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中国のETSとVCMの現在(1)

JPXにおけるカーボン・クレジット市場が試行期間を経て、2023年10月11日、華々しくオープンしたことは、皆さんも記憶に新しいところでしょう。

GXリーグも、2022年度の「構想」から実行段階に移りましたし、政府はGX推進法案を採択するなど、2023年は「カーボン・プライシング」元年と言ってよい年だったかもしれません。

GX戦略とカーボン・プライシングについては、noteでも詳しく説明しましたので、詳しくはこちらを参照ください。

さて、そんな2023年も過去のものとなり2024年、COP28でのグローバルストックテイク(Global Stocktake:GST)を経て新たな目標に向かって各国邁進していくことになりますが、その前に、お隣中国のETS及びVCMの状況を確認しておきたいと思います。

中国では、2011年に7つの市・省においてパイロットETSが稼働、2021年に全国ETSが始まっており、2022年8月に一度報告していますが、その後はあまりウォッチできていませんでした。

なので、キャッチアップしておきたいなぁと思っていたところ、みずほ銀行がタイムリーなレポートをリリースしていましたので、簡単にご紹介したいと思います。

まず、排出権取引市場(ETS:Emission Trading Scheme)と自主的炭素市場(VCM:Voluntary Carbon Market)を抑えておく必要があります。

ETSは、スキームオーナー(一般的には国や地域)が排出上限を設定、参加者は割り当てられる排出枠内に排出量を抑える努力を行い、超過してしまう場合には、排出枠を購入する「Cap & Trade」方式を採用します。

1.5℃目標経路に合致するように上限を漸減させていけば、参加者が上限を遵守する限り、実排出量が確実に削減できるという点が特長です。このためには、対象となる企業の参加は「義務的」でなくてはなりません。

他方、上限もなければ、参加が必須でもないのが、VCM。

企業毎に目標は持っているでしょうが、達成できなくても、国などから「罰金」「罰則」が課せられることはありません。もちろん、目標をコミットしていながら未達であれば、環境指標・格付の低下や、投資家からの資金引き上げ等のペナルティはあるかもしれませんが、いずれにせよ「自主的」です。

目標達成に使用できる手段については、制度によって様々です。

ETSでは、スキームオーナーが割り当てる割当量「Allowance」が基本です。
EUーETSであればEUA)、CN-ETS(中国の排出権取引市場)であればCEA(China Emission Allowance)ですが、制度によって、それ以外も使用できるとしている場合があります。

その手段が「カーボン・クレジット」です。

VCSやGold Standard、ACR、CARなど数多く存在しますが、基本的には「Voluntary Carbon Credit」と分類されます。ただ、その中で、ETSのスキームオーナーが目標達成に使用してよいとしているものが、「Compliance Carbon Credit」となります。

これを踏まえた上で、CN-ETSを見ると、次の4つが「Compliance Carbon Credit」です。この中で、CCER(China Certified Emission Reduction)というのが中国オリジナルのクレジット。日本で言うところのJ-クレジット。

みずほ中国ビジネスエクスプレス(第697号)より

J-クレジットは国の施策ですので、同じように国の施策であるGX-ETSで使用できるとされています。同様に、CCERもCN-ETSで使用できるという訳ですね。

ということで、中国のETSとVCMを説明するための下準備で紙面を割いてしまいましたので、内容は次回に譲りたいと思います。

頭の整理をしながら、もう少しお待ちくださいませ。
乞うご期待!

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