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note de 小説「時間旅行者レポート」その11

UM 2:30

まもなくボクは現在をはなれ
過去に旅立つ。



そこにハーバー博士が
やってきた。

「ドクターオリバー
リラックスしてください。

何度も試験を重ねて
事故の発生はまだ
確認されていませんので。

ですが有人での
タイムトラベルは
あなたが初めてです。



あなたにはまず
ちょうど1900年の
パリに出向いてもらいます。

ちょうどそこでは
パリ博が開催されて
いる頃でしょう。

大戦前夜の平和な世界です。

いきなり戦地に赴くよりも
まずは大戦前夜を見てきては
いかがですか?


ということで一つ
Dimentionz社から
あなたにお願いがあります。


あなたに
ある小説家に
あってきていただきたい。


H・G・ウェルズ

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彼はSFを題材にした
小説家です。

彼はイギリス人です。
ちょうど彼は
君の行くパリに来ています。


彼に第二次世界大戦が
終わるまでの出来事を
伝えてください。

この頃の彼は
まだ売れない恋愛小説家
だったのだ。

しかしパリ博を皮切りに
彼はSF小説に目覚める。

つまり君にあったからだ。

問題はない。
この行為は必然なのだ。


実際に彼は大戦前に
これから起こるであろう
出来事を発表した作品を
世に出しはじめる。


つまり、だ。
Dr.オリバー、君が
ウェルズにパリで会い
史実を伝えることが
決まっていることなのだ。


どうか頼むよ。
君の実地研究の前の
Dimentionz社からの
おねがいだ。

彼を見つけて
会って
話してほしい

逆に彼に会わなければ
歴史そのものが
変わってしまう。

健闘をいのる」


ハーバー博士はそういうと
部屋を後にした。

これが
なにを意味するのか。
この時は分からなかったが

まな板に載せられたFisch(魚)
であるボクにはどうでもよかった。


ハーバー博士は08に

当時のパリで流行った衣装と
多額のフランス通貨「フラン」を
現金で支給するように
言った。


「さぁ、Dr.オリバー。

時間です。
Zeitmeschine
参りましょう」

と08にうながされた。


ボクは全身の震えが
止まらず
「 Ya 」

と答えた声も
震えていた。


ーーーーーーーーーーーーー


「それにしても
この衣装って・・

なんです?この帽子は」


「あぁ、これはパリで
大流行した飛行機帽子
ですよ。

当時はライト兄弟が
発明した飛行機にあやかって
パリで大流行しました。

飛行機ダンスを
男女で踊るのが
ブームだったんですよ」

08は言う。

当時の時代考証も
旅行者が未来人だと
怪しまれないための
重要なプロセス
だったりするのだろう。


「この帽子を被ってさえ
いたらあなたも立派な
パリっ子に見えますね」


クスっと08は笑った。

「きをつけて
いってらっしゃい」

とだけ告げて。


ーーーーーーーーーーーーー

ドクン・・

ドクン ドクン・・・


さていよいよだ。


Zeitmeschineに乗り込むのだ。


この大樹のなかに
乗り込むのか。

なんだか
室内アトラクションの
ようなそれは


新築物件にある
鉄の建造物の
独特の臭いを
放っている。


それがボクの緊張を
マックスにまで高めた。

ーーーーーーーーーー

ドクン・・ドクン・・・

ドッドッッドッドッド・・・

脈拍の以上な活動が
みてとれる。

そこへ

「落ち着きたまえ
Dr.オリバー」


ハーバー博士の声が
聞こえてくる。


「私はこの世に始めて
夢のタイムマシーンを
出しました。

今回、有人での
タイムトラベルが
実現すると世紀の
大発明になること
間違いありません。

砲弾神経症

塹壕で戦った兵士の
およそ9割がわずらった
症状ですね。


それを論文ではなく
リアルタイムで
見てとれる。

あなたとわたしの
利害が一致した。


だからもう
私に委ねたまえ。

リラックスして。
ただ委ねるんだ。

すべての常識を
疑いながら
すべてを
許容するのだ!」




運命の刻が
おとずれた。


ーーーーーーーーーーー


すべての電力供給が
この大樹に集まっているのか
研究所が一斉に
暗黒に包まれた。

音も無くなった。


フゥゥー・・・・ン
フゥゥー・・・・ン・・・


と静かな気配が
回りを包む。





その刹那


ピピッ!


バチッ!
バチバチバチッ!!!!

ガガガガガガガガ・・・!!!!
ビューーーーーーン・・・

という音と
稲光がボクに
まとわりついた!



Zeitmaschineの下を見渡せば
あまたの研究員が
ボクとボクのいる
この部屋を見守っている。

すべての人間が
遮光グラスをしていて
とても妙な気分だった。



その気分を感じるより先に
ボクの意識がなくなった。

意識のトぶ寸前まで
認識できた。


???????

いや、意識は飛んでいない。

存在が!

存在が消えていくのだ!!

じょじょに

皮膚が

毛細血管が


筋組織が・・・


骨格が・・

3Dを保っていたボクのからだが
いまや

2D

つまり
薄っぺらい
綿の記事のような存在に!!

この時代に見た
最後の風景は

何百人の研究員たちの
喝采する姿であった。

お互い抱き合うもの
号泣しているヤツもいる。

小さくガッツポーズしている

あ、あれはハーバー博士だ・・・



そして時間の
逆行がやって来る。


あれ?
飛行機帽子・・・
08だ・・・


あれ、ここは肉屋の裏手。



あ、いつものBAR・・
フランクだ!
あのやろう・・・



時間の逆行は
じょじょに加速を
始める。



母さん?
なんだろう?

すごく若い。
それにお腹が大きいな・・

あれはボクか・・・
産まれるまえのボク。



ここからは
特急列車のように
時間逆行が加速し始めた。



なんだろう?
ボクの存在がない・・・


意識だけが


意識だけが、ある。



やがてその意識も
すべてがゴーグルに
表示された

1900年  パリ20区のうちの
7区。セーヌ川のほとり

に向かって
飛び込んでいった。


そこに到着するまでの
記憶は
一切なかった。


ーーーーーーーーーーーー

続きます。








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