ササマユウコ(音楽・サウンドスケープ・社会福祉)

3.11を機に「オンガクする私」を編み直す「ことば探し」。芸術教育デザイン室CONNE…

ササマユウコ(音楽・サウンドスケープ・社会福祉)

3.11を機に「オンガクする私」を編み直す「ことば探し」。芸術教育デザイン室CONNECT代表。アートミーツケア学会(理事)。日本音楽即興学会奨励賞(2023年度)。音楽、サウンドスケープ、社会福祉。 www.yukosasama-web.jimdosite.com

最近の記事

私を編み直す『サウンドスケープ』とは何か③~音楽の内と外

・第1回 自己紹介 第2回 R.M.シェーファーの目と耳 ピアノの内と外  今から半世紀前の昭和時代のお話です。10歳になった頃にピアノの教室を移り、毎日3時間の練習が必須となりました。それまでに習っていた先生の勧めもありましたが、音大ピアノ科の受験が視野に入ったからです。もともとピアノを弾くのは好きだったので特に苦ではありませんでしたが、それまで郊外の空き地を走り回っていた《外あそび》の放課後が強制終了されたことは、やはりその後の人生観にも大きく影響したと思います。高

    • みどりのゆび日記④薔薇の行方

       コロナ禍のステイホーム中に、高齢の父が手に負えなくなったバラたちを半ば強制的に受け継いで早3年目の春となった。毎年見事にアーチを咲かせていた父はバラ名人だと思っていたが、そもそもバラ自身に驚くような生命力があることもわかってきた。写真の赤いバラは樹齢40年近いはずだが今年も大きな蕾を沢山つけて真っ先に咲き始めた。そもそもこのバラと出会った父が単に幸運だったのだろうとも考えていたが、父もバラも若い頃から丁寧に肥料をあげ、根っこそのものを丈夫にしてあると聞いて納得した。  しか

      • 私を編み直す『サウンドスケープ』とは何か②シェーファーの目と耳

        前回の記事 ①自己紹介 《サウンドスケープ》を翻訳する  今では音楽領域のみならず日常でも使われていますが、あらためて《サウンドスケープ》という言葉は何を表しているでしょう。学術的な訳語には《音風景》や《音環境》が使われますが、一般的には詩的な《音の風景》が人気ですし、もちろんこれも間違いではありません。  ただ今回は、《サウンドスケープ》という考え方には《サウンド・オブ・スケープ/風景の音》だけでなく、もっと大きな視点があることをお伝えしたいと思っています。なぜならこ

        • 私を編み直す「サウンドスケープ」とは何か①自己紹介

           去る3月23日にアートミーツケア学会研究会『現場のことば、研究のことば』@大阪大学COデザインセンターが開催され、『現場のことば+研究のことば=アートのことば』と題して20分間の話題提供をさせて頂きました。ちなみに昨年度から2年間、この理事も務めさせて頂いています。    2011年東日本大震災を機に始まった「音楽、サウンドスケープ、社会福祉」の実践と研究は、今ふりかえると自分の「語りなおし、編みなおし」だったとあらためて感じています。原発事故後の不安と混乱の社会の中で、「

        私を編み直す『サウンドスケープ』とは何か③~音楽の内と外

          Art for Well Beingプロジェクト「表現とケアとテクノロジーのこれから」(新井英夫、佐久間新、筧康明チーム 主催:たんぽぽの家)を見学して

            奈良を拠点とする「たんぽぽの家」では、昨年度から先駆的なプロジェクト「Art for Well-Being 表現とケアとテクノロジーのこれから」が展開されています。各所にチームがありますが、その中のひとつに一昨年ALS罹患を公表した体奏家・新井英夫さん、長年たんぽぽの家でワークショップを展開しているジャワ舞踊家・佐久間新さん、そしてテクノロジー側からは東京大学・筧康明さんで編成されたチームがあります。去る15日にはコアメンバー3名に新井さんを日々「ケアする人」でもある板坂

          Art for Well Beingプロジェクト「表現とケアとテクノロジーのこれから」(新井英夫、佐久間新、筧康明チーム 主催:たんぽぽの家)を見学して

          冬至から節分まで~世界をきく

           昨年のちょうど冬至の少し前に左足首を骨折した。そこから足首が固定され、杖を使う時間を過ごし、節分の前日にその生活から解放された。  不慣れな身体の使い方に慣れること、文字通り「足を止めて」考えること。年始年末の多忙期に家族には多大な迷惑をかけてしまったが、この状況を受け入れるしかない周囲が生き生きと動き出す世界を、実は申し訳なさよりもどこか複雑な気持ちで眺めていた。もしかしたら日頃、自分はいろいろ「やりすぎて」いたのではないか。なんだ、みんなやればできるんだ。私がやるから、

          【覚え書】アートのような、ケアのような〈とつとつダンス〉2023年度活動報告会@東京芸術センター

           2009年に京都府舞鶴市の特別養護老人ホーム「グレイスヴィルまいづる」のワークショップから生まれた、ダンサー砂連尾理さんを中心とした『とつとつダンス』。コロナ禍に苦肉の策で始めたオンライン活動が思いのほか広がり、今では鹿児島のみならず海を越え、マレーシアやシンガポールへと、静かな波紋のようにじわじわとダンスの輪が生まれています。3日に北千住・東京芸術センターで開催された2023年度活動報告会〈展示・パフォーマンス・トークセッション〉では、冒頭でシンガポールの認知症家族とつな

          【覚え書】アートのような、ケアのような〈とつとつダンス〉2023年度活動報告会@東京芸術センター

          ろう者と聴者が共同する「アジアのオブジェクトシアター」成果発表を観て

           オブジェクトシアターを掲げるラオスの劇団カオニャオと、人形劇をメインとする日本のデフ・パペットシアターが、昨今は福祉×ダンスのワークショップにも尽力する白神ももこを演出に迎え、次作につながる「ワークインプログレス」として成果発表を行いました(実施日:2023年11月26日 場所:神楽坂セッションハウス)。  今夏のサントリーサマフェスでは2011年の震災後に出会った東西の音楽人、日本とインドネシアの文化が星座のように繋がりましたが、このプロジェクトでも国境を越えて、聴こえる

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          コラム「内と外 音の関係性」とは。カプカプ×新井一座に学ぶ 舞台芸術と福祉をつなぐファシリテーター養成講座メモ

          はじめに 現在、横浜の地域作業所カプカプで実施中の「2023年度カプカプと新井一座に学ぶ 舞台芸術と福祉をつなぐファシリテーター養成講座」(主催:センター・フィールド・カンパニー 神奈川県マグカル事業)で、受講生から多くご質問いただく「音の関係性」について簡単にまとめてみました。  サウンド・エデュケーションの応用と音楽療法やリトミック等の違いが少しでも伝われば幸いです。 【内と外・音と関係性の話】  今回ちょうど新井一座の内と外、「音と関係性」がよくわかる写真がありました

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          助産と看取り

          「助産」と「看取り」は芸術とも地続きにあるはずで、 逆に言えば、自分が心揺さぶられる芸術には、 いずれかの感覚が宿っているなと感じている。  しかし現代の医療には、自然分娩に対する助産師さんのように、 看取りを専門とする役割(仕事)が無いのはなぜだろう。  それは芸術や、人生の時間そのものの捉え方にも大きく影響しているのではないだろうか。  コロナ禍のStayhomeから、定期的に海に通うようになった。 マスクを外し、波の音を全身でききながら、 誰もいない浜辺で深呼吸する時

          荒木珠奈展「うえののそこから はじまり はじまり」展に想うこと

           20年来の友人、荒木珠奈さん初の回顧展も後半に入りました。未見の方は是非おでかけください!実は我が家からも初期の小さな作品を出展しているのですが、この膨大な展示作品の中から、偶然それを写したダンサー新鋪美佳さんが「好きな作品」だと写真を送ってくれたのです。同じ世界に心惹かれる人の存在は嬉しいものですが、何よりこの偶然にはお互いびっくりしました。彼女が活動していたダンスユニットほうほう堂と珠奈さんには共通する世界観を感じていました。  珠奈さんは美術館の教育普及、子ども向け

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          【Listen/Think/Imagine】音楽とは何か~言葉・サウンドスケープ・身体

          東日本大震災  音楽とは何か、何がオンガクか。幼少期から専門的に音楽を学んだ人でさえ、この根源的な問いを言葉だけで思考する経験は多くはないだろう。次々と与えられる課題やコンクールの準備に追われる中で、結果の出ない問いに向き合う時間の余裕は無いかもしれない。そもそも音楽の第一言語は〈音〉なのだから、言葉のことは哲学の世界に任せておけばいいと考える人もいるだろう。しかし社会は言葉でできている。音楽も社会の中にある限り、言葉を無視することは出来ない。  音楽を言葉で「問う」果て

          【Listen/Think/Imagine】音楽とは何か~言葉・サウンドスケープ・身体

          「ありえるかもしれないガムラン」のあるかもしれない「ふりかえり」のための記録。サントリーホール・サマーフェスティバル2023

          この記事のキーワード:社会実験、サウンドスケープ、ケア、コミュニティ、ミュージッキング、コレクティブ、不確定性、現代音楽、共生社会 ※この記事は『音楽の生まれる場』の関係性を「サウンドスケープ」と捉え直し、新しい音楽の聴き方、関わり方も提示しています。発見や気づきがあるたびに追記していくため初稿から変容していきますので何卒ご了承ください。最新版はこちらでご覧頂けますので、時おり覗いてみて下さい。 最終更新日:2023年9月18日(サントリーホールより写真が提供されました)

          「ありえるかもしれないガムラン」のあるかもしれない「ふりかえり」のための記録。サントリーホール・サマーフェスティバル2023

          En-gawa プロジェクト「ひらかれた家」サントリーホール・サマーフェスティバル2023に協力しています。

           いよいよ今週25日(金)、サントリーホール・サマーフェスティバル2023「ありえるかもしれないガムラン」が開幕します。現在も各現場で準備が精力的に進められていますが、それぞれがガムランのように響き合いながらひとつの世界が立ち現れていくプロセスにワクワクしています。  特にブルーローズ・ホール(小ホール)にはアート・コレクティブKITAによるインドネシアの路地のような「ひらかれた家」や屋台が登場し、27日までの3日間、毎日趣向を変えた「ありえるかもしれない」演目が予定されてい

          En-gawa プロジェクト「ひらかれた家」サントリーホール・サマーフェスティバル2023に協力しています。

          映画『ぼくたちの哲学教室』雑感

          【ネタバレあり】 少し前になりますが、こちらを観ました。子どもの哲学対話にフォーカスしたドキュメンタリーだと思っていたので(まあ、そうなのですが)、思っていた内容と少し違ったのと、コロナ禍も含む21世紀の今なぜ「ぼくたち」だけなのかやはり頭に引っかかって、少し捻くれた目線で観ていたかなと思います。良い映画には違いないのですが。。  宗教対立でもある北アイルランド紛争の複雑な歴史的背景を理解しておいた方がいいし(被写体はカトリック)、まるで要塞のような平和の壁や、驚くほど殺伐

          クラウド・ファンディング「祝福へ 天と地の和解」を観て

          開催日時:2023年7月17日(月・海の日)14時~17時頃まで 場所:北区北とぴあ展示ホール 表現 : 新井英夫・安藤榮作・板坂記代子 舞台監督 : 御園生貴栄 制作 : 三ツ木紀英 撮影 : 阪巻正志・八幡宏 編集 : 阪巻正志 ※以下、文中の敬称略は何卒ご了承ください。 美しい時間  鮮明に覚えているのに、なかなか言葉にならない夢のようだった。2023年7月17日14時、北とぴあ地下の展示ホールに立ち現れたあの時間とは何だったか。とても美しかった、という手触りは確か

          クラウド・ファンディング「祝福へ 天と地の和解」を観て