恐ろしい程の着信履歴とメールの件数が。電車に乗って携帯から目を離していた数十分間の間に彼は何度となく連絡をよこしていた。

「やっぱり1週間なんて無理」
「連絡もとれないとか耐えられない」
「会いたい」
「別れたくない」
「別れるなんて無理」
「別れるなんて・・・」

最終的には別れる=結婚詐欺だから訴えてやると入っていた。
警察を連れて職場まで向かうから待っていろと。

待てど暮らせど仕事中の私の元に警察&彼は現れず、無事に仕事を終えることができた。ツッコミどころが多すぎてもはや草も生えない。

詐欺師となった私は約束を破った彼に別れ告げることもせず、翌日には携帯を解約した。私はとても晴れ晴れとした気分だった。自由を手に入れたのだ。

ひとつだけ懸念されるのは仕事帰りにきっと駅で待ち伏せされるだろうということ。終電1本前がいつもの電車だった私は、その日を境にあえて終電に乗ることにした。

終電1日目。駅の改札を出たところに待ってた。なんかゾンビみたいで怖かったしとりあえず迎えに来てくれた親の車にダッシュして難を逃れた。

終電2日目。今度は電車を降りてすぐのホームにいた。敵は学んでやがる。ダッシュするもあえなく捕まり改札の手前辺りで久々のご対面(とはいえ4日ぶりくらい)謎のノートを押し付け読んでくれとせがまれる。泣きながら抵抗→母登場→私強制送還→私両親に向かって彼土下座→説得され彼帰宅。

終電3日目。こちらも学んで駅を1つ前にずらす。ばかめ、本物はこっちだ!お前が見ているのは残像だ!無事作戦成功、安心の帰宅。

仕事がいつもより3時間ほど早く終わった4日目。
職場の親切な先輩(男)がなんと自宅まで車で送ってくれるとのこと。新しい恋の予感を感じつつ、お言葉に甘えてお願いすることに。
道中「実は元カレに軽くストーカーみたいなのされてて危ないんで自宅からちょっと離れたところに降ろしてもらえますか?」と事のあらましをざっと話しつつ、先輩の身の安全も確保。男に送ってもらったなんて知ったらなにするかわからないものね。
自宅の裏の門からひっそりと入り、ぐるっと表に回りそっと帰宅。
この日は私が送ってもらえることもあって、家族全員が外出中。
窓から外を確認すると、見覚えしかないチャリと1人の男が佇んでいる。

控えめに言って、めちゃくちゃこえぇ。

家中の鍵を確認し、2階の部屋に急ぐ。

母に連絡を入れ、帰ってきてもらうようにお願いしていると“ピンポーン”とインターホンがなる。
続くように“ピンポーンピンポーン”と鳴り、さらには家の電話が鳴り始める。
もはやここまで来たらホラー。

急いで帰宅してくれると言う母の言葉を頼りに、恐怖の時間を耐え忍ぶ私。
定期的に鳴るインターホンと家の電話。

10分もしないうちに外で車が駐車する音が聞こえてきた。救世主(母)だ。

母の説得により彼は帰宅したようだった。

母は「こんなこと言いたくないけど、これ以上続くようなら警察を呼ぶことも考えないといけないかもしれない、一度電話でもいいからきちんと話してお別れしなさい」と私に言った。
確かにあの詐欺師認定された日以来、逃げるの一点張りでちゃんと別れを告げていなかった。こんなことで警察のご厄介になるのも気が引けるし、かといってこれが続くのももうストレスの限界、両親にも迷惑をかけまくっている。

意を決した私は変な気を起こしにくい昼間に話をすることを決めた。

次の休日に彼の自宅へと電話をかけ、久々に彼と話すことに。

と思っていたらまさかの彼母の登場(電話で)。
「学校もバイトも行かなくなってすごく落ち込んでてね・・・」と彼の現状を訥々と語られた。知らんがな・・・そもそもお付き合いを反対されていたのでは?あれは彼の嘘だったんか?とかそんなことを考えながら、半ば上の空になりつつ「はい、はい・・・」と話を聞く私。
横で見ていた私の母が「替わって」と言うので受話器を渡し、なんと母VS彼母という展開に。
一通り話を終え、最後に本人同士で話しなさいと受話器を渡されると、電話の向こうから今にも死にそうな彼の声が聞こえた。

「ずっと学校もバイトも行けてなくて・・・」

お前もかよ。親子揃って別れたことによる生活への悪影響からの説明。なんかそういうマニュアルでもあるの?
その後は、別れたくないだの(もう別れてるけど)やり直したいだのあの頃に戻りたいだのよくある台詞のオンパレード。全てに対し「ごめん無理」とだけ返答した。
“付き合いを続ける”ということが叶わないと理解したっぽい彼は「ひとつだけお願いがある」と言ってきた。

「最後に1度だけでいい、思い出のあの場所○○(地名)に2人で行きたい」

ちなみにこの彼の言う思い出の場所、1回しか行ったことのない地元から数駅ほどの観光地。ぶっちゃけ思い出もクソもないし、思い出というなら私が初めてビンタされた公園とかそっちの方がしっくりくる。
それに2人きりで長時間過ごそうものなら何をされるかわかったもんじゃない。付き合っていたときに一度「もし別れるってなったら無理やり妊娠させるかな、それくらい愛してる」と言われたことがあったので、それを有言実行されてしまうかもしれない。(もはや犯罪)
「そういうのも本当に全部無理ですごめんなさい」と言って尚も断り、何度も食い下がってくる彼にひたすら無理だと言い続けると彼の態度が急変。

「ボクのことをバカにしてるのか!!!」
突然キレだし、おまけに電話も切れた。え?終了?
意味がわからず呆然としていると、母が「なんだって?」というので、彼の最後の発言と突然電話を切られたと説明。母も驚いていたが、とりあえずこれでこちらの意思は伝わったはずだということで一件落着となった。

それから彼のストーキングは止み、平和な日常を取り戻した。

一度彼らしき人の姿を見かけた時は全身の血の気が引いたが、あちらは気づいていないようだったのでなにもなかった。

そして数年後、子供の手を引く彼の姿を見かけた時は思わず「うお・・・」と声が漏れた。若くして立派な父親になっていた。(そういえばめちゃくちゃ子ども欲しがってた)


思った以上に長く、そしてやはりおもしろ要素が少なくなってしまった。
恐怖の記憶として残っているものをおもしろおかしく書くのは限界があるのかもしれない。
本当はここには書ききれないほどのありえないエピソードがあるのだが、あまりにも個人が特定されそうなので自分の命の為に控えておく。
いくつかのエピソードは過去記事に載せているので興味がある方はそちらからどうぞ(今回の記事とかぶるものもあります)


初めての彼氏が愛情ヘビー級チャンピオンだった私のその後の恋愛は、どういうわけか必ずと言っていいほど浮気相手に落ち着くということを繰り返すように。
こちらについてもリニューアル記事出そうかな。

まぁとにかく今回の記事でなにが伝えたかったかと言うと、
・初めてのエッチはバックでは入らない
・一度でも暴力ふるわれたら(プレイで自分も喜びを感じるとかでない限り)別れた方が良さそう

ということです。


みんな、良い恋愛を楽しんでくれよな!!

お取り寄せグルメします