見出し画像

パティスリーの労働環境とお腹を満たすだけの底辺の仕事

ニュースで話題になったesKoyamaの労働時間の問題。

わたしがシェアキッチンの運営や飲食店他のフードビジネスコンサルタントとして活動する大きな理由の一つに、食を担う人の労働環境を改善したいという思いがあります。

わたしの父は小さな町で、ロードサイドにある飲食店でコックをしていました。まだファミリーレストランもそれほどなかった時代。
休日は大変な賑わいで、父も母も朝から晩まで働くという生活でした。

特に夏休みや年末年始のお休みは掻き入れ時で、家族揃って休日に遊びに行くという体験はなかったのです。

いつも、親戚や近所の友達の家族旅行にいなぜか私たち姉妹だけがくっついていくとか、親戚の家に長期滞在するということもありました。

両親の朝は早く、夜は遅くまで働くという生活。

成長ともに違和感がありました。

サザエさんで見る、マスオさんや波平さんは子どもが学校に行くような時間帯に家に出て、夕方帰ってくる。夕食はだいたい家族で食べ
たまにお酒を飲んで遅くなる。

画像1


我が家では、ありえない出来事でした。

それは、他の家族の楽しい夕食を提供している側だから。

その頃から飲食店では絶対に働きたくないと強く思い、マスオさんや波平さんみたいな決まった時間だけ会社に行くサラリーマンになりたい。と割と幼少期の頃から言っていました。

そんな私も無事にサラリーマンになるという目標は達成して、大手の自動車のメーカーで働いていた頃に。

父が言った言葉があります。
「コックの仕事は人のお腹を満たすだけの底辺の仕事だ」
私は父が作る料理のどれもが好きでした。友だちと遊ぶことよりも厨房の片隅でずっと父や他の職人が料理を作る姿をずっと見て育ち

オムライスは美しく、ハンバーグを成形する手つきは柔らかく、とんかつにするためのロース肉の塊をスライスする包丁捌きは鮮やかで、どれも鮮明に覚えています。

今も昔も料理を作る人を見ると父を思い出すのです。

わたしに言った言葉 お腹を満たすだけの底辺の仕事 
そんな、おいしい料理を作る職人に底辺の仕事だと言わせるのはどこにあるのだろう。でも、それは父が生きている時には聞くこともできず父は64歳で去りました。

父の料理で特別な日を祝い、おいしいねと言葉を交わし、幸せそうな顔をしていた人たちを何人も見ていました。そんな料理を作る父はわたしの自慢でした。

わたしにとってはコックの仕事はお腹を満たして、人の幸せを作る最高の仕事で、父も当然自分の仕事に誇りを持っているものだと思っていました。

しかし、現状は過酷な労働環境と低賃金で職人が自分の仕事に価値があるものだと捉えられないのかもしれません。

製造現場の多くは、重い原材料を運ぶ、高温で煮詰められる鍋やオーブンの前で作業をして暑い室内にいるかと思えば、冷凍庫の中で作業をするということもあります。

朝は早く、夜も遅い。

国民のイベントとも言える、クリスマスや正月、バレンタイン、ホワイトデー、母の日などは菓子や食べ物はつきもので、イベントのたびに商品を企画して残業をして大量に作る。

余って返品されものは廃棄することもありました。

一生懸命、体力をすり減らし作ったものを自らの手で廃棄する。それも食べ物です。気持ちが擦り減ります。

最初はもったいないという気持ちがあった職人たちもそれを繰り返す事で、気持ちが鈍化していき、自ら作ったものを捨てるという作業に対し感情がなくなっていくようでした。

本当は悔しくてどうにかしたい、もっと売ってくれよ。なんで適正な製造計画にならないんだという怒りがあったと思います。

その怒りさえも消失させてしまう。
もっと、職人がイキイキと働く環境が出来れば、美味しいものはより美味しく価値のあるモノに変わるのではないでしょうか。

集中するイベント、広告を打ち販売合戦をする量販店。
食べられる量は決まっているのに売り切れに対する機会損失やクレームを恐れたり。売上に対する欲が出てしまう。

様々な欲が混ざり合い、しわ寄せが来る。

父の言ったお腹を満たすだけの底辺の仕事という言葉は、職人の悲痛な思いだったのかも知れません。

クリスマスケーキは完全予約のみそれ以上は受け付けない。そんなお店も増えてきました。

職人の負担や材料のムダ、食品廃棄ロスを減らす事が長い目で見た時に利益になっていくと考えています。

若い職人を勉強の為と安い賃金で働かせ、使い捨てのように搾取する。
よく聞きます。

Coneruでも製造はしていますが、オーダーを受けてからの受注生産です。注文が立て込んだとしても、お取引先様には待ってくださいなど調整もしてもらうことも度々あります。

大変ありがたいことにお取引先さまは、相互の理解で成り立つパートナーという関係です。小ロットで受注生産のような製造のしかたは、効率も悪く量産品に比べれば商品の値段は、多少高いかもしれませんがその分在庫のリスクもなく細やかな製造をしていきます。

職人が定着しない、利益が上がらない、効率が悪いといった悩みを一緒に解決していきたいと考えます。

コックだけじゃない、美味しいを作る人は、人の笑顔と幸せを作る最高の仕事なんだ!と思ってもらえるように作り手の価値を上げられるように活動していきたいと思います。

よろしければサポートお願いします。いただいたサポートは、これから飲食店や菓子製造の小商いをしたい人のためのシェアキッチンの運営に役立てます。