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国内外の法規をフォローしよう〜省エネ法と温対法は外せない

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毎年毎年改正される、数々の法規、法令。特に気になるのが、この2つ。些細なものから、収集するデータから変わってしまう大幅なものまで、様々ですね。さらに海外も...となれば手に負えま… もっと読む
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中国版S1・S2? ESRS? したたかな戦略

上海・深圳・北京という、中国の主要証券取引所が、サスティナビリティ情報開示ルールのドラフトを公表、コンサルテーションを実施しています。 noteでも繰り返しご案内しているように、昨年ISSBがIFRS S1・S2基準をリリースして以降、各国・地域の規制当局が、それぞれの事情を反映させたS1・S2基準を策定してきています。 日本版は、昨年度末日にSSBJが公開したことが、記憶に新しいところ。 上記に記載がありませんが、香港政府も2024年度から段階的に導入開始し、2026

SSBJが注目される理由(わけ)

SSBJ基準のドラフトが公開され、注目が集まっていることは、皆さんもご承知のところでしょう。noteでも、ご案内したところです。 サス担の皆さんにとっては「当たり前」のことでも、その他大勢の一般の方にとっては「一体何?」っていうところではないでしょうか。 各所に協力をお願いしなければならないところ、説明に苦慮されているのではと推察いたします。役員に対する説明をどうしたものかと、悩みの種は尽きないことでしょう。 ISSBは、テーマ別の開示基準として、生物多様性や人的資本な

「いつか来た道なのか」(2)

前回、4月4日開催の「第13回グリーンイノベーションプロジェクト部会」において、GX経済移行債による支援の条件として、GXリーグ参加が義務となった旨お届けしました。 GX経済移行債という「アメ」とGXリーグという「ムチ」を組み合わせた、うまいやり方ではありますが、ここに至るには、紆余曲折がありました。 実務には直結しませんが、Coffe Break代わりにお読み頂ければ幸いです。 さて、皆さんご存知ないかもしれませんが、排出量取引(ETS)は日本でも行われていました。

「いつか来た道」なのか?(1)

4月4日に実施された、「第13回グリーンイノベーションプロジェクト部会」において事務局から提出された資料により、GX経済移行債の支援を受ける企業は、GXリーグ参加が必須となることが明らかになりました。 「参加等」であり「相応のコミット」をすればよいという書きぶりになっていますが、マストであると言ってよいでしょう。 法律に遡及効はありませんので、既に公募が始まっている案件については対象となりません。ご安心ください。 他方、GX経済移行債のみならず、今後は、一般財源で支援を

24年度から非化石証書は全量トラッキング

先般、クレジットと証書の違いについてご案内しました。 算定の初学者はもちろん、中級者にとっても勘違いしやすい内容ですので、3回に亘って説明したところです。 それでは、証書そのものについてはいかがでしょうか? シリーズの中でも説明しておりますが、再生可能エネルギーから発電された電力は、「kWh」という目に見える(いえ、電気そのものは見えませんが)価値と、「GHGを排出していない」という目に見えない価値からなっており、後者を切り離したものでした。 日本で入手できる「証書」に

CSRD 監査意見は誰が表明できる?

国内では、昨年度末にSSBJが公開草案を公表したことを受けて、サスティナビリティ情報開示界隈が盛り上がっていますが、欧州では、CSRDが今年の1月に発効し、EU域内の大企業など一部の企業は既に「法定開示」の義務が発生しています。 EU域外企業向けは2年間後ろ倒しされたとは言え、「確定された未来」。 駆け込み対応できる訳ではありませんので、後ろ倒しすることなく、前倒し手準備を進めたいところですよね。 何よりもまず情報収集、ということで、監査法人やシンクタンクのレポートが頼り

証書・クレジットと省エネ法

証書とクレジットの違いと、それによる使い方の違いを、温対法の報告にフォーカスしてお伝えしましたが、「省エネ法だとどうなるの」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。 これについても、証書とクレジットの違い同様、温対法と省エネ法の違いを理解すると「なるほど」と合点がいくかと思います。簡単に説明しますね。 省エネ法は、日本の省エネ政策の根幹となるもので、石油危機を契機に1979年に制定されたもの。対象事業者には、エネルギーの使用状況等について定期的な報告が義務付けられており

日本版S1・S2 公開草案 滑り込み公開

2023年度末までに公表するとしていた「公開草案」 年度末の最終稼働日である3月29日、滑り込みで公開されましたね。 サステナビリティ関連情報を発信するメディアを謳う「NIKKEI GX」さんは、遅れてはなるものかと、4月1日5:00に解説記事をリリース。まぁ、一大スクープでしょうから、休日返上だったことでしょう。 個人的には、議事及び事務局提出資料を都度確認していたので、委員会における審議過程は把握していましたし、先月のセミナーも参加しましたので、驚きはなく、想定通り

第1回 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するWG(3)

3月26日開催の「金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(第1回)」の内容を紹介しています。 当日の資料はDLできるのですが、残念ながら、ライブ映像は非公開。ですので、見逃してしまった方のお役に立てるよう、ご紹介できればと思います。 さて、ワーキンググループで議論する事項として示されたのは、次の5点なのですが、1.及び3.についての説明が中心でした。 前回までで、このワーキンググループが設置された背景と目的、有価証券報告書の非

第1回 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するWG(2)

3月26日開催の「金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(第1回)」の内容を紹介しています。 当日の資料は、こちらからDLできますが、残念ながら、アーカイブは残っていません。なので、できるだけ分かりやすい形で紹介できればと思います。 さて、ワーキンググループで議論する事項として示されたのは、次の5点なのですが、1.及び3.についての説明が中心でした。 いずれも2023年にファイナライズされた、IFRS S1・S2基準とCSRD

第1回 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するWG(1)

3月26日に開催された「金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(第1回)」を視聴しました。 当日の資料は、こちらからDLできます。 残念ながら、ライブ動画は非公開となっており、アーカイブは残っていません。委員の皆さんの生の声を始めとする場の雰囲気は、議論の行方を予測する上で重要なところ、何故残さないのでしょうか。失言等があった場合に対処できなくなるからでしょうか。 傍聴かなわなかった方も多数いらっしゃるかと思うので、個人的な感

サスティナビリティ情報開示の行く末は?(1)

3月7日に開催されたSSBJのオープンセミナー。 サスティナブル担当としては、やはり日本版S1・S2が注目の的。 開発の大本営のセミナーとあって、開示基準のアップデートに殆どの時間を割いており、私もメモを取りまくり、こちらのnoteでも、10回に亘って概略をお届けしてきました。 ですが、その前段として、金融庁による制度・規制のアップデート、後段として、公認会計士協会による保証基準のアップデートがありました。 私は、こちらの動向についても非常に関心を持っており、傾聴してい

ESRSとGRIとInteroperability

3月1日に、SBBJ主催で、EFRAGとの公開セミナーが行われました。 3月7日に開催された日本版S1・S2のセミナーの影にひっそりと隠れる形になってしまった感がありますが、こちらも劣らず内容盛り沢山でした。 特に、後半の対談では、川西委員長が企業の忌憚ない質問を投げかけ、EFRAGでESRSの開発を担当した主要メンバーが、バックグラウンドや自身の経験を踏まえて、具体的に回答していました。 また、前半の川西委員長のESRSの理解や、SRB議長のEFRAGの位置づけ、SR-

クレジットと証書の違いを押さえておこう(3)

これまで、2回に亘って、「クレジットと証書の違い」による、取り扱いの相違についてご案内してきました。 最終回は、温対法における報告方法及び証書の購入方法について、簡単に説明しておきたいと思います。 SHK制度で想定している証書は、非化石証書、グリーンエネルギーCO2削減相当量(グリーン電力証書及びグリーン熱証書)です。 温対法の報告では、「第5表の2」に国内認証排出削減量にかかる情報を記入します。グリーンエネルギーCO2削減相当量の例がこちら。 ただ、省エネ法に基づく