ワクチン陰謀論・再び

地元の選挙ではないけれど、某所の選挙ポスターでワクチン陰謀論の主張を見かけた。

いわく
「ワクチン接種者は解毒しましょう」
「ナノチップが体の中にあります」
「ナノチップからの信号は、アプリで検出できます。」
ご丁寧に、QRコードも貼られていた。

ワクチンを「解毒」?免疫細胞が学習した結果を、どう「解毒」するの?
ワクチンに何か毒物があるとして、その種類は何かの明示がないし、種類がわからない毒物をどう解毒するのか?

何かの中毒薬物で患者が救急搬送されても、「原因薬物」がわからないと解毒方法がわからない。和歌山砒素カレー事件の時も、地下鉄サリン事件の時も、救急の現場は薬物推定が困難で、すぐには適切な治療を選択できずにいた、と記憶している。

もし私が「ワクチン接種したので、解毒してください」と、この人にお願いしたら、どんな「解毒剤」を出してくるんだろうか?

ナノチップ?「シリコン結晶の原子間距離はだいたい0.2nm」という記述があるけれども、(少なくとも今は)最先端の加工技術でもナノメートル以下の加工は難しいんじゃなかろうか?毛細血管を閉塞させない大きさのナノチップに、一体何ゲート作成できるんだろうか?1μm四方のチップだとして1万ゲートくらい可能なの?たかが1万ゲートの素子で何ができる?四則演算がやっとじゃないのかなぁ・・・細かく検証してないけど。

ナノチップからの信号、とかいうけれど、血液中を浮遊しているチップに、どうやって給電するんだろうか。
カプセル内視鏡は、中にバッテリーを持ってる。体内からの電波を体外で検出できる飛ばせるほどの電力を供給できる「電池」は、カプセル内視鏡で1立方cmくらいあるから、とても注射針を通り抜けるとは思えない。毛細血管を閉塞させない程度の大きさで、血管内を流れるとして、1立方μm以下の大きさのバッテリー?なんて、聞いたことがない。1立方mmの電池ですら、聞いたことがない。給電しなかったら電波は飛ばせないでしょ?
あ、軍事用だったらあるのかな?だけど、普通なら絶対に外に出さないような軍事技術をリバースエンジニアリング可能な状態で、外にばら撒くか?

RFタグなら反応する?RFタグだって「アンテナ」構造は必要だからなぁ・・・ナノチップに搭載可能な「アンテナ」でBluetoothの波長の電磁波を送受信できるの?波長が10cmちょっとだから、λ/4で計算して2〜3cm。そんな長い「尻尾」が出ていたら、注射器の中に何かあるのが見えないはずがない。

アプリで検出できます?
今、電車内でノートパソコンをテザリングで自分のスマホに接続しようとして、Wi-Fiの電波を拾おうとすると、ちょっと混んだ電車の中だと20〜30くらい「ネットワーク」を拾ってくる。もう、町じゅう電波が溢れている。Bluetoothでも、スマホにイヤフォンを繋いでいる人はかなり見かけるから、いくらBluetoothが近距離無線だとはいえ、漏れてくる電波を拾うとやはり数十のレベルで拾ってくるだろうな、と思う。下手すると、カバンの中に入っているタブレットなんかも反応してくるだろうし。

つまり、本当に「体内からの電波」を拾いたいなら「電波暗室」に入ってもらって、そこで「アプリ」なるもので検出しないと、どこから飛んできてるbluetoothの電波だかわからない、ということになる。普通の環境だと、うんざりするくらいあちこちからの電波を拾うと思う。

今時は、かなりセキュリティが強化されているけれど、20年前の雑誌の記事で、無線LANの開発用デバッグ機器を走らせながら、総武線を千葉駅から秋葉原まで移動すると、住宅用やオフィス用のLANの「ログインID」と「パスワード」のペアを、片道だけで20〜30拾うことができた、と、どなたかが書いていた。今でも「暗号化」していない機器を使っていれば、車に機材を積んで住宅街を巡回すれば、「只乗り」して「ハッキング攻撃」の足場にできる無線LANは、そこそこ見つかるかも知れない。今はもう、bluetoothもかなりの数使われているから、「体内からの電波」をきちんと識別することなど、しっかりした「電波暗室」の中でなければ無理だと思う。

他にも、ツッコミどころはまだまだあるけれど、書くのが面倒くさくなった。「ワクチン陰謀論」に躍っている人たちの、「技術リテラシ」の低さを考えると、何を言っても無駄、という気がする。それに該当する人が、身近にもいるし。すごく、虚しい。

この人に投票する人、何人くらいいるんだろうか。ある意味で、(怖いもの見たさで)選挙結果に注目している。

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