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中国のETSとVCMの現在(2)

みずほ銀行のレポートを情報源に、中国のETSとVCMの現状をキャッチアップしております。前回は、イントロだけで終わってしまいましたので、今回は、中身に入っていきたいと思います。

ETSとVCMとは何ぞや、について簡単に説明していますので、ご関心のある方は、参考になさって下さい。

さて、前回説明したCCER(China Certified Emission Reduction)から話を始めましょう。中国が温室効果ガスの排出量を削減し、環境保護目標を達成するために設計されたもので、日本で言うところのJ-クレジットです。

CCERは、「温室効果ガス自主的排出削減取引管理暫定弁法(暫定弁法)」「温室効果ガス自主的排出削減プロジェクトの査定と認証ガイドライン」のもと、パイロットETS開始翌年の2012に発足したものの、需要が伸びないことや、一部のプロジェクトの内容問題などを背景に、2017年新規申請が中止されていたそうです。

J-クレジットにも日の目を見ない時期が長かったことを考えると、納得できる話。一部の事業者は、値がつかないので寄付していたりしてましたし。

ところが、前述のように2021年全国ETS(CN-ETS)開始に伴って、取引ニーズが急増、在庫も急減していたことからCCER申請再開が待ち望まれることとなり、2023年新たな「弁法」「ガイドライン」が公布。再発足となったとのこと。

みずほ中国ビジネスエクスプレス(第697号)より

CCERは下図のように、ガイドラインや規則に基づき、「開発」「登録」「取引」されることになっています。この「温室効果ガス自主的排出削減プロジェクトの設計と実践ガイドライン」は「方法論」のこと。

みずほ中国ビジネスエクスプレス(第697号)より

J-クレジットはこれが、72もありますが、CCERは森林吸収と再エネの4つしかありません。これは、以前の方法論は全て廃止され、現在一から構築中とのことで、5番目としては、バイオディーゼル燃料がパイプライン上だそうです。

CCERの開発もよいでしょうが、日本企業としては、新方法論によって生まれる製品マーケットに参加する方が、実際的なのでは。USのIRAのように。

創生プロセスは、一般的なカーボン・クレジットと同じで、プロジェクトの登録(有効化審査:Validation)と削減量の認証(実績確認:Verification)の2段階。

みずほ中国ビジネスエクスプレス(第697号)より

参加者については、次のように想定しています。

J-クレジット同様に、事業活動、製品製造、サービス提供、イベント開催などによる排出量をオフセットすることが大きな目的ですが(もちろん、情報開示において、購入分を控除することはできません)、CN-ETSも主要な用途です。

みずほ中国ビジネスエクスプレス(第697号)より

前回ご案内したように、CN-ETSではCCER以外に、CERやVCS、GSも使用できますが、調達のしやすさや中国国内の排出削減に資することを考えると、できればCCER使いたい訳で、だからこそ、需要が高まったのです。

みずほ中国ビジネスエクスプレス(第697号)より

なお、スコープ2については、中国国内では電力証書の方が低コストとのことなので、CCERはスコープ1及びスコープ3のオフセットに使用されると思われます。

取引方式は、リスティング、大口取引、オークションの3種類。
JPXでは、リスティングのみですから、中国の方が柔軟ですね。
ただ、大口は市場外であれば、実質2種類になると思います。

みずほ中国ビジネスエクスプレス(第697号)より

最後に、プライスを見てみましょう。

CN-ETS開始により低迷していたCCERの需要が盛り返し、2022年7月から2023年5月までは、CEAの価格を上回っていますが、それ以外はCEA>CCERの関係。

新CCERが稼働することから、今後はこの状態が続くと思われるため、参加者の取引インセンティブにつながると予想されます。そうならないと意味が無いし、逆転が続くようであれば、EU-ETSのようにMSR(Market Stability Reserve)みたいな施策が必要になってくるのでは。

みずほ中国ビジネスエクスプレス(第697号)より

ということで、中国のETSとVCM(CCER)の現状について見てきました。

カーボン・クレジット、カーボン・プライシング、排出権取引市場などは、聞いたことはあるけど良く分からない、国や地域ごとに内容が異なる、加えて刻々と変化することから、とりつきにくいですよね。

私も国内はある程度分かるののの、海外は全然、という状態。
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